「幽々子様、そちらは!」
「大丈夫よ、妖夢はそっちに集中しなさい。」
四つ目の戦場。ここでは幽々子と妖夢のタッグによって、他の戦場よりも善戦していた。
そんな中、戦場には似つかわしくないほどに美しい笛の音色が聞こえてきた。
「これは、笛?」
「あら、こんなとこで誰が吹いているのかしら。」
その音色を奏でているのは、1人の女性だった。
腰まで伸びるその髪の美しさが目を引くが、それよりも驚いたのはその女性が言った一言だったのだ。
「私は凛音といいます。これ以上戦いをするのは無意味です。今すぐに止めてください!」
「無意味?」
「どういうことでしょうか......?」
やはりというべきか、眉を潜めた。
「貴方達は『人を護る』ことが役目のはず。何故このように無駄な命を散らせようとするのですか!」
凛音は天使達に必死に呼び掛ける。
しかし
「...何故、争うのですか...、無駄なのに。」
そう言って凛音は再び笛を吹き始める。
先程と同じに聞こえるが、その音色を聞いた天使達は徐々に動きが遅くなってきていた。
「これは......!」
幽々子ですら驚愕の呟きを零す。
目の前で味方が死んでも眉ひとつ動かさずに襲ってきた彼らの動きが、目に見えて遅い。
「...妖夢。」
「はい!」
楼観剣を構えた妖夢が疾駆。
峰打ちで天使達を気絶させた。
「ふぅ......。ありがとうございました。」
「私からも感謝させて。貴女が来なかったら、ちょっと危なかったわ。」
2人とも微笑んで礼を言った。
「...お役にたてて良かったです。」
凛音は微笑む。
「雪華さん、大丈夫かな......。」
「行ってきなさい、妖夢。ここはもう大丈夫みたいだし、ちょっとくらいなら問題無いわよ。」
「...はい!」
しばしの逡巡の後、妖夢は飛び立っていった。
「あの子ももう少し素直になれば良いのに。」
そして幽々子は苦笑しながらそんな呟きを漏らすのだった。
第四の戦場、楽唱。
......なお、これは余談ではあるが。
妖夢が雪華のもとへと向かうとき、有り得ない速度でえげつない数の敵を刈り取っていったために、生き残った兵士から、『女亡霊武者』と呼ばれ恐れられていたのだとか。後にそれを知った妖夢は落ち込んだ。そして雪華に泣きついた......かどうかは分からない。風の噂によるものだから真偽は闇の中である。