東方雪月花   作:くらんもち

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5話

翌日…

 

「桜、頼むよ」

 

「は、はい!」

 

僕と桜はきりきり舞いだった。

紫さんに頼んで用意してもらった、喫茶店の開店日である。

やはり幻想郷の人々には物珍しいらしく、開店前から長蛇の列であった。桜はウエイターとして働いてくれている。

 

「雪華様ぁ!助けてください〜!」

 

桜の悲鳴が虚しく響く。

彼女のお陰で、男性の客が集まる集まる。少し、というかかなり申し訳ないが、その人気を存分に利用させてもらおう。

テーブル席は男性ばかりだが、何故かカウンター席には女性客しかいない。本当に何故だ。まあそんなことも思いつつ、コーヒーとお茶菓子を作る。常連になってくれそうな人も数人居たので、滑り出しは上々だろうか。

…これは余談だが。興味本位からか、僕と桜の関係を聞いてくる人もいた。まあ当然のごとく友人だと答えると、桜が少しがっかりしたような顔をしていたのをよく覚えている。疲労で参ってしまったのだろうか。気をつけておこう。

 

そして数時間後。

 

「雪華〜、桜〜」

 

霊夢が来た。その時には客も落ち着いて、桜はげんなりしていた。

 

「あ、霊夢さん…」

 

「…大丈夫?」

 

「全っ然大丈夫じゃないです…」

 

「働かせすぎじゃない?」

 

「ありゃ不可抗力だよ。さすがに僕も疲れたよ」

 

「そんなに?時間ずらして良かったわ……」

 

「初日なのに忙しすぎです…」

 

「まあ、珍しいんだろうな。お茶屋はあっても喫茶店はないらしいから」

 

「む〜っ…」

 

「おー、どうしたどうした」

 

「疲れました…」

 

「うん、お疲れ様」

 

全く、良い笑顔だ。文句すら封じられた。

 

「はぁ〜…」

 

「溜息ばっかりついてると幸せが逃げていくぞ?」

 

「…雪華様ぁ」

 

「?」

 

「好きな人とか居ますぅ…?」

 

「いきなりだな、おい」

 

我知らず苦笑する。

 

「…居ると思う?」

 

「…分かんないので」

 

「居ないよ。というか、僕を好くって、余程の物好きだぞ」

 

そう言って、彼は少し笑う。その物好きが目の前に居るのには気づいてくれない。

 

「さて、そろそろ閉店だな。もう21時だ」

 

「本当に、忙殺されましたね…」

 

「…入店制限でもかけるか」

 

「前向きの検討をお願いしますぅ…。もう足動かない……」

 

「大丈夫?…それっ」

 

「はぇ…!?」

 

「足動かないんだろ?だったら僕が運ぶしかないじゃないか」

 

「そ、そうかもしれないですけど!も、もうちょっとやり方が…。いきなりお姫様抱っことか、は、反則です……」

 

真っ赤になって顔を伏せてしまった。さすがに少しからかいすぎたか。

 

「ごめんごめん」

 

 

 

「全く、お熱いのね」

 

部屋に運び、戻ってくると開口一番それだった。

 

「そういうわけじゃないんだけどな」

 

苦笑を禁じ得ない。

 

「店名とかは決めてるの?」

 

「ああ。『桜舞う春(スプリング・ブロッサム)』だな」

 

「あら、随分キザな名前ね?」

 

「春、桜の下には人が集まって、賑やかになるだろ?そんな風に、憩いの場になるように、ということさ」

 

「へぇ…」

 

「まあ、僕自身、桜が好きというのもあるんだけど」

 

「あんたらしいわね。頑張って」

 

「ああ。じゃあな」

 

「ええ、また来るわ。次は客としてね」

 

「お待ちしていますよ」

 

 

 

片付けをして、奥へ戻ると、桜が真っ赤で俯いていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「そ、その…、『桜が好き』、というのは……」

 

ああ、そういうことか。

 

「ああごめん。桜の木のほうだ、語弊があってすまないな」

 

「そう、ですか…、ですよね……」

 

「そうだな。あ、風呂には入ったか?」

 

「ま、まだです」

 

「なら、先に入るといい」

 

「…分かりました」

 

…その後、お風呂の中で独り泣いたのは、秘密だ。

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