これは現実の地球の世界によく似た別の世界の話。
この世界では10年ほど前から異能力を得た人類である進人(ネオ・ヒューマニティ)と呼ばれる者達が現れた。出現当初はテレビで度々見かける超能力者のような能力をもつ者がほとんどであった。そのため世間は面白がってはいたが本格的に研究をしたり、その危険性を訴える者などはいなかった。しかしだんだんと我々普通の人間を遥かに凌駕する能力を持つ者が現れ始め、ある者は火を操り、ある者は飛行能力を持ち、ある者は超能力を得た。そしてなぜかほとんどの進人は自身能力を自身のために扱い悪の道に走ったのである。世界は彼らに対抗できる警察組織や軍隊を持っていなかったために甚大な被害を被り、世間は彼らの危険性をようやく理解したのだ。そこで各国は世界連合を中心に進人に対抗できる手段を持った組織を作ることを目標に対抗したのである。
買い物客であふれるアーケード。多くの家族連れや恋人たちが訪れ大いににぎわっていた。
「おいガルア、来週のテスト大丈夫か?お前今度赤点取ったら次のテストまで外出できなくなんだろ?おまけにゲームもできなくなりそうだしどうすんだよ」
そう話しかけてきたのは高校のクラスメイトで仲がいいカムイである。
「あー今回は何とかなりそうだよ苦手な数学はかなり勉強してるし割と得意な範囲だからな。得意の記憶科目を落とさなければ残る問題は現代文ぐらいだと思うぜ。」
適当に駄弁りながら歩き適当に気になった店があったら軽く入るウィンドウショッピングが割と好きで二人でよく目的の商品もなく買い物をしていた。
「あ、財布の金がねえや。ちょっと銀行寄ってもいい?」
「まあいいけど。おまえもそろそろキャッシュレスにしろよ、現金なんて今どき不便だろ。」
「金を取引してる感じがいいんだろうが。キャッシュレスは散財しそうで嫌なんだよ。」
「現金だって前もって多めに引き出すんだから使いすぎるじゃねえか。キャッシュレスはたいていその場で引き落とすからその点平気だぜ。」
そんな適当な会話をしながら金を下ろしたいカムイに連れられ銀行に入り少ししたあと…
「おい!金を出すんだ!店員と客合わせて大人しくしろォッ!!」
そんな怒号とともに大柄で全身黒づくめ、覆面をした強盗が5,6人入ってきた。強盗は全員が銃を携帯していた。入ってくるなりすぐに警告で一発の銃弾を天井に放ち、二人がかりで客と従業員を大人しくさせ、もう二人が速やかにボストンバッグの中に現金や小切手を詰め込み始めた。どうやら入り口付近の警戒と退路の確保も行っているようで非常に統率の取れている強盗団であるようだ。
「おいガルア!どうすんだよこの状況!」
「んなもん一般人が何かできるわけねぇだろ!大人しくするしかない!」
「おいてめえらうるせぇぞ!殺されてぇのか!?」
二人で声を抑えて話していたら強盗団の一人の男に怒鳴られた。この男は周りのメンバーの行動を確認し指示を出している。どうやらこの人物が統率をとっているようだ。
「どうだ金庫の中身全部入れたか!?よし、そろそろずらかるぞ!!」
リーダーの男がそう言うとわずか五分ほどで強盗団は強盗を終え、逃走をはかろうとしていた。
「おいお前ら動くな!大人しく武器を捨て投降するんだ!」
しかしわずか五分ほどで警察官が10人ほど銀行を取り囲んでおり強盗は包囲されていた。また応援もすでに呼んでいるようで少しすればさらに多くの警察が駆けつけるだろう。
「チッ、流石に速ぇな。ちと計画とずれるがまあ問題ない。銃ぐらいならなんとかなるだろ。」
警察は銃を構え取り囲みすぐにでも発砲できる状況にあるが強盗団に焦る様子はない。警察も投降する動きを見せないため警戒を一段とするが…
すると一人の男が懐からゴルフボール大ぐらいの物を取り出すとピンを抜いて警察の前へヒョイっと放り投げた。
後方にいる男が投げたために警察は反応に遅れ武器の使用を許してしまった。
「グレネードだっ!避けろ!」
叫び声とともに警察はパトカーの陰やドアの陰に急いで身を隠すと爆音とともに閃光が放たれた。
「クソっ!スタングレネードか!」
「今のうちだ、逃げるぞ!」
強盗団は隙を見るとすぐに逃走用の車両と運転手が待つ方角へと駆け出した。追撃を許さないためにもすぐに煙幕を放つ。洗練された一連の流れで強盗団は撃ち合いもすることなく逃げ出そうとしていた。
強盗団が用意していた逃走用車両に向かって走り乗り込もうとしているところに不運にも一般人の女性がすぐそばに立っていた。
「おい女ぁ!殺されたくなけりゃどけ!」
「いえ、どきません。あなたたちのような害悪は被害が出る前にさっさと処分しなければなりませんから」
「何をバカなこと言ってんだ!丸腰の女が何をできると思ってんだ!」
「やばい!一般人が巻き込まれる!」
警察の叫びもむなしく女性と強盗団の距離はどんどんと縮まっていく。
「邪魔だ!」
男の一人がそう言い女との距離を詰め軽く片手で払おうとした瞬間男は女性に触れるまでもなく吹っ飛ばされ道路の向かい側の壁に激突した。
「!? 何が起きた!」
思わず強盗団は足が止まる。
「あの女ただもんじゃあねえ。撃て!」
その合図を皮切りに5人の男が一斉に構えたライフルを撃ち放つ。
「効かないわよ」
女性がそう言うと銃弾は女性に当たることなく様々な方向へと跳ね返っていく。そのまま女性は突き進み距離を縮めていくと一人、また一人と強盗を徒手空拳でなぎ倒していく。
「なんだこの女は!」
リーダー格の男がそう言い放ち女との距離を詰める。銃弾が当たらないが至近距離なら当たると判断し腰のホルスターからハンドガンを抜き三発腹に撃ち込む。
「うっ…跳ね返されただと…?」
一瞬喰らわせたと思った男であるが銃弾はすべて跳ね返り自分の胴体に直撃した。
「ひぃ!おっかねえ逃げろ!」
一味の逃走のため最初から逃走用車両に乗っていた男は最後に残ってしまったため自分では敵わないと判断しアクセルを踏む。
急発進で逃げていく車は誰も追いかけられることはできないと思われたが
「逃がすわけないでしょ」
女性が片手を伸ばし前に出し、その手を何かを引っ張るように握る。
「…?なんだ?スピードが急に落ちてきた…。!?違うっ何かに後ろから引っ張られている!」
車はズルズルと女性のほうへ見えないナニカに引っ張られるように戻ってくる。
そして女性の元まで戻ってきたと思えば女性は握った手を壁のほうに突き出すようにして放った。すると車は何かの衝撃波を受けたように壁へと吹き飛び激突したのである。
「さっ、鎮圧したわよ。ぼさっとしてないで早く捕まえて頂戴」
女性の動きに固まってしまっていた警察はその言葉を聞き慌てて強盗達を取り押さえる。
「すげぇ…何者だったんだあの女性は…」
「多分あれだな。DOANの上位兵だ。しかも恐らくネオ・ヒューマニティ」
DOANとは Difence Organization Against Neo Humanity の略称で対進人防衛組織として知られている。進人の様々な特殊能力に対応できる装備や武器を所持している特殊部隊で、過酷な訓練を3年経てやっとなれるのだ。それでもほとんどは一般兵に配属される。上位兵は中でもエリートしかなれず全体の10%ほどしか存在しない。
ガルアとカムイが感嘆していると先ほどの女性が近づいてきた。
「誰か怪我人はいないかしら?」
近くで見る女性は銀髪ともいえるようなプラチナブロンドの髪で透き通った肌であり目は碧眼。すらっとした細身の美しいプロポーションでまるでゲームの女性騎士のような気品がある美しい女性だった。
「君たちも怪我はない?」
「無いっス!!!///」
「あ、俺もないです…///」
そんな美女に心配されると純情な男子高校生である二人は思わず赤面してしまうのである。
「でもあなたは何も持っていないのに一体どうやって…?」
ガルアが質問すると
「ああ、それはねこの手に付けたガントレットなの。今日は非番だったから私服だけど護身用に携帯しといたのが功を奏したわね」
そうして袖をまくってみせると金のガントレットがつけられているのが見えた。一見普通のガントレットに見えたが手首のほうに装置が付いており発射口のような穴も見える。
「これは一体」
「ごめんね、機能は規約で教えられないの。守秘義務ってやつね」
その後は警察によって怪我人の確認や現場の確認を行い二人は特に怪我がなかったため事情聴取されることになった。30分ほどで解放されると家路につくのであった。
「俺DOANになろっかなー」
「どうしたガルア。あの女の人に会いに行くのか?」
「バッ、違ぇーよ!…俺もああやって人助けしたいなって…」
「お前昔からヒーローに憧れてたもんなー」
「決めたよ俺DOAN目指すよ。そしてみんなの平和を守るんだ」
「ハハッ。がんばれよ応援してるぜ」
「カムイはならねえのか?」
「う~ん。憧れるけどそういう
「ぐっ、確かに。頑張らないと。じゃあ今日はこの辺で。また明日」
そして二人が別れたあと
ガルアが家に向かって歩いていると一つの交差点に差し掛かる。すると付近の公園からボールが転がりガルアの前を通り過ぎ交差点のほうまで転がっていったのがふと見えた。公園のほうをパッと見ると子供たちがボール遊びをしているようで一人の少年がボールを取りに走っていった。少年は交差点に侵入しようとするがそこには一台のトラックが今まさに通ろうとしている瞬間であった。
「危ない!」
ガルアの声とトラックのクラクションでトラックの存在に気付いた少年であったが既に交差点内に入ってしまっていて、さらに恐怖から体が硬直しているようであった。
間に合わない!
誰もがそう思う距離であったがガルアは何かに背中を押されるようにして駆け出した。
「とどけぇぇぇっっ!!!」
力強く踏み出すと体が空を切る感触があった。視界はスローになり周りの時間の流れが止まったかのように見えた。それを気にすることなく無我夢中で走り少年を抱えると間一髪で助け出すことに成功した。
「怪我はないかい?」
「うん。お兄ちゃんありがとう」
「もう周りを見ずに飛び出しちゃだめだからね?」
少年にお灸をすえた後彼が小走りで公園に戻っていくのをガルアは見届けた。
「ねえ、あの人今すごい速さで動かなかった?」
「あれってもしかして…」
声が聞こえたので振り返ってみるとその場にいた少しの野次馬が噂をしていた。
「あれぇ…お前ぇさんもしかして…進人かい?」
先ほどのトラックの運転手のおじさんにそう言われたとたんガルアは先ほどの自身の動きを思い出した。
まさか、さっきのはゾーンとかではなく本当に自分が速くなっていたのか?
その思考に陥った途端ガルアはあることに気が付いた。
やばい…逃げなきゃ!
慌てて走り出し家路を急いだ。
「おい!そこのあんちゃん!止まれ!」
後ろから声がかかるが気にしてられない。早く帰らなきゃ!
「ただいま!」
勢いよく自宅の玄関を開けると家族に顔を出すこともなく急いで自室に戻った。
「おかえりなさい。あらどうしたのかしらあんなに急いで」
母親がそんなことを言うが気にしてられない。なぜガルアはそんなにも焦っているのか。それはこの世界に生まれたものならだれもが知っている社会常識を思い出したからである。
「まずい…俺が…この俺が
読了ありがとうございます。実はこれ私が中学生ぐらいのときから頭の中で描いていた世界観や設定を使っているのですが、文章に起こすとこんなにも難しいものになるとは思いませんでした。いい感じのアイディアとか設定、展開は思いつくのですがそれまでにつなげるのが困難ですね。
ぜひ感想や評価を頂けると幸いです。今後の執筆活動に活用したいと思います。