東方雪月花   作:くらんもち

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20話

夢を、見る。

随分昔に、行方知れずとなった母さんの夢…。

物心つく前にどこかへ行ってしまったから、ほとんど記憶はないけれど、それでも1つだけ、覚えていることがある。

どこかは分からない、陽だまりの場所。そこで、僕は母さんといた。その綺麗な瞳が僕を見ると嬉しくて、声を上げたのを覚えている。しかし、その顔は逆光となって判然としない。

 

どうして。どこへ。行ってしまったのか。何も分からない。でも、僕を、愛してくれたのだろうと、解っている。

 

 

「……」

 

「あ、おはようございます、雪華様」

 

「…うん、おはよう」

 

今日は桜が先だったか。

 

「そういえば雪華様、どんな夢を見てらしたんですか?」

 

「夢?」

 

「はい。時折、どうして、と呟いていらしたので」

 

「そうなのか?」

 

「ええ」

 

「…それは多分」

 

桜に母さんのことを話す。

 

「そんなことが…」

 

「まぁ、ね」

 

「お母様は、どんなお方だったのですか?」

 

「ちょっと誤解されることが多かったけど、優しくて、綺麗な()をしてて、花が好きだった」

 

「お会いしてみたいです…」

 

「どうだろうね、もしかしたら、いつか会えるかも」

 

「え?」

 

「そんな気がするんだ。いつか、ひょっこり出てくるかもって」

 

「そうだと、いいですね」

 

「だね。母さんはどんな顔するだろうか…」

 

「雪華様のお母様、喜んでくださると、いいなぁ…」

 

「それは桜次第だね」

 

「…不安です!」

 

「大丈夫だって」

 

「そうかなぁ…」

 

「君なら、ね」

 

「へ?」

 

「何でもない」

 

「気になるじゃないですかぁ!」

 

「だーめ」

 

「も〜!雪華様〜!」

 

「残念でした〜」

 

そして笑い合う。これが、ずっと続けばいいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…母さん。僕にも、大切な人ができたよ。綺麗で、強くて、優しくて、そして儚い。

その美しさに憧れて、その強さに励まされて、その優しさが愛おしくて、その儚さを、護りたいと思う。そんな人。いつか、母さんにも会わせてあげたい。そう、会える。いつか。

そうだよね、母さん───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一葉(ひとひら)、雪が舞う。その中に、『彼女』はありえないものを感じた。

 

「これは、あの子の……?」

 

分からないと、きっと覚えていないだろうと、思っていた。

だって、ずっとずっと前、私は彼を置いてきてしまった。

 

「…お返しを、しなくてはね」

 

一陣の風が吹き、花を舞い上がらせる。そして、その中へ思いを込める。

それが、彼へと届くことを願って。

彼女はほんの少しだけ微笑み、また花を見る。

彼女の愛は、伝わっただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽だまりのベランダに、瑞々しい緑の花が一葉(ひとひら)、落ちていた。

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