東方雪月花   作:くらんもち

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53話

「俺達?何も面白いことはねぇぞ。」

「何でこっちに攻めてきたんだ?態々雪華を狙って異世界に来る必要無いだろ?」

「……あいつは俺達『熾天会』の最高戦力だ。出ることはほとんど無かったが、精神的な面でも必要だったんだよ。」

「…なるほど。ある意味『象徴』であり『偶像』…だったんだな。」

「言い得て妙だな。事実、火那(こいつ)を含め、想いを寄せる者は多かった。」

「まあ、あの性格にあの雰囲気だからなぁ。天然の人誑しは恐ろしいな。」

「以前はあのように朗らかではありませんでしたの。なんというか、抜き身の剣のような、触れれば切れそうな、そんな雰囲気。でも、戦果を上げれば褒めて下さって、その時の優しげな表情にもう……!」

 

火那は頬を紅く染める。

 

「なるほどね…。聞きたいことは聞けたから俺は戻る。まあ、可能な限り大人しくしてるんだな。」

「当然だ。……悔しいが俺達は捕虜だからな。」

「知りたいことがあれば今度聞け。答えられる範囲で答えてやるよ。」

 

そう言って零は部屋を後にした。

 

──────────────────────────

 

「……。」

 

零が火那達と話した翌日。目を覚ましたのは雪華だ。

 

「お目覚めですか…予定ではもう暫く目覚めないと伺っていたのですが。」

 

目覚めた雪華の耳に聞きなれない男の声が聞こえる。

 

「まあ半分妖怪だしな。快復だって純粋な人間よりは早いさ。」

 

頭を押さえながら起き上がる。

多少のふらつきはあるが、ただの貧血だろう。結構血を流したようだし。

 

「零が待ってるんだろ?体動かさなきゃ治るものも治らない。」

 

少し笑ってベッドから降りた。今も桜と紅葉はすやすや眠っている。

 

「いえ、そう言う訳にはいかないのです。……少々面倒になっていますので。」

「面倒なこと?」

 

まさかフラン達が何かやったのか。

 

「はい。内容は桜様がお目覚めになるまではお伝えできませんが…下手すれば先の戦いよりも被害が出るかと。」

「……凄く嫌な予感がするな。分かった。庭で剣を振っているから、彼女が起きたら教えてくれるか?」

「申し訳ありませんが、雪華様にはここに留まっていただきます。」

「ん?そうか。……まあ、たまにはゆっくり過ごすのもいいか。」

 

ベッドに座り直した。変わらず2人は寝息を立てている。それが微笑ましくて、そっと撫でた。

 

「それはそうと…お体に変化はございませんか?」

「いや、特には。」

 

これと言った異常はない。

 

「それは良かったです。桜様や紅葉様には検査をしたのですが、雪華様には出来なかったので。」

「出来なかった?どういうことだ?」

「能力を使った検査だったのですが…恐らく雪華様の能力と干渉しあった結果かと。」

「能力?僕にそんな能力は……、いや待て。」

 

急いで自身の能力を確認する。

……あった。これのせいだったのか。雪華は驚くと共に笑みを浮かべた。

 

「心当たりがあるようですね。」

「ああ。どうやらこの戦いで覚醒したらしい。……面白いな、これ。

……零にだって勝てるかもしれないぞ。」

「ふむ…あの方も以前似たような事をおっしゃっていましたね。」

「そうなのか?

……だが、恐らく僕には届かない。いよいよチートめいてきたな。」

「私としてはあまり面倒事にはしたくないのですがね………。」

「大丈夫だって。ここじゃ戦わないさ。」

 

雪華は苦笑する。

 

「遠巻きに今度戦うぞ、と言われてるような気がするのは気のせいだと願いたいですね。」

「大正解。」

 

変わって雪華には珍しく人の悪い笑みを浮かべた。

 

「……はぁ。まあ私は自分で戦うつもりはありませんがね。」

「やるならあいつと一対一だ。じゃないと面白くないし。

……それとも、式神全員で僕と戦ってみるか?」

「恐らくそうならずにこちらの幻想郷を相手取っての戦争でしょうな。」

「……何故そうなる?殺すつもりで戦うのは事実だが、本当に殺す気なんて微塵もないんだが。」

「どうでしょうね…今回の件で零様の興味が貴方以外にも向けられていなければ……まあそれは今どうこう言っても意味はありませんね。」

「……そうだな、考えたくない。」

「う……ん…………。」

 

桜が声を上げた。

 

「おや、お目覚めのようですね。」

「せっかさまぁ〜。」

 

抱き着いてくる彼女を抑え、雪華は苦笑を漏らした。

 

「私が居ることに気がついておられないようですね。」

「寝起きはいつもこんなものさ。そしてな。」

「……あれ?」

 

眠気が覚めた彼女はみるみる内に赤くなる。

 

「ごごごごごめんなさいっ!」

「ここまでがワンセットだ。」

 

「…なるほど。……そういえば、私の自己紹介がまだでしたね。」

「統率者……、コントローラー。違うか?」

「少々違いますね。私の名は『統制者』。以後お見知りおきを。」

「おや。まあいいか。精度がまだまだだな。覚醒したばかりだし仕方ないか。」

「どうやら、貴方も私と似たような能力なのですね。」

「いや、多分違うぞ。それこそ戦ってみれば分かるだろうな。」

「…私はデスクワークがメインなのですが。」

「同時に指揮官でもあるはずだが。」

「私は指揮官であり通信兵であり生物学者です。あまり表には出ないのですよ。」

「成程な。永琳先生と気が合いそうではあるが。」

「桜様には関係ありませんよ。………零様も、そんなところではなく此方に入らしたらどうですか?」

 

男がそう言うと扉が開き、零が入ってきた。

 

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