女勇者のお供は僻み系少女   作:てりのとりやき

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だから、彼女は死んだ

 

 人が、ついに自由転移魔法を独自で開発・実用化したと言う。

 そうして現れた人類最高戦力の集団は、傷だらけの魔物二体を放って、数段高い位置で未だに座り続ける女、マーニャへと殺意を向けている。

 

「……投降しろ」

 

 一人の男が人を代表するようにそう言った。マーニャの父親、アマルツィアだった。

 

「人は魔物に並び立った。魔物とて、人の痛みを知ったはずだ」

 

 魔物が自由転移魔法を得てからの数か月で多数の死者が出ていた。魔物だけではなく、人とて少なくない血と資源を失っている。

 人々の浮かべる表情には、戦争相手の総司令官を前にした興奮より、どこか陰鬱とした疲れがあった。

 

「殺したい者を的確に狙える攻性魔法。防壁全てを通過できる質量兵器。夢のような血みどろの世界がもう目の前にある。物理的な制約を無視できるまでに至った俺たちに不可能はなく、世界は線ではなく点と点で結ばれる――」

 

 アマルツィアの言うように、戦争は変わった。

 最前線を維持すれば多くの者が平和を享受できる時代を、自由転移魔法の座標移動が破壊してしまった。いつ、どこであろうと魔物から襲われる『かもしれない』という恐怖。そして現実に襲撃された後方基地の数々がある。

 人の誰も彼もが敵種を滅ぼして戦争を終わらせたがっていた。

 

「それでもか。それでも……どちらかが滅ぶまで殺し合いたいか、魔物」

「まだだ……」

 

 と、呻き声を上げたのは先ほどまでここ……魔王城の玉座には居なかった男。男の側には尻尾を半ばで切断され、獣耳の片方を切り落とされた銀髪の女魔物――ウルもいた。

 灰色の巨躯をした魔物は、その胸部に巨大な風穴を開け、全身から血を流しつつも尚、生きている。

 四天王の一人、ゴルだった。

 

「まだ。まだッ! 何一つ終わっていない……我々も、貴様らも、どちらも生き残っている!!」

「無意味だと言っている!!!!」

 

 吼えたのは人間の女。“魔法殺し”と呼ばれる軍人は、魔物への憎しみが籠もった声で叫び続ける。

 

「どうして殺し合う必要がある? 何故いがみ合う、何故殺しでしか通じ合えない!」

「あたし達はなあ……戦争が好きなんだよ。殺しだ。潰し合いだ。絶滅まで追い込み、絶滅するかもしれない興奮だろ!!」

 

 腹部の刺し傷を手で抑えながら、ウルがそう答えた。

 

「そこに殺せるような異種がいて、そして殺すための力があるなら、あたし達は躊躇わないぜ」

「……狂っている」

 

 “魔法殺し”はそう吐き捨てる。理解できない異種生物への嫌悪だけがただ在った。

 魔物が投降を拒絶したことで、会話は平行線をたどる。生まれた静寂は、数秒もすれば殺し合いに発展すると思われた。――魔物もそれを望んでいるのだろう。

 マーニャは、だから、全員が動き出す数瞬の空白を縫うように口を開く。

 

「わかりあえるはずなどなかった。ただ、住む星を選ぶ権利が誰にもなかった」

 

 戦争は止まらない。ゴルが言ったように、きっとどちらかが滅ぶまで続く。

 それは人と魔物が違い過ぎる異種だからだ。この場に居る人間はそう理解できただろう。

 だが、世界中の人間は? 

 知る機会すら与えられないのは理不尽だ。

 

「ねえ、聞いてください、世界中の人々よ」

 

 マーニャは玉座から立ち上がる。同時に、無数の魔法陣が玉座の間全域に展開される。

 

「――音と映像の全世界同時配信!?」

 

 魔法の性質を看破した“魔法殺し”の驚愕は、道理にかなっている。

 マーニャは魔法を一切使えない無能力者である。そして、自由転移魔法にも勝る情報伝達の魔法群は人類が得た叡智だ。つまり魔物からの魔法支援ではない。

 ならば、この魔法は、どこから――。

 

「まさか……我らが神は、とっくの昔から……!?」

 

 “魔法殺し”の瞠目すらも、世界中の人々が見つめていた。

 数十億の視線を一身に受け、マーニャは恍惚に薄く笑う。

 

「人は魔物と並び立った。

 魔物は人の痛みを知った」

 

 戦争に打ち勝つため、後方基地にて物資の支援を続ける兵士が動きを止めた。将校士官は書類に走らせる筆の動きを止めてしまった。

 故郷を失った魔物の子供が、遊ぶのを止めて魔王の微笑みを見上げた。

 

「それでも人は博愛で、

 それでも魔物は殺しを求める」

 

『王国』、王都では活気あるはずの商業区が静まり返っていた。ごった返す群衆の全てが勇者として知られる女が魔物の側に立つ事実を理解できずにいた。

 

「自由転移魔法は戦争を簡易なものに変え、

 こうして人類が作り上げた情報伝達の魔法は世界を更に近づける」

 

 自由転移魔法による奇襲を受け壊滅した基地跡地にて、救難にあたっていた兵士がいた。親を魔物に殺された子供がいた。最前線で戦っていた魔装化歩兵がいた。魔物が居た。人がいた。 

 その全てに、マーニャは問いかけた。

 

「ねえ、気付かない? 我々はあまりにも強くなりすぎたわ」

 

 殺したい指揮官を的確に狙える攻性魔法だ。

 防壁全てを通過できる質量兵器だ。

 夢のような血みどろの世界が、もう、目の前にある。

 ――自ら発した言葉の意味を、アマルツィアは息を呑みながらも理解する。自分達がどれだけ遠い所へ来てしまったのかを、ようやく。

 

「――まさかマーニャ、お前は」

「おめでとう」

 

 女は父親の言葉を遮る。あくまで彼女は、世界中の人と魔物に対して言葉を紡いだ。

 

 

 

「人と魔物はついに、戦争を無価値にする所まで来たわ」

 

 

 

 彼女の言葉は衝撃をもって人間、そして魔物へと伝播した。亀裂は目に見えない形で空間を割る。彼女の父、アマルツィアが呻きを上げた。

 

「――――無価値、だと」

「ええ」

「まさか……お嬢ちゃんは、戦争の価値を無くすためだけに人類を裏切ったのか……?」

「ええ。争いや諍いは決して絶えない。だとしても、戦争をするには危険すぎるほど強くなってしまったなら、私達は強制的に別の手段を持たざるを得ないわ」

「変われると思うのか……!」

 

 食い下がったのは“魔法殺し”だった。変革など出来るはずがないと、マーニャを嫌悪する壮絶な表情が物語っている。

 

「人も、魔物も! 戦い以外を知らないんだぞ!」

「ならば私のフニがどちらも滅ぼす」

 

 即答。冷酷な言葉と同時に、ソレはマーニャの隣に現れる。

 自由転移魔法――当然のように少女はそこに居た。

 栗色の髪。濁った眼差しを覆う長いまつ毛。そして、背には十二の魔法陣――。

 『現人神』フニ・フラ・フリペチーノは自らが展開した映像と音声の全世界同時配信魔法へと、こう告げる。

 

「既に宇宙より小惑星の落下誘導を開始しています。星に直撃するまで残り10分程度ですか。ご存知でしょうが、誰でも知ってる惑星ですよ」

 

 その場にいる人類最高戦力の全員が疑心を膨張させた。魔物ですら、変わり続ける情勢に追いつけないながらも敵意で『現人神』を睨んだ。

 フニは気にも留めずにマーニャの側に立ち、こう宣言する。

 

「――月が地球に落ちるまで10分です」

 

 玉座の間。その天井に映る蒼穹が、一瞬にして巨大な魔法陣に塗りつぶされた。

 およそ惑星と同規模の大きさを誇る魔法の展開。

 全員が言葉をなくした。新世界創造を成すよりも遥かに酷な言葉だったからだ。

 ――神は、自分とマーニャ以外の命を不要と切り捨てた。

 

「バカな!」

 

 吼えたのは、この場にいる魔装化歩兵の一人。隊長クラスだろう彼は、部下の兵士――もしくは人類統合軍全員の意思を代弁するように、『現人神』へと縋るように問いかける。

 

「私たちを裏切るのか!? 人から生まれた、人たる神が!!!! 魔物の側につくというのか!」

「いえ違います。私は、お姉さまだけの神ですから」

「人は……命は、神は!! ここまで来たか、そうまでして生きたいと願う者を否定するのか!? それほどに生きとし生けるものが憎いか、魔王――!!!!」

「だったら私を見て」

 

 マーニャの言葉には語気の強さがあった。

 

「私を見なさい。誰かの悪意一つで簡単に死ぬ私を見なさい!」

 

 迂遠な言い回しには理由がある。

 彼女は、未だ人類としては『女勇者』のままだ。彼女が人を裏切り魔物の長になったなどという醜聞を、人類統合軍は公表していない。

 そして彼女が勇者という座に就いた際、ほとんどの関係者は彼女が魔法を使えないという事実を忘却させられた。

 

「――手折られるだけの命を想像して」

 

 マーニャという存在自体が既に人類統合軍の暗部に当たるのだ。故に、彼女(・・)の言(・・)葉は(・・)止め(・・)られ(・・)ない(・・)

 その事実そのものを怒るように、彼女の言葉には苛烈さがあった。

 

「生きたいと願う赤子の泣き声をどうか聞いて、弱さを愛せる生き方があるわ、強さを尊ぶ生き方があるわ、世界がどうしても一つになれないなら私たちは既に別の選択肢だって用意できるのよ! ――星の自由を、人も魔物だって選べる所まで来たじゃない!」

 

 自由転移魔法さえあれば、人も魔物も、地球以外の星を選べるのだ。住環境の似た惑星の探索など魔法さえあれば簡単に事足りるのだから。

 黄金の全盛期が、もう目前にある。

 それでもマーニャの表情には褪せた寂しさだけがあった。

 

「でもね……私だけは選択肢を持てない」

『――勇者よ』

 

 声の主は玉座の間には居ない。それは、この場へと自由転移魔法を用いてどこか遠くから運ばれた音声情報そのものだ。

 マーニャは知っている。この声の主こそ、自分を勇者に仕立て上げた人類統合軍最高司令官のものだと。

 

『それ以上を口にすれば、貴様は本当の意味で人間の世界に居場所を失うぞ』

 

 人類の戦争意志を代弁する男からの、脅迫じみた言葉は無視出来た。

 

「ねえ、聞いてくださいますか、全ての人々、全ての魔物達」

 

 ――状況は混迷を極める。

 魔物は困惑しているだろう。

 世界中の人間とて、初めて見るタイムラグ無しの映像配信魔法には戸惑っているはずだ。

 ここが破滅か終結かの瀬戸際だと、果たして世界中の命は理解できているだろうか。

 マーニャは、自由転移魔法によっていつ殺されるとも分からない空間に、それでも立つ。悪意の全てが自分に向いても構わないと思い直す。

 深呼吸を、ひとつ。ふたつ、みっつ。

 ……そうとも。

 今この場において、誰だろうとこの呼吸は止められない。

 だから、マーニャは、誇らしげに胸を張った。

 

 

 

 

「私は、魔法をひとつも使えません」

 

 ――隣に最愛の少女がいるから、怖いものなど何も無い。

 

「私は父と母の魔力を混ぜ合わせて作られました。

 私となるべきだった受精卵は、母の負った腹部を全損するほどの重傷の結果、失われました」

 

 

 

 

 

 

 恐慌が、驚愕が、猜疑が、世界中で震動するのを肌で感じた。

 同時に人類統合軍のすべてが自身の命を今すぐにでも潰したいのだと言う悪寒に震えた。それでも、マーニャは華やかに笑う。

 

「私は魔物と同じ産まれ方をしたのです」

 

 そして、人が知らない魔物の生まれ方にも直結する。

 彼女が投じた新事実は、人が選ばなかった生存の仕方だ。“魔法殺し”はこの場に居る魔物へと反吐を吐く。

 

「生きることのない命を、望んだ一人の父親がいたの。生きてほしいと願った親がいた。だから私が息をしている。愛されている」

 

 アマルツィアは、マーニャの父親は何も言わなかった。父親としての責任と罰を放棄する態度には見えなかった。少なくともマーニャにはそう感じられた。彼の覚悟を決めた表情を、嬉しく感じた。

 

「魔物と同じ生まれ方をしたわ。でも、魔物として生まれたなら魔法不全の私は赤子の時点で死んでいたのよ。嬰児殺しを文化とした魔物ではなく、弱者を愛おしく思える人間の子だったから今日まで生きられたの」

 

 なぜかわかる? ――問いかけは世界へと。

 

「私は誰とでも、必ず言葉を必要とした。言葉を持つ気のない相手にも強制させるだけの条件を揃える事だけは上手になれた。――それこそを『対話』と呼ぶ」

 

 そして今、マーニャはその『対話』のために、月を落とせと神に命じた。彼女は傍で呆然としているピンク色の髪をした淫魔へと声を張る。

 

「アスモ!」

「ひゃ、ひゃいっ!」

 

 唐突に名を呼ばれて、ピンク色の髪をした淫魔が肩を跳ね上げる。あわあわした彼女の表情には困惑の色が強くて。申し訳ないなと思って、ひっそりと笑った。

 

「私――私ね、あなたと出会えて本当によかった!」

「え、ええっ……! こんなところで告白されてしまうんですの!?」

「ふふ。そうかもしれないわね」

 

 どんな状況でも変わらない彼女の在り方を嬉しく思う。

 アスモという魔物は、最初こそ勇者を貶めようとする悪い魔物だった。けれど、彼女のおかげだ。

 彼女がいたから、マーニャは人と魔物が暮らしていけると確信できた。

 

「あなた達魔物の中にも、人の書いた物語を愛せる者がいるわ。こんなにも違う私たちがそれでもひとつ、通じ合える価値を持てたのよ」

 

 何も戦争だけではなかったのだ。戦争ばかりが異種同士をつなげた訳では無かった。その事実にこそマーニャは可能性を感じる。対話の価値はあると踏んだ。

 

「魔物を9割減らすと言ったわ」

「人を10人殺すと言ったわ」

「ごめんなさい。あれ、嘘なの」

 

 マーニャは笑う。美しく。華やかに咲く表情に悔いはない。

 今や魔物さえも裏切った。

 そんな第三勢力はたっ(・・)た二(・・)()

 だが、最強の二人だ。

 

「さあ、人よ、魔物よ! 私たちは今からあなたたちの敵になる!」

 

 マーニャは声高らかに宣言する。隣の少女へと振り向いた。フニは、その静かな眼差しに小さな意志を乗せて頷いた。

 

「――10分でわたしの魔法が世界を潰します」

「――止めたければ私をまず殺してみせなさい」

「――人だけでは勝てません」

「――魔物だけでも勝てないわ」

「――貴方達が手を取り合い、乗り越えるべき世界の危機です」

「――自らを変える努力を、自らで掴み取って」

 

 アマルツィアの視線がマーニャへとぶつかった。彼は言葉を発する資格がないと言わんばかりに無言だった。けれど、父の強い意志を秘めた青の瞳は語っていた。

「思うまま生きれたのか」と――。

 

 

 

「私は生きとし生ける全ての者を脅迫します。

 行き過ぎた力で自滅したくないのなら、どうか双方が対話の選択を」

 

 

 

 もちろんだとマーニャは自身の生の全てを誇る。

 ――今この時からが、変革の始まりだ。

 

「どうすればいい!」

 

 苦悩の叫びを上げたのは魔装化歩兵の一人だった。兵士の怨嗟は荒い息をして立ち尽くす魔物達へと向かう。

 

「今更、今更手を組めだと……!貴様達と!!」

 

 何人殺し、何人殺されたのか。相容れない憎しみが兵士の顔を黒く染める。

 何より彼が許せなかったのは、魔物が生存競争としての戦争ではなく、趣味としての戦争を享受していた点だ。

 魔装化歩兵は内臓の全摘出を基本条件とする。人間から逸脱してもなお人を守りたいと志願しなければなれない一種鋼鉄の精神を、魔物はその生き方で穢している――魔装化歩兵がそう考えるのは無理もない話だった。

 

「貴様ら戦闘狂に付き合わされた玩具だなどと認めない!!!! 人は、人は――」

「大防護障壁だ」

 

 しかし冷徹な言葉が響く。それは怒声よりも尚鋭い男声。的確なタイミング、的確な声量でなければ作れない数瞬の虚は、玉座に立つマーニャの技能に似ている。

 声の主へと視線が集中した。

 金髪にサングラスで目元を隠す青年、“忌み子”グロリアスが自由転移魔法を用いてそこにいた。

 

「大防護障壁を張れる魔物はいるか!」

 

 王国の第一王子は尚も声を張る。先の魔装化歩兵は恭順を示すような彼の態度に気が狂いかけたような歪な表情になった。

 いつ暴発するとも分からない膨張しきった感情を、第一王子は冷静に凪ぐ。

 

「月が落ちれば全員死ぬ。それが分からない人類最強の守護者ではないはずだ」

「……ッ!」

「少なくともこれは歴史の転換点。僕たちは強制的に走らされた。なら、足掻くだけだろう」

 

 言い切り、魔装化歩兵の怒りを黙らせた第一王子は次に傷だらけの魔物達へと向き直った。

 

「――人類側の現状を手短に説明する」

 

 それは人と情報共有が出来ていない魔物への言葉である。

 

「まず、世界各地で統合軍の指示の下、月の落下にも耐えうる超々硬層魔法障壁の展開が進んでいる。同時に最悪のケース――月の落下に備え地下施設の掘削も開始した」

 

 自由転移魔法さえあればどんな地中深くであろうと物体の移動が可能だ。僅か10分の猶予しかないと言うのに、世界規模で完璧な統制を可能としたのは、人が編み出した情報伝達の魔法群と自由転移魔法を併用しているからだった。

 ほぼ理想に近い完璧な動き。種としての強さ。

 それを見せているというのに、第一王子の顔は焼き付けた焦りが硬くさせている。

 

「それでも、人には足りないものがある。――大防護障壁ほどの魔法を数百年維持し続けたその技術的蓄積を、人は持っていない」

 

「だから」、と第一王子は魔物へと一歩近寄る。魔物達に小さな緊張が走り、敵意が肌を刺すようにおどろおどろしいというのに、彼は一切怯まない。

 

「……10分でいい。力を貸してはくれないか、魔物よ」

「…………」

 

 その場にいる魔物四体が沈黙した。

 彼ら四天王はいわば魔物達の中でも最高幹部にあたる。更に言うなら絶対権力者である魔王その人が魔物からも敵対したのだ。

 戦争を主導してきた魔物達の長として、すぐさま人と協力できるほど状況に柔軟な者は居なかった。

 しかし。

 

「当代魔王は自らその座を捨てた……先代も姿を消した。臨時の魔王を、俺がやろう」

 

 そう提案したのはようやく傷を完治させたゴルだった。

 確かに、彼は先代魔王――キサナドさえ現れなければ次期魔王の筆頭候補とも目されていた。四天王の中にも異論は生まれない。

 

「大防護障壁の構築維持に関する技術だったな。よかろう、後方支援に長けた魔物を各地に配置する」

「……ありがとう。感謝する」

 

 やけに落ち着いた様子でゴルは第一王子の案を呑んだ。すぐさま伝令兵を呼び指示を出す灰色の魔物に、第一王子は安堵の息を吐く。

 しかし、ゴルは更に続けた。

 

「ウル、アスモ、ヘイズバイス――そして残った全ての魔物達よ聞くがいい」

 

 それは、下知の如く。

 

 

 

 

「人間と手を組みあの女と神を殺せ」

 

 

 

 

 意味を理解した瞬間、アスモが眦を釣り上げ吠えた。

 

「本気で言ってますの!?」

「貴様こそわからないのか!?」

 

 少なからずマーニャの肩を持つアスモの怒りは、魔物的考えとしては間違っていても、彼女らしさで言えば正しい。

 しかし、ゴルは実に魔物らしい魔物だ。

 

「これは、あの女が仕組んだ、全魔物が神殺し(・・・)の名誉(・・・)を得ら(・・・)れるか(・・・)もしれ(・・・)ない(・・)至上最高の聖戦だぞ!」

「な――」

 

 だから、人間と手を組む事も躊躇わなかった。

 マーニャが彼に与えると約束した『最高の戦争体験』とは、これから始まる10分間だと分かったからだ。

 種全てを賭して神へ挑戦するその崇高さ。

 理解できない魔物は、いない。

 

「何を戸惑う! 何を臆する!? 俺達魔物が戦狂いであるのなら――――喜べ」

 

 その歪さを全世界に知らしめるように。

 ゴルは笑った。不敵な笑みで、奥歯まで剥き出しにして、魔物らしく嘯いた。

 

「子も親も老人も女も男も関係なく。喜び、震え、最後の戦争を楽しめ」

 

 ――――お お お お お お お お お お お お お お お お お お! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !! ! ! !

 咆哮は魔王領首都全域からだった。大地を揺らすほどの叫びを、迸りを、興奮しきった魔物達が上げている。神殺しという神話の最終章に当事者として立ち会える歓びに湧き、酔いしれていた。

 まさしく戦闘狂の種らしい狂騒を、“魔法殺し”は唾棄する。

 

「相容れん。解り合えるはずがない」

「――そうとも。だが、貴様達と手を組むなど初めてだな……」

「あんたと一緒に戦うのも、まあ悪くねえわな?」

 

 ゴルの感慨深げな一言を、その体を切断したばかりのケドが笑いながら継いだ。祖父のいつも通りな態度に鼻を鳴らした“魔法殺し”とて、銀髪の狼女――ウルの隣に立ってただ倒すべき敵を見上げた。

 

「同胞よ奮え。魔物全軍、戦闘開始――」

「人を守り給え。統合軍、戦闘開始――」

 

 世界各地で自由転移魔法が一斉に起動する。

 

 

 

 

 

 たった二人の人間を撃ち殺すため、無数の人と魔物が遥か上空へと跳んだ。――そして放たれる高火力魔法群は億を超す。

 

 更に後方から対精神・対肉体問わず様々な妨害魔法が自由転移魔法を併用してフニ達を襲った。秒間兆を超す数の悪意の群れだった。

 

 “軍神”ケド・カサルル・ホルルは蒼き光速視認の瞳と蒼の魔法剣を携え走り出した。ただ一突き、二人を殺すために。

 

 “魔法殺し”アニー・アララト・ホルルは神から切断されたとは言え、未だに高度な情報支援の下、未来予測の領域で赤の魔法剣を虚空に生み出す。少女を止め、女を世から消し去るために。

 

 “異常個体”アマルツィア・アマルガム・ベネティード=フィフスは無言で自身の両腕、両眼、腹部内臓の全てを自切の上ばらまき、魔法生物の軍隊を生み出した。彼に感情の気配はなかった。

 

 “聖上”アリ・アル・フリペチーノは至高の賢者と呼ばれるだけの才を用い、自身の娘を討つ事に躊躇わなかった。技比べとでも考えているのか、その顔には笑みすらあった。

 

 ハンナストリチウム・ヒュッケンオゥガ=血種覚醒(ミシンテス)002(ナデュオ)=ゴルは物理限界に至るため、その身に力を溜めだした。

 

 ザネクラア=血種覚醒(ミシンテス)056(エル・ヴィル)=アスモは自由転移魔法を応用して局所的な竜巻を生成し、少女の魔法展開を妨害した。

 

 血種覚醒(ミシンテス)000(ネーモ)=ウルは興奮に身をよじり、その殺意の眼を約束を違えた女にだけ向けた。

 

 メフィス・ネフティス=血種覚醒(ミシンテス)030(トリギンタ)=ヘイズバイスはその類稀な知能を使い、フニの弱点を探るため解析作業に集中しだした。

 

 

 

 

 

 ――そして、フニは、全てを超越・絶対・究極的な演算能力の元に把握した。

 凡そ100億を越す現生生命体全ての敵意を、である。

 暗い瞳で、しかし少女は謳う。

 

「――――叩き潰します」

 

 こうして現人神と、全生命による最終戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 一斉に降下する高火力魔法群の絨毯爆撃と同じくして、玉座の間では四天王の一人ウルが咆哮を上げた。

 

「まあああああああにゃあああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 興奮入り混じる怨嗟の轟きは、同時に銀色の魔法剣を無数に生み出す。

 空間の狭さ――多数の人間魔物が混在する空間にしては手狭だ――を嫌ったのか、生み出された魔法剣は玉座の間の壁を次々に破壊しながら、本命であるマーニャを殺すため邁進。

 ウルが嗜虐の笑顔で奥歯を剥き出しにした。

 

「言ったよなァあたしは! フニを泣かせるなら! あたしがお前を殺すと!!!!」

 

 ウルはマーニャに手を貸す際、条件を出した。『フニを苦しめたなら殺す』という誓約だ。マーニャが魔物側に寝返った日、確かにフニは涙を流した。しかし状況は流動し、今フニはマーニャのために全生命体と一人対世界の戦争を続けている。

 少女が迫りくる大量の魔法剣へと言葉を投げた。それ以外の行動は何一つなかった。

 

「ですけど、わたしが敵ですので」

 

 ――魔法剣の色が変質する。

 鋼のように鈍い銀から、およそ光を反射しない純黒へと。

 魔力色の変遷。それは、魔力操作者の色に魔法側が塗り替えられたことを意味する。ウルが目を剝いた。

 

「――魔法の操作権を、上書きしたのか!?」

 

 当然のように振るわれた神業だった。

 言葉は真実を射抜いている。だが、それ以上の反応を(フニ)は許さない。漆黒の魔法剣すべてが一斉にウルへと矛先を変えた。

 瞬間転移の殺意を直感で悟った狼女が自由転移魔法を起動。どこか玉座の間から離れた地点へと離脱した。――フニは演算領域の0.001%を用いて黒き魔法剣に追撃を命令。座標直撃の魔法は姿を消す。

 そうして四天王の一人は僅か1秒足らずで実質的な戦闘不能に陥った。

 

「魔装化歩兵!!!! 俺に力を貸せ!!!!」

 

 咆哮。声の主は四天王の一人、ゴル。

 突進の構えを作る彼と共に、人類の英雄“軍神”ケドが蒼き魔法剣を突きの構えでフニへと振るう。

 音速の突きを、常時展開の超硬層魔法障壁が阻んだ時、無数の魔法陣がゴルの背後へと溢れかえった。

 

光速で(・・・)――――」

 

 膨れ上がる。

 魔物の筋肉に込められた遺伝子刻印の魔法が物理限界へと昇華する。

 『Zu――――』そんな音にも錯覚する空間の歪みを、誰もが知覚し。

 

「――――()く」

 

 それは、ただひたすらに速き突進。

 秒速30万キロメートルの領域は駆けるゴルの肉体ですら耐え切れず、全身をバラバラに崩壊させながらもその拳だけはフニへと振るわれた。

 究極速度によって与えられた衝撃が空間全域――どころか魔王城そのものを破壊する。フニとマーニャ以外の全員が自由転移魔法を使用し玉座の間を一時的に放棄していた。その行為すらあと数瞬遅ければ全員が死亡していた。

 が、しかし。

 

【残念ですが】

 

 魔力による意思の発露は、光速のただなかにいるゴルにもしっかりと届いた。

 少女の双眸は確かにゴルの肉体へと向けられている。

 

【わたしの魔法展開速度は既に光速よりも、速い】

「――――」

 

 物理法則の果ての先にて、フニは魔法の輝きをその手に生み出した。

 それは超小型の恒星。核融合反応を伴う熱の星を、あえてフニは殺した(・・・)

 そうして生み出されるのは、魔法によって指向性を与えられた超新星爆発(スーパーノヴァ)である。

 

縮退輝星(ブレスレス)殺戮砲(カオスロゥ)

 

 超新星爆発によるガンマ線バーストの閃光がゴルの肉体を完全崩壊。いかに驚異的な再生能力を持とうと、耐えきれる一撃ではない。

 灰色の男は最後まで歓びの笑みを浮かべたまま即死した。

 そして同時に、星を、大地をフニの恒星砲撃が灼いた。

 線状の熱線はその影響のみで全世界で展開される魔法をズタズタに引き裂き、魔法環境を破壊。山脈を海を空気を――果てには重力を振り切り宇宙空間すらも、致命的な環境汚染が全てを死の星へと変える。

 ――はずだった。

 神として汚染物質除去の魔法を展開するよりも先に、世界各地でひとつの強大な意志が揺れ動くのをフニは把握した。――そして、塵になったゴルの肉体が再生していく事も。ガンマ線除去の魔法が次々に広がっていくのも。

 

「なるほど、並列接続による処理能力の増大ですか」

 

 フニが“魔法殺し”の肉体を外部から接続したのと同じ技術を、世界規模で行っている者達がいる。

 少女が遠隔地から外科的手術を完了させた、魔装化歩兵1万2500名による処理能力――つまり脳の並列接続だった。恐らくゴルを光速まで加速させたのも同じだろう。

 それだけではない。先の全世界同時配信を見た全ての人々、全ての魔物が、大きく一つの意志を持って魔装化歩兵の支援を行っていることも、フニにはまるで地表で輝く虹色の光のように感じられた。

 

「――命の、輝き」

「そうだぜお嬢ちゃん! これが『生きたい』って意志だ!」

 

 この星の意志そのものが、フニの圧倒的すぎる魔法技術へと向いていた。狙われているのは演算魔法(神の脳)四柱。究極の演算機構が魔法であるのなら、対抗策は一つある。

 魔法対消滅(ハッキング)だ。あらゆる現象を引き起こす魔法に、対となる魔法をぶつけることで魔法そのものを消滅させる絶対的カウンター。それを行うための強大すぎる魔力流動が起きている。

 そして玉座の間に戻った集団の中には、人魔物双方の天才が揃っていた。

 

『俺を舐めるなよ神様』

 

 自由転移魔法の第一人者、霞のように曖昧な姿形の男、メフィス・ネフティス=血種覚醒(ミシンテス)030(トリギンタ)=ヘイズバイス。

 

「終わるぞ、解析」

 

 そして、フニの父、“聖上”アリ・アル・フリペチーノ。

 二人の脳へと数十億規模の魔力操作技術が接続されていた。そして、天才二人がフニの持つ神四柱を食い潰そうとしているのも事実だった。

 少女が演算能力の50%を失った瞬間、人も魔物も勝機は今と見た。

 ケドが大上段に魔法剣を構える。魔装化歩兵が大量の火力魔法を生み出す。ヘイズバイスが世界中の質量兵器をフニへとぶつける。アリが娘へと極大魔法数千発を発射する。

 全生命による瞬間的飽和攻撃。

 神への反抗。

 

「この人数でなら――!」

「わすれたのですか」

 

 しかしフニは臆さない。

 例え神としての能力を半分失い、今も尚続く世界中からの秒間兆を越す妨害魔法によって更に残りの半分の演算能力を圧迫されても尚、その余裕は崩れていなかった。

 

「わたしは、魔力への干渉が可能な魔法使いですよ」

 

 ――世界中が黒き魔力に覆われた。少女の肉体に作られた魔力生成臓器が星一つを覆うだけの魔力を捻出していた。

 それは異次元の才能。

 現状フニと残るは『元魔王』キサナド以外使えない、魔力への直接的な命令能力。

 

【この場にいるわたし以外の魔力使用を禁じます】

【ならあたしがそれを否定するゥ】

 

 ――だが、新種魔物(000)は神すら凌駕する。

 銀髪の女は、美しい長髪を鮮血で赤く染めて立っていた。その背中には100近くの魔法剣が突き刺さりもはやまともな皮膚は存在しなかった。心臓を貫く黒色の魔法剣を引き抜くことすらせず、片目を斬裂されて、しかし玉座の間へと帰ってきた狼女――。

 血種覚醒(ミシンテス)000(ネーモ)=ウルが、呼吸すら出来ない女が、せいぜいあと数秒で死ぬはずの女が、中指を天へと突き立て、最後の力で笑った。

 

「あたしの模倣能力は、神にすら届くぜ――」

「そして我が神剣を防ぐ手立てはないと知れ」

 

 フニの魔法禁止命令は発動されない。

 そして最後の切り札がついに動く。“魔法殺し”が、とある魔法の発動準備に入った。

 

「――」

 

 少女が初めてその表情を僅かだけ歪ませる。この好機を逃す兵士達ではない。

 

「――――聞けェッ!」

 

 怒声は発破の号令。“魔法殺し”の祖父である、“軍神”ケドが齢80を目前にしてなおも壮健の声を迸らせる。

 

「――――3秒!!!!」

 

 場の猛者達には、その一言で十分だった。

 

 

 魔装化歩兵によって肉体を完全に再構築し終えたゴルが再度突進した。光速領域にて走る肉体を今度は後方支援にあたっていた魔物全員が補助した。肉体を崩壊させない光速領域の徒手空拳は秒間30万発を越えた。

 その全てをフニは緊急展開の魔法障壁で防いだが、その代わり他の魔法使用に割く演算領域を封じられた。

 ――1.15秒。

 

 

 アスモが超巨大竜巻を自由転移魔法によって部分的に引き寄せた。全てを破壊する風の暴力をフニは知覚するより先に対消滅反応で消し飛ばした。

 ――1.39秒。

 

 

 しかし(・・・)、アスモの暴風が掻き消える直前、その竜巻の中へと放り込まれる肉体があった。その肉体の持ち主の名をアマルツィア・アマルガム・ベネティード=フィフス。

 彼は自切した肉体を変質させ、分子(・・)サイ(・・)ズの(・・)魔法(・・)生物(・・)へと変貌させた。そして風圧によって破壊された分子魔法生物は一瞬にしてその数を9000兆近くまで増殖し、意思を持つ細菌兵器としてフニへと向かった。

 フニはそれら全てを発火魔法で魔法核ごと燃やし尽くしたが、完全に破壊するための確認作業に時間を要した。

 ――2.68秒。

 

 

 “軍神”ケド・カサルル・ホルルは限界点よりも早い動きで魔法剣を振るった。その全てが弾かれた。彼は自身の理解・直感・戦闘技能を越えて動いていた。

 フニはもはや硬度無効如き魔法に割く自発的リソースがなかった。常時展開される超硬層魔法の数はあといくばくも無い。 

 ――2.98秒。

 

 

 ウルの肉体に突き刺さっていた黒色の魔法剣は、ついに魔法主導権を元の持ち主に奪い返される。銀色へと変貌した距離無効の剣は、狼女の声にならない咆哮と共に少女たちを守る防壁へと牙を剝く。フニの張る超硬層魔法障壁がついに破壊された。

 ――2.99秒。

 

 

 そして、ウルの生命活動がその瞬間に止まり。

 銀の魔法剣が掻き消えた時。

 

終焉に飛ぶ激烈の天(ハキウス)

 始原百景喰らう底の底(チィテル)

 

 

 

 格納(ハキ)され(ウス)た箱(:チ)の中(ィテ)の下(ル  )次箱()特異魍魎(ハーモニクスドライブ)”召喚】

 

 

 

 フニは後背に三つ円陣を追加。第五の神を作り出した。

 これにより圧迫寸前だった少女の演算能力は30%の余裕を得、その1%さえあれば形勢の逆転など可能だった、()

 ――3.00秒。

 

「抜刀、“三重”解放」

 

 全生命が全てを賭したこの3秒こそが、神を殺す。

 “魔法殺し”の囁きに勝利を確信したケドが、青い瞳を細めた。

 

「絶対発動の魔法てのはつまり、速度という概念を塞いで、未来に魔法発動起点を置き過去からの干渉を無効にするって意味さ」

「――!」

 

 今度こそフニが焦燥から表情を変えた。今も尚続く圧倒的量の攻撃全てをいなしながら、隣のマーニャへと顔を向ける。

 フニの全神経が隣の女を守ることへと集中した。神が(・・)防御(・・)態勢(・・)を取(・・)った(・・)

 

「硬度無効――故に絶対切断」

 

 それは絶対の一。

 ありとあらゆる物体への干渉力を勝ち得た至高の宝剣。

 

「距離無効――故に絶対到達」

 

 それは絶対の二。

 星の果てから星の果てへと届きうる、無限の刃渡りを持つ魔剣。

 

「速度無効――故に絶対発動!」

 

 そしてこれこそ究極。

 生命悲願成就の魔法。

 人が、生きる命が、全ての叡智を狂気に等しい執念で練り上げた果てに生み出された夢想の神剣。

 

 

 

 

 

 絶対の三、それは時間跳躍魔法を指す。

 

 

 

 

 

 誰であろうと妨害不可能、だから最強。

 過去より未来へと振るわれる一刀は神すら貫く。

 

「故に、【究極魔法(グスタフ)】――――――――!!!!」

 

 発動と同時に“魔法殺し”は代償を支払い、心臓と脳幹が破壊――死亡。

 赤き一閃により月に付与された加速の魔法は切断され。

 ――マーニャの肉体に一切の傷がつかなかったのは、この僅かな時間で絶対魔法の座標点修正を行った神業によるものか。

 しかし少女の心臓に一突きの穴が生まれる。

「――」という、痛みすら感じていない小さな虚ろが少女の表情を透明にした。ふらりと揺れる小さな体は、どこにでもいる、小さな女の子の軽さだった。力を失って後ろへと倒れる動きをマーニャがそっと抱き留め。

 そうして。

 フニは。

 死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後。 

 宇宙にて2番目のフニ・フラ・フリペチーノが目を覚ます。

 

 

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