「霊夢!そっちどうだ!」
「数ばっかで鬱陶しいのよ!」
「…大丈夫そうだな。」
天使達に怒りを爆発させる霊夢を見て魔理沙は苦笑した。
「しかしこのままだと苦しいな……。」
「……そうね。際限なく来るから何れ限界ね。」
流石に彼女達と言えど分が悪い。圧倒的な戦力差がある。
「ふむ、なかなかに苦戦しているようだな。」
現れたのは紫色の髪と瞳をした大男だった。
「我は巫女を援護する。お前は魔法使いを援護しろ。」
「はーい!」
大男がそういうと彼の足元…影から少年が出てきた。
「…あんたら、雪華が言ってた応援ね?なら早いとこ手伝って頂戴!」
目ざとく気づいた霊夢からの催促。
「わかっている。追跡者、魔法使いをこっから遠ざけろ。」
「了解でーす!ささ、魔理沙さんはこちらへ~。」
「私の名前!?あっちょっ!」
抵抗虚しく無理矢理連行されていく。
「さて……聞くがいい!我は執行の名を冠する者である!これより先の戦いは死ぬ覚悟がある者以外は不要!命を懸けられる者だけがかかってくるがいい!」
魔理沙達が退いたのを確認した大男は声を張り上げる。
「…執行者……。」
彼のそんな姿を見て、霊夢はふとそんな言葉を漏らす。
そして、そのようなもの関係ないというかのように天使達は彼へと襲いかかった。が。
「さぁ、懺悔の時間だ。」
男がそういうと地面から無数の鎖が現れ、天使達を縛っていく。数は一本の者もいればさらに多くの鎖で縛られた者もいる。
が、数秒後に鎖は消えてしまった。
「な、なんで拘束を解くの!?」
霊夢からすれば、有り得ない光景。鎖で拘束し、トドメを指すのではないのか。
「…時は満ちた。スペルカード!『断罪 罪の濁流』!」
男がそう言って懐から小さな小鎚を取り出し地面を叩いた。その瞬間、天使達は何かを叫ぶ間もなく消し飛び、辺りに血飛沫が舞った。
「す、凄い……。」
「しばらく奴等は近付けん。」
彼が指差す方向を見ると、全身を真っ赤に染めたほんの数人の天使達が座り込んでいた。
「あいつらは……。」
驚きに満ち満ちた声で問う。
「対象から外れた者だ。」
「対象って、どういうこと……?」
「最初に宣言しただろう、『覚悟のあるものだけかかってこい』と。」
「…じゃあ、あいつらは覚悟が無かった、そういうこと?」
「覚悟がなかった、又は迷いがあった者達だ。そんな奴等があの光景を間近で見たあとに攻めてこれるとも思えん。それに……。」
男が指差した方向を霊夢が見ると、地面に黒ずんだ何かが地面の亀裂をなぞるように蠢いていた。
「これは?」
「罪の残滓だ。対象が付近を通過すれば間を置かずに肉片になる。」
「だから、あれなのね。」
そこまでして、霊夢は呆けたように空を見上げている1人の少女を見つけた。見ない顔だから、天使達の生き残りだろうが……。妙に気になって彼女に声を掛ける。
「ちょっと、大丈夫なの?」
「……。」
顔色1つ変えず、ゆるゆると緩慢に霊夢を見た。
「あんた、名前は?」
「……ノルン。ノルン・ベネット……。」
「……ふむ。」
男は懐から取り出した本を少女の頭に触れさせたあと、中身を読んでいた。
「どうしたの?」
それを不思議に思って霊夢が振り向く。
「いや、このノルンという者の記憶を読んだだけだ。少々おかしな点はあるが……この状態ならば死んだほうが楽であろう。」
「…やめてあげて。」
それを制止する。
「…何故だ。別にお前の知り合いでもないだろう?」
「そうだけど……、本当何となくだけど、
「……そうだな…ならこの場はお前の指示に従おう。」
男は頷き、霊夢に持っていた本を手渡す。
「これが、彼女の記憶……。
……!!」
突如目を見張った。
「…やはり、その名前には見覚えがあるか。」
霊夢が見ているページにかかれた文字。それらは黒で書かれているが、一部だけ赤で書かれている。
それは人物の名前であり……霊夢がよく知る二人の名前であった。
「つまり、あいつらに関係してるってこと……。」
そう。あったのは『朝霧 修羅』、『天水 桜』の名前。天水が桜の旧姓であることは彼女を知る全員が知っているし、聞くところによれば雪華は昔、修羅と名乗り、その名に相応しい活躍をしていたという。
「……そうか。だが、どうする気だ?この者の精神は破壊され、廃人も同然だ。」
「……あいつらのとこに連れてくわ。瀕死の怪我だって治せるあいつなら、もしかしたら………。ダメだったら永遠亭に搬送するまでよ。」
「我も心当たりが無いわけではない。戦いが終わったら相談してみよう。」
「よろしく。……何か忘れてるような気がするけど………、まあいっか。」
第六の戦場、断罪。