東方雪月花   作:くらんもち

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54話

「おはよう、零。」

「おはようございます。」

「よう…お前は別として、桜まで化物染みてきたことにショックだな。」

「私、ですか?」

「ああ、君は恐らく、熾天使になった。」

「え……?」

「……無意識だったのか。」

「無意識……だとしても体に変化くらいあるだろ?」

「ええ、何と言うか、筋肉痛……、みたいなものですかね。魔力回路にダメージがあります。」

「そうか…ちょっと失礼。」

 

そう言って零は桜の背中に触れる。

 

「……こんなもんか。どうだ?違和感あるか?」

「……治ってます!」

「凄いな。」

 

桜は歓喜の、雪華は驚愕の声。

 

「…………さっきまで似たようなのを弄っていたからな。」

「似たようなの?」

「何だそれ。」

「おとおさん……、おかあさん……。」

 

そこで紅葉も目覚めたようだ。

 

「…少々不味いな。雪華、紅葉を少し遠ざけろ。」

「分かった。紅葉、ちょっとお話するから、お姉ちゃん達と遊んでおいで。」

「やぁだ………。」

 

寝ぼけ眼で雪華と桜にしがみついた。

 

「………。」

 

零は考え込む。

 

「どうしたものか……。」

「あんまり邪険にしたら可哀想ですよね……。」

 

紅葉はそれでも2人の服を掴んだままだ。

 

「……今だけ許せ。」

 

そう言って零は紅葉の耳に触れた。

 

「んぅ……?」

 

「……『干渉』。」

 

再び紅葉は眠りに落ち、幸せそうな笑みを浮かべている。

 

「ああ、感謝するよ。」

 

雪華は苦笑した。この子は自分達から離れないのだ。こうした方が手っ取り早い。

 

「…さて、今から少々ショッキングな物を見せる。覚悟はいいか?」

「……分かった。」

 

桜も頷く。

 

「……これを。」

 

そう言って零が見せたのは………以前ライガ達に見せたノルンの写真であった。

 

「「………!!」」

 

雪華は目を見張り、桜は手で口を押さえる。

 

「……辛いだろうが、落ち着いてほしい。」

「………なぜ彼女はこうなっている。」

 

数秒の後、雪華が問う。

 

「詳細は分からんが……経緯は聞いている。」

「……彼女を、助けるには。」

 

「取れる選択肢は3つ。そのうち確実に助けられるのは1つだ。」

「……その方法とは?」

 

「…ノルンを式神にする。」

「どういうこと、ですか……?」

 

震えながら桜が口を開いた。

 

「今のノルンの精神は完全に不安定だ。まぁ人間や妖怪の精神が不安定なのは変わらないんだが………式神のそれは他よりも比較的安定している。」

「………私の、剣なら。」

「桜?」

「雪葉なら、鎖を斬れます。同時に、ノルンちゃんの不安や絶望だけを、取り除くことが出来る。桜華の力が異能を斬る力なら、雪葉の力は形無きモノを斬る力。

……それなら、あの子を助けられませんか?」

「…それが出来る代物なら、苦労はしないさ。」

「でも………。」

「……他の方法は。」

「1つは無理やり引き剥がす。今回精神に巻き付いている鎖は切れた瞬間に能力が発揮する。だから切れる前に勢いよく引き剥がす、脳筋みたいなやり方だな。これでやろうものなら二次被害は避けられないだろうな。」

「……。」

「それをしたとして、彼女はどうなる?」

「…精神に巻き付いてるものが爆発するんだ…言わなくても分かるだろう?」

「……助かる可能性は、限りなく低い。」

「なら、もう選択肢なんて……!!」

「……そうだね。」

雪華は、非力を呪った。なぜ力を持っておきながら本当にやりたいことが出来ないのだろうか。

「……さっきの式神にするという案だが…()()()()()()()()()簡単に出来る。」

「……どういうことだ。」

 

雪華は目元に険を増す。

 

「式神になったノエルを()()()()()ということが可能かどうかわからない、と言えばいいか。」

「それこそ、お前の干渉の能力でとうにか出来ないのか。」

「やったことねえからなんとも言えねえな。」

「ではどうすれば……!!」

 

思わず自身の膝を殴った。本当に、無能が過ぎて吐き気がする。

 

「本当はお前らが目覚める前に処理するつもりだった。」

「……ではなぜ。」

「ほら、これ。」

 

そう言って零が雪華に手渡したのは一冊のノート。

それはノエルの記憶を写したものだった。

 

「これ、ノルンちゃんの想い出……?」

 

それを見て桜は呟いた。自分達と遊んだこと、一緒にやったことが全部残っていた。それ程に大切だったのか。

 

「それがなければさっさと出来たがな……お前らの知人となれば、扱いも変わってくる。」

 

ふと、雪華が零す。

 

「………そうだ。僕の、新しい能力を使う。そうすれば、鎖だけを『無効化』出来るかもしれない。」

 

「ほう?」

 

「連れて行ってくれないか。彼女の元へ。」

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