東方雪月花   作:くらんもち

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21話

「さぁて、明日から喫茶店も再開だ」

 

1週間ほど桜の経過観察をしていたが、何の変調もなく、至って元気なので、明日から喫茶店も再開しようと思っていた。

そこへ。

 

 

「おはようございますっ」

 

「おや、颯香様。どうなさいました?」

 

「た、たまたま近くを通ったので」

 

会いたくなったから来た、というのは恥ずかしいので黙っている。

 

「そうでしたか。なら、どうぞ、あがってください」

 

「良いんですか!?ありがとうございます!」

 

「いえいえ。しかし、なぜここに?何か御用向きでしょうか」

 

「…はい。実は、最近山で、おかしな事件が起きているんです」

 

「ふむ…、どのような?」

 

「ええっと…」

 

颯香様曰く、天狗達が失踪を続けているらしい。この前とうとう幹部の1人が失踪したので、依頼してきたとのこと。

…まあそれだけではなかったらしいが。

 

 

 

「本当にお父様ったら、危ないからって、全く出してくれないんです。小さい子じゃないのに」

 

そう言って颯香様は唇を尖らせた。

 

「それだけ、颯香様が大切なのでしょうね。鞍馬様唯一のご令嬢とのことですから」

 

「……です」

 

「何か?」

 

「颯香で、いいです。むしろそうしてください」

 

「…しかし」

 

「しかしも案山子もありません。私は、あなただから呼んで欲しいんです」

 

「…それが、貴女の望みなら。では、──颯香」

 

「はいっ!」

 

「恐れ多いにもほどがありますよ…」

 

「私が良いんだから大丈夫です!」

 

「…他の天狗がいない時だけですよ」

 

「大丈夫です!」

 

「雪華様ぁ〜…?」

 

「あ、桜が起きちゃったな…」

 

「なら、お暇します。もう少しお話していたかったですけど」

 

「申し訳ありません」

 

「いえいえ!…あ、でも」

 

「何でしょうか」

 

「その、ぎゅっとしてほしいです…」

 

少し赤くなりながら颯香は言った。

 

「…いけません。最悪死刑ですので」

 

「そう、ですか…」

 

ちょっとがっかりしたようだった。リスクを取ってでもして差し上げるべきだったか?

 

「また来ます!」

 

「え、ええ」

 

「では!」

 

「はい、また」

 

颯香は翼を出し、飛び去っていった。

 

「雪華様ぁ〜…」

 

「ああ、はいはい」

 

「えへへ〜…♪」

 

桜が寝惚けて僕に抱きつき、頬を緩ませる。

これが最早日課となりつつある。

そして。

 

「♪〜、…あ……」

 

「おはよう、桜」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

赤くなって謝る。これもパターンと化しており、様式美とすら言える。

 

「大丈夫だよ」

 

そして抱き締め返す。これがルーティーンとなりつつある。

 

「さっき颯香様が来てね」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「厄介事だそうだ。しばらく出るよ」

 

「…わかりました。寂しいけどお留守番しておきます」

 

「うん、ありがとう」

 

さあ、1日の始まりだ。

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