紅葉を引き取って数日。彼女も大分慣れてきたようで、僕を「おとうさん」、桜を「おかあさん」と呼ぶようになっていた。
初めて呼ばれた時のグッとくる感覚は忘れまい。霊夢達にも紹介し、初めは人見知りしていたものの、すぐに懐いて、特にレミィとフランに関しては「レミおねえちゃん」、「フランおねえちゃん」と言って慕っているようだ。
だが唯一困るのは、紅葉が僕の傍を離れないこと。普段ならいい。しかし店を開ける時はどうしても奥に居てもらわないといけない。だから、店の時だけフランに来てもらい、遊んでもらっている。そんな日が続いたある昼下がり。
「おとうさん、あのね…。」
「ん、紅葉、どうした?」
「おにんぎょう、こわれちゃった……。」
「ああ、そういうことか。分かった、父さんが直してあげるよ。」
「……!ありがと……!」
この家に来てから、笑顔を見せてくれるようになった。それが愛らしくて、ついつい撫でてしまう。
「ん……♪」
「おー待たせーい。……と、紅葉ちゃんじゃないか。お父さんに遊んでもらってたのかい?」
「紡ぎ手か。…ということは。」
「おう、御望み通り創ってきたぜ。」
紡ぎ手が取り出したのは明るい灰色のタキシード。なるほど、僕のイメージカラーを反映したらしい。
「桜のは?」
「それは本人に渡すつもり。お楽しみは最後まで分かんないほうがいいだろ?」
「……変なもの創ってないだろうな。」
「んなしょーもないふざけ方するかい!安心しろ、神に誓って、真面目に創った。」
「じゃあ違えた場合死刑な?」
「怖いけどお好きにどうぞ。本当に真面目に創ったから。」」
「……嘘はないみたいだな。」
「最初からそう言ってんじゃん。」
「ならいい。ありがとな。」
「おうともさ。たまにゃあ良いこともしないとな。」
「ま、大助かりしたのは事実だな。」
「だろー?」
「……ねえ、きつねのおにいさん。こっちきて。」
「んー?良いけど。」
「うちの娘に変なことするなよ。」
「誰がするか!!」
紡ぎ手が連れてこられたのは雪華達の寝室。
「どしたの紅葉ちゃん、何かあった?」
「ううん、あのね……。」
そして、紅葉は彼女が幼いながらも必死に考えたサプライズを話した。
「成程、そいつはいい。お父さん達も喜ぶだろうね。」
「じゃあ……!」
「狐のお兄さんが手伝ってあげるよ!一緒に頑張ろうな!」
「……うん!」
その後、彼らは使われていない部屋に移動し、『サプライズ』の準備をするのであった。
尚、これを通して紅葉は紡ぎ手とかなり仲良くなったようで、出来上がる頃には彼を「くらんおにいさん」と呼び、雪華が衝撃を受けたのは余談である。
「紡ぎ手じゃない、どこ行くの?態々『道』まで作って。」
「紫か。
……くらんもち郵便、行って参りまーす。」
そして、彼は『道』を通り、異世界へ向かうのであった。