「突っ込め!!」
「進め進め!!」
歩兵の迫撃砲が打ち上げられ、機銃による制圧射撃の中、エリカたちのIV号戦車隊は橋を守る最後の抵抗拠点を攻略せんと、歩兵と前進を始めた。
ここで橋を落とされれば、これ以上進攻できなくなる。それはつまり、ドイツ軍の攻勢計画が崩壊することを意味した。
そして、それを阻止しようと、ドイツ軍は猛攻をしかけた。
「戦車だ!戦車が来たぞ!!」
「工兵隊が橋を破壊するまで持ちこたえろ!!」
米軍は砲撃の中、持ち場を死守すべく塹壕へ滑り込む。そこへ戦車砲の一斉射が浴びせられる。
「ちくしょう!!」
「早く!長く保たない!!」
「待ってください!」
無線で急かされ、焦る工兵だが、
なかなか爆薬の設置は進まない。
「何やってんだ!?」
「まだです!あと5分!」
「こんなことならもっと爆薬積んどきゃよかった!」
米軍は焦っていたが、それは攻撃側のエリカたちも同じだった。
「進め!橋を確保しろ!」
前進する歩兵の盾となるように、4両のIV号戦車が進む。
「敵火点、距離200!榴弾装填!」
「了解!」
「撃てッ!!」
榴弾が放たれ、機銃を乱射していた敵陣地を吹き飛ばす。
「よし!次!」
「あい!」
「次も敵火点、距離200!続けて榴弾!」
「装填完了!」
「照準良し!」
「撃て!!」
数秒おきに榴弾が飛び、陣地が少なくなる。逃げ惑う敵兵には歩兵の小火器や戦車の機銃の弾幕が襲いかかる。
「次!右斜め前方の陣地!」
「了解!榴弾装填!」
「装填完了!いつでもいけます。」
「撃て!!」
「装填完了!撃てますッ!!」
「撃てッ!!」
そんなことを数回繰り返していると、ようやく陣地帯を突破した。が、ここで思わぬ事態に遭遇する。
「こちら3号車、ガス欠です!」
燃料の枯渇である。ここ最近補給が滞り気味であり、燃料などは特に不足していた。今までは少ない燃料を分配し直したりしていたが、今回はそうはいかなかった。
「おい、どうした?」
歩兵の1人が登って来ると3号車を指さして言った。
「ガス欠だ!燃料が足りない!」
そうエリカが答えると、通りすがった歩兵の1人がどこかを指さしていった。
「あそこに敵の燃料集積所がある。なんとかなるかもしれない。」
「本当か!?」
「ああ、行ってみる。」
「頼んだ!」
そして歩兵の何人かに空の20L燃料缶を渡す。少しして、1人減っていたが戻ってきた歩兵から受け取った燃料の中身を、整備兵出身のマリアに検分させる。
「これは・・・。」
「大丈夫なの?それ。」
エマが聞くと、匂いを嗅いだマリアは首を縦に振った。
「はい。問題ありません。最近の燃料より上物ですよ!」
そう言うと曹長の階級章を付けた歩兵が、
「連中が焼き残した燃料はまだ残ってます。」
と言った。
「よし、案内して!」
こうして、まだ燃料に比較的余裕のある2号車を先行させ、エリカたちは急ピッチで鹵獲した燃料を補給しに集積所へ向かった。
「着いたわ。」
エリカが言うと、皆一斉に降車する。
「まるで宝の山だ。」
シャルロッテが言うと、マリアが興奮した様子で
「本当に宝の山ですよ!この上物使ったときのエンジン音聞きたかったんですよ!」
と言った。するとエリカは、
「ちょっと手伝ってちょうだい。」
と言って、戦車随伴歩兵にも指示を出した。
「もちろんだよ。後でバッチリ援護してもらうからな。」
こうして、戦車用の燃料が運び出され、他の車輌にもガソリンが積まれる。
「お待たせ。これで行けるか?」
「バッチリです。」
歩兵にサムズアップしてマリアが答える。
「よし行くぞ!!Panzer vor!!」
「「「了解!!」」」
再び進撃を開始した。
「急げ!橋が落とされるぞ!!」
燃料補給を済ませたエリカたちは2号車に追いついた。が、思ったより抵抗が激しく、歩兵が必死に応戦している。
「歩兵が釘付けにされてる!」
「構わん!押し通る!!」
そう車内で言った2号車は、歩兵の前進を待たず、橋に向かって突っ込んでいった。それに遅れて、歩兵たちが橋に差し掛かった。
「戦車が来た!」
「まずい!早く!!」
「おし!準備よし!!」
「起爆!!!」
工兵の1人がスイッチを入れる。電気式の爆薬はタイムラグ無く爆発した。
「うわあああ!!」
橋に突入した歩兵は、爆薬の爆発か、それで起きた橋の崩落に巻き込まれ、2号車も崩壊する橋から、極寒の川へ滑り落ちた。
「橋が落ちた!」
エマの報告が、5人が見ている光景を表している。先行した歩兵や2号車の乗員は爆発で即死か、極寒の川に落ちて凍死しただろう。
「退却!下がるよ!」
エリカの命令に従い、部隊は後退を始める。歩兵も、生存者がいないことを確認すると、対岸からの銃撃を避けつつ撤退した。
結果橋は爆破され、ドイツ軍機甲部隊は足止めを食らってしまった。燃料こそ鹵獲品で補給できたものの、腹を完全に満たす量では無かった。
しかしそんな中でも、ドイツ軍は進んだ。
「この先で、新たな防衛線が見つかったわ。私たちは歩兵を援護し、これを突破するわ。」
「了解!」
「了解しました。」
3両に減った小隊の戦車は、先遣した歩兵を追いかけて進み始めた。
その頃、アメリカ軍はドイツ軍の猛攻の前に苦戦を強いられていた。
「ダグウッド5からローバージョー!敵の攻撃だ!航空支援を要請する!オーバー!」
「ローバージョーよりダグウッド5。現在航空隊は爆撃機を護衛している。手が空き次第そちらに回す。到着時刻は未定。オーバー。」
「クソッ!了解だ!ダグウッド5、アウト!」
そんな中、エリカたちのIV号戦車はドイツ軍歩兵を援護すべく戦闘に加わった。
「敵火点、距離500!榴弾装填!」
「装填完了!」
「撃てッ!」
榴弾が放たれ、敵陣地を吹き飛ばす。
「次!右斜め前方のM4長砲身!徹甲弾装填!」
「照準良し!」
「装填良し!」
「撃て!!」
放たれた砲弾は、味方歩兵に気をとられていたのか側面を曝していたM4の側面弾薬庫を巻き込み炸裂した。砲塔部分だけが宙に舞い、残った車体からは黒煙が上がった。
「進め!」
歩兵も前進を再開するが、守備を固めた他の陣地からの機銃掃射に次々なぎ倒される。
「歩兵の盾になる。前進!」
エリカは僚車にそう指示すると、
「対戦車猟兵に気をつけて!」
と言う。
「了解です!」
ハンナは機銃で牽制しつつ警戒を続け、シャルロッテは機銃の発砲炎目掛けて榴弾を直射する。
「前方に味方!左に躱して!」
「わかった!!」
エリカの指示でエマが左折し、伏せていた味方歩兵を躱す。
「装填良し!」
マリアはひたすら砲弾を装填し続ける。
「もうすぐで突破できるぞ!」
エリカがそう言った直後、上空から風切り音が響き渡る。
「ヤーボです!」
ハンナが
叫ぶと、全員が空を見上げた。そこにあったものは、まさしく死神たる、銀翼を連ねた敵機の姿だった。
「まずい!とんだクリスマスプレゼントだ!?」
シャルロッテが叫び、エマが車体を急旋回させると、緩降下していた敵機が投弾した。至近に着弾したそれは、凄まじい爆風を起こし、車体を大きく揺らした。
「うわあああ!!」
「きゃああ!!」
車内では悲鳴が上がる。
「大丈夫!?」
「なんとか・・・。」
「ええ。」
それを聞いたエリカは間髪入れずに僚車に問いかける。
「損害報告。3号車は?」
「い、生きてます。」
「4号車は?」
「・・・。」
「おい、4号車?」
「・・・。」
「・・・殺られたか。」
エリカがそうつぶやくと、航空支援の到着に沸き立つ米兵と、恐慌状態で逃げ惑う味方歩兵の姿を見て言った。
「撤退よ。全速後退。」
「「了解!」」
そう言って後退を始めた時、再び爆音と共にヤーボが現れた。今度は2機編隊だ。
「しつこいよ!!」
「落ち着いて!不規則に動いて、少しずつ下がるのよ!」
エリカたちは、2機のヤーボを引きつけながら下がり続ける。そして、敵機が投弾した瞬間、
「今!」
と言って、エマの肩を蹴る。
「!」
エマはギアを入れ、前進させたことで、敵機の爆弾は、エリカたちの後方に落ちた。
「やった!」
「いい調子。このまま逃げるわよ!」
こうしてエリカたちの戦いは、まだ続く。
この攻撃は、米軍の近接航空支援が間に合ったことで退けられ、増援として到着した機甲師団による追撃による攻撃と慢性的な補給不足で、エリカたちの師団は戦車82両、車両その他を失い、残存部隊も戦闘どころでは無くなっていた。
しかし、不運にも撤退中にはぐれたエリカたちは、幸運にも追撃に合わず、2両に減った小隊はバストーニュ近辺で合流した友軍部隊に組み込まれ、バストーニュ攻略に駆り出された。バルジの戦いの最後の戦いが、今始まった。
一応エリカ少尉達の所属部隊は決めておいていますが、この辺りからちょっと所属部隊が特定不能になるかもです。
あと遅れたのは現代編をつくるべきか悩んでいたのもあります。(ネタバレ?)