鈍い音がした方へ向かうと、1人の女の子と大人の男がいた。
そいつが、5歳くらいであろう小さな女の子を殴っていたのだ。
「ごめ、なさい……!」
女の子は必死に謝っているが、男は聞く様子がない。我知らず駆け出し、気付けばそいつの顔面を思いっきり殴っていた。恐らく歯と顎の骨が砕けたのだろう。ばきりと、音がした。
「おま、親分に何しやがる!」
そんな声も聞こえたが、文字通り一蹴して黙らせる。
「や、やべえぞ逃げろ!」
奴の子分と思わしき青年達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。それを見届けた後、ようやく声をかける。
「もう、大丈夫だよ。」
そして、彼女は泣き出した。今まで泣くことも許されなかったのだろう、ぎこちなく、けれど今までの辛さを爆発させるかのように泣いた。
「よしよし。痛かっただろ?」
そっと抱き締めてやる。一瞬びくりと小さな体を震わせたものの、すぐに委ねてくれた。加えて優しく撫でてやる。
しばらくそうしていると、ようやく泣き止んでくれたようだった。
「あ、の……。」
「ん?」
「なん、で、わたし、を……。」
成程、何故自分を助けたのかと聞きたいわけか。
「……それはね、僕の大好きな人に、とっても似てたからだよ。」
そう。初めて会ったあの夜も、こんな感じだった。まあ、あの時の桜はこの子より少し大きかったが。
「だいす……?」
「そう。それに、目の前で小さな子が泣いてるんだ。助けなきゃね。」
彼女は首を傾げた。
……どうやら、周りの大人達は見て見ぬふりを貫いていたらしい。そして、決断する。
「君、うちの子になりなよ。」
「……!?」
驚いたように目を見張る。当然だろう、助けてくれたとはいえ、見ず知らずの人にうちの子になれと言われているのだ。
「絶対に、あんなことしないし、させないよ。僕が、僕達が、護るから。」
「……なんで………?」
「ただの自己満足……、つまり見てられないんだよ。安心して。ね?」
彼女は俯いた。それは悩んでいるというよりも、恐怖に怯えているような様子。しかし、数秒の後、頷く。
「僕は霜月 雪華。君のお名前、教えて?」
「おなまえ……?」
名前も与えられてないときたか。
「じゃあ、君は
彼女の
綺麗な金髪を持つ彼女は、あどけないながらも整った顔をしていた。きっとあと10年もすればかなりの美人になるだろう。
「くれは……。」
「そうだ、さぁ、帰ろうか、紅葉。」
紅葉の手を取り、家路を辿った。
その後桜に紹介したところ、驚きながらも『雪華様ならしょうがないですね』とのお言葉を頂き、正式に紅葉は僕達の義娘となったのだった。