東方雪月花   作:くらんもち

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6話

 

数日後。初日に学習した僕は、即刻『桜舞う春』に1日700組の入店制限をつけることにした。700組目が入店すれば、すぐに新しい客の入店を制限。これにより、桜の疲労もかなり改善されたようだ。

 

「…700組目。これより入店を制限致します!」

 

外の人々からえー!という声があがる。だが既に事情を説明してあるので、潔く帰っていく。

 

「桜、今日は大丈夫?」

 

「はい。ありがとうございます、あのままじゃ冗談抜きで死んでました……」

 

「うん。さすがに客足がえげつなかったからね。君が壊れたら嫌だからさ。お疲れ様」

 

「はい!」

 

 

そして、最後の客が店を出ていく。今日はこれで店じまいだ。

 

「ふぅ…」

 

「桜?」

 

「いえ。何でも」

 

「なら良いんだけど…、何かあれば遠慮なく言ってくれよ?」

 

「っ…、はい」

 

言おうとした。でも、言えない。拒絶されることが怖い。

 

「うーん、まだ明るいから買い物にでも行ってこようか。お留守番お願いしてもいい?」

 

「…はい、了解しました」

 

 

着替えて外へ。野菜やら穀物やら色んなものが売っている。今晩はどんなメニューがいいだろうか。

 

「桜が好きなのは…、魚だったか」

 

なら、川魚を梅煮にしよう。ちょうど咲夜が梅干しを漬けていたのをもらっていた。…なんで梅干しなんて漬けてたんだろ。それはさておき、ちょうどよさげなのを買った。それと、店で使うものをいくつか。コーヒーに合う和菓子などを作ってみようか。そして帰路につき、ふと見ると、店があった。本屋だろうか。本棚が見える。

 

「レシピの本とかないかな」

 

そう思って入ってみる。レシピの載っている本を探して、色々漁っていると、奥から女の子。着物の上に黄色のエプロンをつけている。

 

「こんにちは!何かお探しですか?」

 

「うん、何か料理のレシピが載ってる本はないかとね」

 

「それでしたら…、こちらはどうでしょうか!」

 

持っている本から1冊を出した。

 

「これは?」

 

「お菓子の作り方などが書いてある本です。あなたにぴったりではないかと」

 

「…なんで、僕がお菓子のレシピを探してるって分かったんだい?」

 

「珈琲の匂いがしますから!はじめましてですし、最近出来た喫茶店とやらの方ではないかと思いまして!」

 

「なるほど。見事だね、名探偵さん」

 

「どうですか?」

 

誇らしげにしている。微笑ましい。

 

「あ、私、本居 小鈴って言います。今後とも『鈴奈庵』をご贔屓に!」

 

「僕は霜月 雪華、『桜舞う春(スプリング・ブロッサム)』の店主だよ。よろしく」

 

「やっぱり!行ってみたいなぁって思ってたんです!今度、お伺いしますね」

 

「ああ、待っているよ、小さな名探偵さん。じゃあ、これをもらおうか。いくらだい?」

 

「あ、はい。ええと」

 

その時だった。

 

「金を出しやがれ!」

 

「…ここにも強盗っているんだな」

 

「んだよ、てめぇ!」

 

男は短刀を持っている。今にも斬りかかって来そうだ。

 

「ただの客だが?」

 

「ああ?まあいい。金出せ!」

 

「…!」

 

小鈴は既に萎縮してしまっているようだ。

 

「出さなくていいぞ、小鈴」

 

「…スカしやがって。てめえ、ただで済むと思うなよ!」

 

回り込む構え。逆上して小鈴を人質に取るつもりらしい。だが、させない。先に回り込む。

 

「ちっ!」

 

「隠れてろ」

 

「は、はい!」

 

「死ね!」

 

振り下ろした男の腕を掴み、外へと投げ飛ばす。重心もブレブレなので、簡単だ。

 

「くそ!」

 

やけくそになったようで、短刀をやたらめったら振り回す。

 

「遅い!」

 

短刀を横から蹴り、叩き割る。日本刀は横からの攻撃に弱いから比較的簡単だ。そして鳩尾に1発拳を、頬に1発蹴りを、さらに腹に蹴りを入れて吹き飛ばし、背から地面に落ちた瞬間、トドメに膝をぶち込む。

 

「これでよし。大丈夫か、小鈴」

 

「は、はい!とても強いんですね…」

 

「ま、気絶するくらいに加減したけどね」

 

「す、すごいなぁ」

 

「怪我がないなら、良かったよ」

 

無意識のうちに、彼女の頭を撫でていた。

 

「へっ…?」

 

彼女の間の抜けた声で我に帰る。

 

「あ、ごめん!つい…」

 

「大丈夫です、全然…、これでも、一応まだ子供ですし…」

 

「本当に済まない。来た時にサービスさせてもらうよ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「じゃあ、また」

 

「はい…。…行っちゃった」

 

そして、自分の顔が火照っていることに気づいた。

 

「あれ?なんでこんなに暑いんだろ…、もう霜月なのに…」

 

風邪、だろうか。あとで風邪薬を飲もう。まだ備蓄があったはず。ただ、何故かはわからないけど、この火照りは薬を飲んでも治らない気がする。

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