東方雪月花   作:くらんもち

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55話

「……わかった。桜、お前はどうする?」

「……行きます。夫にばかり、背負わせはしません。」

 

桜もまた、覚悟を決める。

 

「いいだろう、ついてこい。」

 

零は立ち上がり二人と共にノルンのもとへ向かった。

 

「……改めて見ると、中々凄惨だな。」

「……。」

 

桜は一言も発しない。

 

「今更怖じ気づいたのか?」

「まさか。……始めよう。」

 

その言葉とともに、結界を構築した。

 

「ああ……。」

 

零はそれに合わせ手をかざす。

するとノルンの体から紫色の鎖のような物が浮かび上がってきた。

 

「見えるな?あれが『鎖』だ。下手に切るなよ?」

「分かっている。」

 

鎖に触れる。すると彼から白銀の魔力が立ち昇り、鎖へと集まっていった。

 

「………。」

 

零は黙ってそれを見ている。

 

「もう少し。」

 

ゆっくりと、しかし確実に、鎖は解けていく。

 

「……慎重にな。」

「ふぅ……。」

 

ついに鎖は完全に解け、霧散して消えていった。

それを見届け、安堵したように溜息をついた。

 

「お疲れだったな。」

 

零は雪華の肩を叩く。

 

「本当だよ。」

 

雪華は苦笑した。そして桜もまた、安堵していたのだった。

 

「ん?目が覚めたんじゃねえの?そいつ。」

「ん……。」

 

零の言う通り、ノルンの瞼が震え、目を開けた。

 

「ノルンちゃん!」

「わわ!……桜ちゃん?桜ちゃんだよね?」

「良かった……!」

「え、ちょっとどうしたの!?」

 

突然泣き出す桜に、困惑を隠しきれないノルン。雪華は、優しく微笑んでいた。

 

「雪華。」

 

零が誰にも聞こえないように耳打ちする。

 

「……どうした。」

「ノルンについてだが、記憶を一部弄ってある。あの光景を思い出さないように改竄してあるから、それは内緒にして置け。」

「分かった。」

「……修羅様?」

 

ノルンが此方に気付いた。

 

「…久しぶりだな、ノルン。」

「お久しぶりです!」

「………さて。」

 

零は雪華達を残して先ほどの部屋に戻った。

 

───────────────────────────

 

「……さて、面白いことになってきたな。」

 

零は部屋に戻りながらそう溢す。

雪華がノルンに使った能力は明らかに新しい物だ。以前のアイツには無かったものであり、恐らくは零にすら届く物であった。

 

「…まあ、新しい力はアイツだけじゃないが………ん?」

 

そこでふと足を止める。何故ならば目の前に見知った顔が居たからだ。

 

「……あなたは。」

 

そこに居たのはレミリア。偶然鉢合わせたらしいが、面倒なことにフランと咲夜も付いている。

 

「……。」

 

3人から立ち昇るのは静かな敵意。

それもそうだ。以前零は声を大にして雪華を殺すと宣言したのだから。

 

「おやおや、これはこれは。」

 

対する零は何でもないかのように接する。

 

「……待ちなさいよ。あなたどの面を下げて来たのよ。」

「道理であのお兄さん見た事あると思った。あんたの仲間だったね、そういえば。」

「彼を殺すと宣ったのですから、逆の覚悟も出来てございますね?」

「……へぇ、殺ろうってのか?」

「あなたが望むのなら、ね。」

「私はお嬢様に従うまでです。」

「いつでも良いよ。」

 

全員が臨戦態勢を取ったその時。

 

「そこまでだ。」

 

響いたのは雪華の声。

 

「うん?雪華、再会の話し合いは終わったのか?」

「まだだよ。魔力が膨れ上がったから来てみれば。」

「何故止めるの、雪華!」

「そうだよ、お兄様!」

「彼は、貴方を殺すと言ったのですよ!?」

「だったら何だ。こいつが望んでるのは正々堂々とした『殺し合い』だ。僕が消耗した隙を突くような姑息な真似するかよ。」

「解ってるじゃないか雪華。それに、俺らが今居るこの部屋には紅葉居るしな。………巻き込んで良いなら本気で殺っても構わないぜ?」

 

部屋を指差しながら零は言う。

 

「というわけだ。君達がやるなら僕は娘を護るために戦わなくちゃならんが。」

「……。」

「分かったよ。何か埋め合わせするから。」

「……貴方がそこまで言うなら、引き下がるわ。」

「…紅葉ちゃんを巻き込むわけにはいかないもんね。」

「期待しています。」

 

3人ともなんとか収めてくれたようだ。

 

「じゃあ俺はやることやるぞ?」

「頼む。」

「あいよ。」

 

そう言って零は部屋に入っていった。

 

「それにな、今回助けてくれたのはあいつとその式神だ。せめて今回だけでも感謝しといてくれよ。」

「……まあ、確かに助かったのは事実ね。」

 

レミリアも努めて平静を装う。すると、バンッと音を立てて扉が開き、紅葉が出てきた。

 

「紅葉?どうしたのかしら?」

「おとうさん!なんで!なんでいっちゃったの!!」

 

……どうやら勝手に違うところに行ったためご立腹らしい。

 

「ごめんごめん。ちょっと昔のお友達に会いに行ってたんだよ。」

「む〜……。」

 

抱っこをしてやると少し落ち着いたようだ。

 

「相変わらず、お前は愛されてるんだな。」

「わたしもおとうさんといく。」

「彼女の所に?別に良いけど……。驚くだろうな。」

「紅葉は一昨日からこんな感じよ。」

 

素っ気なくレミリアは零に応えた。

 

「そうかい…んで、どうする?」

 

零はレミリアに問う。

 

「ハンデ有りで良ければ遊んでやるが?」

「彼がやめろと言ったのだもの。するわけないでしょ。」

「意外だな。てっきり一撃いれに来るかと思ったが…。」

「行くわよ、咲夜、フラン。」

 

剣呑な表情を崩さぬまま、彼女達は去っていった。

 

「……お前は一々煽るんじゃない。ただでさえこの世界での印象は最悪なんだ。」

「その方が殺し合いになったときに容赦無くなるから良いと思うんだがなぁ。」

「避ける努力をしろ。」

 

雪華は嘆息する。

 

「詰まらんなぁ。まあ、時が来れば争うことになるだろうし、それまでお預けだな。」

「どうせやるなら代表戦だ。大切な人達を喪いたくない。」

「まさか、俺がアイツ等を本当に殺すとでも?」

「転ばぬ先の何とやら。

……とにかく行こうか。ノルンを待たせている。」

「俺も行こうか?確認したいこともあるからな。」

「分かった。」

 

そして雪華は紅葉と零を連れ、ノルンの部屋へ戻る。

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