東方雪月花   作:くらんもち

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というわけでとうとう挙式!彼らの幸せは永遠に。
さてと、僕も準備しなくっちゃ!


38話

翌週。雪華達の結婚式当日である。

紅魔館の庭に、幻想郷の少女達が集まっていた。

雨予報ではあったが、紡ぎ手が無理矢理晴れにしたのは内緒である。

そこへ、

 

「よし、着いたな。」

「やっと着いた!」

 

スキマを通ってやってきたのは、雪華達の異世界の友人、五十嵐 凱と姫乃禍月(まがつ)

 

「凱!?何で!?」

 

雪華が驚いた様子で声をあげる。

 

「よ!元気そうで何より。」

「やっほー!来ちゃった!」

「紡ぎ手だな!?」

「あったりー!」

「何で凱達を呼んだんだよ!」

「そりゃお前の友達だから。違うか?」

「ぐ……、確かにそうだが………。」

 

雪華が珍しく言葉に詰まるとそこへ。

 

「おとうさん、だいじょうぶ?」

 

紅葉が来た。

 

「ん?……待て、『おとうさん』?」

「……聞き間違いじゃないよね?」

 

二人が首を傾げる。

 

「どうした、紅葉。」

「ん……。」

 

抱っこ、と要求するように手を上げ、雪華が要望の通りに抱き上げる。

 

「おかあさん、きれいだったよ…!」

「そうなのか、楽しみだな。」

 

優しく微笑む彼らは、まさしく親子であった。

 

「……まさか、お前子持ちだったのか?!」

 

凱が珍しく驚いた声をあげた。

 

「いや、引き取った、というか保護した。……虐待を受けていてな、見ていられなかったんだ。」

「………へぇ?その屑は何処に居るのかしら?」

「おい落ち着け。」

 

姫乃から殺意が立ち昇る。

 

「大丈夫。ちゃんと制裁は加えてある。顎の骨砕いたから、死にはしなくともしばらくろくに喋れないし、後遺症も残るだろう。

……紅葉が怯えてるぞー。」

 

殺気を放つ彼女に怯え、紅葉が身を震わせる。

 

「大丈夫、この人は父さん達のお友達だから。優しい人だよ。」

 

「あーごめんね!」

 

姫乃はすぐに普段通りに戻る。

しかし…、

 

「…………。」

 

凱は静かに紅葉を見つめるだけだった。

 

「どうしたの?」

「……いや、何でもない。」

 

そう言って凱はやさしめな笑みを浮かべた。

今度は普通の笑みである。

 

「えと、しもつきくれはです、よろしくおねがいします。」

 

抱っこされながら器用に礼をした。

 

「か……可愛いいーーー!」

「しっかりしてるじゃないか。」

「少し人見知りのきらいはあるけど、凱達なら大丈夫みたいだな。」

 

姫乃の声に驚いたのか、紅葉は雪華により強く抱きついた。

 

「おい、ビビってるじゃねえか。」

「ああああ、ごめんね紅葉ちゃん!」

 

必死に姫乃が謝る。

 

「大丈夫だよ。な、紅葉?」

 

紅葉はゆっくり頷く。

そして雪華が撫でてやると嬉しそうに微笑むのだった。

 

「そういえば、桜ちゃんは?」

「別室。さすがに同じ部屋で着替えるわけにもいかないし。」

「それにお楽しみは最後まで、でしょう?くらんもち謹製のウェディング衣装ですからねぇ。」

 

にやりと笑ったのはくらんもち。

 

「そっかぁ。楽しみだなぁ。」

「ほら、紅葉ちゃん、お父さん達の邪魔しちゃいけないから、あっちで待ってような。」

 

紡ぎ手は雪華から紅葉を受け取り、退室していった。

……やはり懐いている。

 

「さて、いろいろあって整理がつかんが、おめでとう、雪華。」

「……ああ、ありがとう。」

 

仄かに、しかしこれ以上ない喜びがこもった笑み。

 

「おめでとう……雪華君!」

 

姫乃は既に涙ぐんでいる。

 

「全く……、本人より先に泣いてどうするんだい。桜にも言ってやってくれ。」

 

姫乃の様子に苦笑した。

 

「うぅ……だってぇ……。」

「全く。それで?いつ始まるんだ?」

 

「1時間後。会場のセッティングとかを咲夜達がやってくれてる。」

「なるほど。………こんな事はあまり言いたくないが。」

 

凱が少し険しい表情をする。

 

「どうした?」

「あの少女、紅葉から目を放すなよ。上手くは言えないが………。」

「……分かった。娘を、喪いたくはないしな。」

 

そこでまた来たのは紅葉。紡ぎ手から逃げ出したらしい。時折あいつの紅葉を探す声が聞こえてくる。

 

「随分とアグレッシブだな。」

「どうしたの?おとうさんの方がいいのかな?」

「ん…。」

 

肯定するかのように雪華にひっつく。

 

「愛されているな。」

「ずっとこんな感じさ。嬉しいね。」

 

再び撫でた。雪華も雪華で紅葉を愛している。

 

「このまま仲良く過ごせるといいわね!」

「そうだね。そう出来るように祈ってるよ。」

「やっぱりここか!」

「紅葉ちゃん、駄目でしょ、お父さんのお着替えの邪魔になっちゃうわ。おばあちゃんと居ましょ?」

 

そこまで話すと紡ぎ手と幽香が来た。

 

「……そうか、お前の母親って幽香だっけか。」

「おとうさんといるの!」

「……こんな有様さ。」

 

雪華は苦笑するも、満更でもない。

 

「別にいいんじゃない?始まるまで時間ありそうだし。」

「……ま、好きにさせとくか。セッティングはほぼほぼ終わった。後は料理だな。」

「そうね、妖夢と咲夜が張り切ってたわ。」

「じゃあ私達もゆっくりしましょうか。」

「そうしとけ。俺は一旦戻る。」

「なら、桜の部屋に案内しますよ。彼女も喜ぶでしょうし。」

「そうね。また後でね、凱君。」

「ああ、また後で。」

「こっちですよ。」

 

紡ぎ手に姫乃も続く。そのまま部屋に着いた。

 

「桜、お客様だぞー。」

「はーい。

…あ、紡ぎ手さん。それに、姫乃ちゃん!どうして?」

 

桜は顔を輝かせる。

 

「呼ばれて来ちゃった!」

 

姫乃は桜に近付く。

 

「いらっしゃい!

……とうとう、かぁ………。」

 

感慨深げに呟く彼女は、花の意匠の入った淡いピンクの綺麗なドレスを纏っていた。

 

「………。」

 

姫乃は無言で桜を見つめていたがポロリと涙を流した。

 

「姫乃ちゃん!?」

「え、どうしました!?」

「ううん…なんでもないの。」

 

姫乃は涙を拭う。

 

「綺麗だよ、桜ちゃん。」

 

「……うん、ありがと。」

 

桜は親友を優しく抱き締める。

 

「よかったね…桜ちゃん。」

 

姫乃も抱き締め返す。

 

「お陰様で、ね。

……いつかは、姫乃ちゃんもこうなるのかな?」

 

悪戯っぽく微笑んだ。

 

「どうかな……でも、そうなるといいな。」

 

姫乃は優しく微笑む。

 

「よろしければ僕が創りますよ。イメージさえ固めれば全然行けますので。」

 

紡ぎ手も便乗する。

 

「うーん、出来れば凱君に作ってほしいなぁ。」

「あははっ、それもそうですね。失礼しました。」

 

彼は楽しげに笑う。

 

「姫乃ちゃん達の時も呼んでね?」

「もちろん!約束だよ。」

 

紡ぎ手は耳元のインカムから顔を上げる。

 

「ん、了解。

……準備が出来たようです。席に案内します。頑張れよ、桜。」

「…いってきます!」

 

笑う桜を残し、彼らは部屋を後にする。

 

「いってらっしゃい、桜ちゃん。」

 

数分後

 

プリズムリバー三姉妹の音楽と共にまず入場してきたのは雪華。明るいグレーのタキシードを身につけている。

 

「雪華君も格好いいわね。」

「そうだな……違和感があるのは俺だけだろうが。」

 

途中から合流してきた凱と共に姫乃はその様子を見ている。

 

「そうですかね?僕なりに真面目に作ったんですけど。」

 

紡ぎ手もすぐ近くに座っていた。

 

「いや、あいつが洒落た格好をしてるとな、どうも違和感が拭えん。あいつの戦いぶりを知ってるだけにな。」

「あー、そういう。」

 

まああいつは普段着で敵軍3万を全滅させるようなやつだし、仕方ない。

 

「そろそろ桜ちゃんかな?」

「ですね。お、丁度だ。」

 

その言葉と同時に、ドレス姿の桜が入場。周囲から息を呑む音が聞こえ、雪華も目を奪われたのか見開いていた。

 

「なるほど。さっき姫乃が泣いた理由も解るわ。」

「でしょ!本当に綺麗だよね。」

「自信作ですよ。いやー、検索しまくってイメージ固めまくった甲斐があったなぁ。」

「あれ再現するのに二週間くらいかかりそうだな。」

「完全再現はお勧めしませんよ。

そう、例えば……、アメジストみたいな紫、とか?」

 

姫乃に視線を向け、軽くウィンクをした。

 

「いや、それだとあのデザインには合わんな。あのデザインのカラーリングなら……」

 

そう言って凱はなにやらぶつぶつと呟き始めた。

完全に仕事モードである。

 

「全く、凱さん、今はこっちですよ。」

 

紡ぎ手は苦笑した。

 

「…ん、あーすまん。」

「ほんっと、凱君ったら。」

 

そう言う姫乃の頬は少し赤くなっている。

 

「まあ、そこまで姫乃さんを大切に想ってるってことですね。」

 

目を戻すと、雪華がそっと差し伸べた手を取り、桜が壇上に上がっていた。

 

「お、そろそろ見所か?」

「最初っから見所満載よ。」

 

 

 

「いつまでも、隣に居るよ。」

「私も、離しませんからね。」

 

頬を赤らめながら誓う。

そのままキスをする………なんてことはなく、両手を繋いだ。

 

「ったく、あれだけ恥ずかしがるなって言ったのに……。」

 

紡ぎ手も頭を抱えた。

……と思いきや、素早く桜の方からキスをしたのだ。

 

 

 

「……不意打ちとはずるいぞ。」

 

雪華も目を見張り、恥ずかしそうに微笑んだ。

そして今度こそ本当に口付けを交わした。

 

 

「……よかったね、桜ちゃん。」

「危なかった。危うく撮り逃すところだった。」

「それ、彼奴らに見せないほうが良いですよ。雪華は勿論、桜も暴走しかねませんし。」

「まさか、見せずにとっておくさ。」

「なら良かった。ほら幽香、行きなよ、母親だろ。」

「わ"か"って"る"わ"よ"!」

「泣かずにはいられないよなぁ…。」

「ぐすっ……。母親としての役目を果たせなかった私に、こんなことを言う資格は無いかもしれないけど…、夏葉、いいえ、雪華。おめでとう。そして桜ちゃん、この子と共に居てくれて、ありがとう。どうか、幸せになることを、祈っています……!」

 

そこまで言って感極まったのかわんわん泣き出す幽香を紡ぎ手が連行。その途中で、

 

「凱さん!姫乃さん!」

 

2人にマイクを投げ渡した。

 

「うおっと?!」

「桜ちゃんおめでとー!」

 

戸惑う凱からマイクを奪い取った姫乃が言う。

 

「雪華君と一緒になれてよかったね!これからもお幸せに!」

 

 

「ふふっ、勿論だよ!」

 

満面の笑みを浮かべた。

 

 

「今回は素直に言わせてもらおう。二人とも、結婚おめでとう!」

 

「ありがとな!」

 

雪華もまた微笑み、手を振った。

 

そして時は進み披露宴。

2人が乾杯の音頭を取る。

 

「皆、この度は集まってくれてありがとう!」

「皆さんのお陰で、こんな豪華な式を行うことが出来ました!それでは……!」

『乾杯!!』

 

 

「乾杯。」

「かんぱーい!」

 

そして、彼らを祝福する者、感極まって号泣する者、それを宥める者と分かれていた。

「相変わらず賑やかだな、雪華?」

「凱。そうだな、だけどこの賑やかさが心地良い。」

「ですね。」

 

そう言って微笑み合う。

 

「それはそうと、お前に渡しておきたい物がある。」

「渡しておきたいもの?」

「ああ、桜はまだしも、お前はいるかもと思ってな。」

 

そう言って凱が渡してきたものは、以前寝ぼけた桜が雪華に抱きついている写真だった。

(東方地憶譚80話参照)

 

「あっ。」

「何で現像してるんですかぁぁぁぁぁ!!!馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「有難く戴く。」

「何でなんですかぁぁぁぁ!!」

 

もぉー!と暴れる桜。しかしそれでも雪華は楽しそうに笑っていた。

 

「お、おかあさん……?」

「大丈夫、ちょっと恥ずかしがってるだけだよ。」

 

「これは紅葉に。」

 

そう言って凱が懐から取り出したのは黒い箱だった。

 

「これは……。紅葉、おいで。」

「……?」

「凱お兄さんからのプレゼントだ。開けてごらん。」

「これ……、もみじ?」

「もみじの髪飾りだな。……ほら。」

「とっても可愛いよ、紅葉。」

 

桜も言うように、彼女の綺麗な金髪にとてもよくマッチしていた。

 

「本当は商品になるはずだったんだが、運搬途中で折れちまってな。勿体ないんで加工しておいたのさ。」

 

その髪飾りについている紅葉の葉は光をキラキラと反射している。

 

「わぁ……!」

 

紅葉も気に入ったようで、目を輝かせていた。

 

「……そうだ、くらんおにいさん。」

「ん、あれだな。ほら、お母さんに渡しておいで。」

 

紡ぎ手が何かを紅葉に手渡す。

 

「ん?何を渡したんだ?」

「おかあさん、これ!」

 

そうして紅葉が見せたのは、桜とエーデルワイスの花で作られた花冠。

それが交互になるように編まれていた。

 

「花冠…もしかして紅葉ちゃんの手作り?」

「うん!おはなはくらんおにいさんにだしてもらったけど、わたしがつくったの!」

「紅葉ちゃんが2人をお祝いしたいってな。適当な花を見繕った。」

「適当……まあセンスがいいのは認めてやるよ。」

「これでも結構考えたんですよ。花言葉やらも考慮して。」

 

エーデルワイスの花言葉は『真実の愛』。雪華から桜へのそれは、紛れもなく真実のそれ。

 

「そういうのをここで言うのは野暮だぞ。」

「おっといけね。」

 

紡ぎ手が口を噤む。

 

「……はい。」

「ほら。」

 

紡ぎ手が抱え、紅葉が桜の頭に花冠を添えた。

 

「似合ってるわよ、桜ちゃん!」

「…うん、ありがと……!」

 

そして、桜は嬉し涙を零したのだった。

 

 

 

その後も披露宴は続き、霊夢たちも、親友たちも紅魔館へ行ってしまった夜。

 

「……楽しかったんでしょうね。」

 

彼女の傍には、疲れて眠ってしまった紅葉。

 

「確かに、紅葉は初めてか。」

 

2人は微笑んで彼女を撫でた。

 

「……あ、あの。」

「うん?」

 

桜は、決心したように口を開く。

 

「え、えっと。……また、してくれませんか?」

「……さては紡ぎ手に何か吹き込まれたな?」

 

彼女は赤面して頷いた。

 

「あいつにも困ったものだな。」

 

そう言って、娘を抱きかかえた。

 

「紅葉を起こすわけにはいかないだろ。ちょっと待ってて。」

 

紅葉を一度ソファーに移動させ、彼らは再び身体を重ねたのだった。

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