「おーっ!!生きてたか!?」
そう中隊長に言われ、エリカ達は大きく安堵のため息をつく。
「はい、なんとか。・・・そういえば他の戦車は?」
エリカが疲れを隠しきれないまま尋ねると、中隊長は
「ヤーボと燃料不足で全滅だ。お前らは運が良いなぁ!」
と、どこかやけっぱちに笑った。その言葉を聞いて、エリカ達は顔を見合わせる。
「まぁ、なんだ。無事で良かったよ。この後は再編を待つ予定。なんせ戦車が1両しか残ってないからね。休むと良いよ。」
そう言うと中隊長は伝令に呼ばれて小走りで去っていった。
「ようやく休める!おやすみー。」
ずっと運転しっぱなしだったエマは早速操縦席でそのまま寝始めた。
「わ、私も。おやすみなさ・・・。」
燃料や整備関連でエマと同じ位馬車馬の如く働いていたマリアもそう言って、装填手席で眠り始める。
「・・・眠っちゃいましたね。」
ハンナがそう言うとエリカは軍帽を脱いで背伸びする。
「ま、しょうがないよ。・・・シャルロッテは?」
「とりあえずは寝・・・」
シャルロッテも欠伸をしたその時、
「皆、手紙が届いたぞー。まずはえーっと、シャルロッテ・シュミット曹長ー。」
という、手紙を配る声が聞こえてきた。
「!!!」
途端、シャルロッテは半ば転げ落ちるような格好でIV号戦車を降りると、手紙を受け取りに走っていった。
「また家族からか。筆まめな親だなー。」
とエリカが呟くと、ハンナは苦笑いしつつ
「ま、まあ良いじゃないですか。」
と言った。
「まぁね。」
と、エリカが言った。その視線の先で手紙を開封したシャルロッテは満面の笑みを浮かべている。
「・・・シャルロッテさん、嬉しそうですね。」
「シャルロッテは親の背中見て軍人になったらしいしね。多分、嬉しいんじゃないかな。」
と、エリカが言うと、1人の兵士がやって来て、
「少尉殿、中隊長殿がお呼びです。」
と、言った。
「あ、うん。すぐ行くよ。」
エリカはそう返すと、2人に手を振って、その場を離れた。
「・・・さて、これからどうなるのかな。」
エリカは小さく呟いた。
しかしその後、エリカたちにはまだわずかなる安寧すら訪れないのであった。
「・・・は、配置転換ですか?」
呼び出されて出頭したエリカは、中隊長から言われた言葉を復唱する。
「あぁ、そうだ。実はな、この前ソ連軍の攻勢があって、中央軍集団が壊滅してなぁ。戦力再編の為にこの中隊からも稼働車両を出すように言われてね。」
「・・・つまり、唯一残ってる私たちが抽出される・・・と?」
「そうそう。でも、中尉に昇進だよ。」
中隊長は腕を組みながら言った。
「・・・。」
つかの間の休息すら無いことにため息が出そうになるエリカだったが、それをこらえつつ敬礼をする。
「了解しました。では、いつ出発でしょうか?」
「ん?あぁ、今日の深夜にだよ。」
「・・・へ?」
エリカは思わず目を丸くした。
「そ。だから整備と鉄道に載せる準備と、旅支度は済ませておいてね。」
「わ、分かりました。失礼します。」
そう言うと、エリカは再び敬礼をして、踵を返した。
(・・・ちきしょうめ。)
そう思いながら、エリカは寝ていたエマとマリアを叩き起して、5人で何とか整備と身支度と戦車の積み込み用意を済ませることとなった。そして、その日の深夜、エリカ達は疲労困憊で倒れかけながらも、IV号戦車と共に列車に乗った。
「うー、もう無理・・・。」
そう言いながら、IV号戦車の積載で神経を更にすり減らしたエマは操縦手席でグッタリとしている。
「私も限界です・・・。」
そう言い残してマリアも装填手席で眠り始める。力仕事を更にやった為に当然であった。
「・・・。」
エリカはと言うと、既に爆睡していた。
シャルロッテも手紙を読みながら寝落ちした様であった。
「はぁ、やっと一息つける。」
ハンナはそう言って、大きく息を吐くと、自分の座席にもたれかかった。
「・・・あれ?」
ふと外を見ると、遠くの方に明るい場所が見える。オレンジ色に地表近くが光り、上空へ向けて数本の光の束が投げかけられている。
「・・・連合軍の夜間空襲かな。」
ハンナはポツリと呟いたが、他の全員は寝ているのもあって、それを確かめる術は無い。ただ、彼女はぼんやりとその光景を見つめることしかできなかった。
「お父さん、お母さん、元気かな?」
彼女は、家族に手紙を書こうと思い立ったのだった。
現在、プロットを組み立てつつはあるので今しばしお待ちを。