「あ、お帰りなさい。……ってその子誰ですか?」
「娘の紅葉だ。」
「可愛い!」
零は部屋の壁に寄りかかっている。
「あれ、零さんはどうかしたんです?」
「いや、少し確認にな。」
「確認?」
「ああ、体や魔力回路に異常はないか?」
「少し疲れてますけど、それ以外は全然。さすが雪華様のご友人!」
「そいつはよかった。」
「……そういえば、紅様とグレムレート様は?」
「2人なら無事だ。捕虜にしてるだけだし、殺す気も毛頭ない。」
「そうだな、死んではいないな………。」
零は目を逸らす。
「良かった……。」
「問題無いようなら俺は戻る。」
「はい!ありがとうございました!」
久しぶりに再会した友人との歓談は、零が出た後も続き、夜も更けていった。
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翌日、雪華は紡ぎ手から言われた通り、零の部屋の前に居た。ノックを3回。
「失礼する。」
その言葉と共にドアを開けた。既に零は起床していたらしく、窓辺の椅子に寄りかかっている。
が、そこに居るはずの零は雪華の記憶と違い、髪の毛は闇のような黒だった。
「零?」
髪色が違うだけで随分と印象が変わるものだと思いながら首を傾げた。
「ん?……ああ、君か。」
振り向きながら男は立ち上がる。
「……零、ではないな。誰だ。」
ほんの少しだけ、警戒する。敵意は感じないが、正体不明。
「僕か?僕は
「レイ……、
……零のクローン元、か。」
「うん、その認識で合ってるよ。」
男…
「君の事は
「……僕のことも知ってるのか。」
「まあね。」
「で、零の兄が何の用だろうか。」
「ん?……ああ、そういえば言ってなかったね。」
「…?」
「僕は彼の兄ではないし、この体も僕のものでは無いんだ。」
「……まあ、言われてみれば………?」
首を傾げる。
だが、共に暮らし、遺伝子等々も同じ。だからある意味兄弟とも言えるのではないか、とも思うのだった。
「それに僕は、既に死んでしまっているしね。」
「ではなぜこうやって会話が?零が死霊を降ろしたわけでもあるまいし。」
「彼の精神媒体に僕のを追加で書き込んだのさ。君も知っているとおり、遺伝子レベルで言えば僕等は同一人物だからね。」
「成程な。で、僕に何か?」
「君に興味が湧いたのさ。本気で無かったとはいえ、彼を討ち破った英雄にね。」
「英雄って……。痛み分けに近い敗けだったんだが。与えた被害は無天だけだし、聞くところによればさらに強くなっているそうじゃないか。」
そう、自分は敗けた。故に、日々彼女達と戦うことで鍛錬をしている。今回目覚めた能力も相まってあの時とは比べ物にならないだろう。
「僕が死んだ後も彼は戦っていたみたいだが……彼に傷を負わせたのは殆ど居なかった。君以上に戦えた者は居なかったということさ。充分に誇って良いと思うけどね。」
「それは奴に勝った時のお楽しみさ。」
雪華は肩を竦めて薄く笑んだ。
「今の彼…というか僕に勝つのはほぼ不可能といっても良いが……それを覆すのが君らしいと言えなくはない。」
「だろう?生憎と、常識はないんでね。
……
「ああ、僕の記憶を彼は見れないし、その逆も然り。何か聞かれたくない話しでもあるのかい?」
「僕の新しい能力について。」