夢を、見る。
随分昔に、行方知れずとなった母さんの夢…。
物心つく前にどこかへ行ってしまったから、ほとんど記憶はないけれど、それでも1つだけ、覚えていることがある。
どこかは分からない、陽だまりの場所。そこで、僕は母さんといた。その綺麗な瞳が僕を見ると嬉しくて、声を上げたのを覚えている。しかし、その顔は逆光となって判然としない。
どうして。どこへ。行ってしまったのか。何も分からない。でも、僕を、愛してくれたのだろうと、解っている。
「……」
「あ、おはようございます、雪華様」
「…うん、おはよう」
今日は桜が先だったか。
「そういえば雪華様、どんな夢を見てらしたんですか?」
「夢?」
「はい。時折、どうして、と呟いていらしたので」
「そうなのか?」
「ええ」
「…それは多分」
桜に母さんのことを話す。
「そんなことが…」
「まぁ、ね」
「お母様は、どんなお方だったのですか?」
「ちょっと誤解されることが多かったけど、優しくて、綺麗な
「お会いしてみたいです…」
「どうだろうね、もしかしたら、いつか会えるかも」
「え?」
「そんな気がするんだ。いつか、ひょっこり出てくるかもって」
「そうだと、いいですね」
「だね。母さんはどんな顔するだろうか…」
「雪華様のお母様、喜んでくださると、いいなぁ…」
「それは桜次第だね」
「…不安です!」
「大丈夫だって」
「そうかなぁ…」
「君なら、ね」
「へ?」
「何でもない」
「気になるじゃないですかぁ!」
「だーめ」
「も〜!雪華様〜!」
「残念でした〜」
そして笑い合う。これが、ずっと続けばいいと思う。
…母さん。僕にも、大切な人ができたよ。綺麗で、強くて、優しくて、そして儚い。
その美しさに憧れて、その強さに励まされて、その優しさが愛おしくて、その儚さを、護りたいと思う。そんな人。いつか、母さんにも会わせてあげたい。そう、会える。いつか。
そうだよね、母さん───。
「これは、あの子の……?」
分からないと、きっと覚えていないだろうと、思っていた。
だって、ずっとずっと前、私は彼を置いてきてしまった。
「…お返しを、しなくてはね」
一陣の風が吹き、花を舞い上がらせる。そして、その中へ思いを込める。
それが、彼へと届くことを願って。
彼女はほんの少しだけ微笑み、また花を見る。
彼女の愛は、伝わっただろうか。
陽だまりのベランダに、瑞々しい緑の花が