「十字路が近い。各車、警戒を厳とせよ。ファイアフライはいつでも撃てるようにしとけ!」
英軍戦車長はそう僚車に警戒を促すと、十字路へと近づく。
「十字路に多数の残骸を視認。」
「・・・何?」
突然の報告に驚く。十字路には煙が上がっており、そこに何かがいることは確実であった。
「敵か?」
「おそらく・・・いや、待て。あれは友軍車両の残骸だ。・・・手酷くやられたな。」
「隊長、タイガーの仕業なんじゃ・・・。」
「ばか、こんなところにあいつらが来るわけ無いだろう。きっと別の奴等だ。」
「しかし、この辺りで交戦しているのは我々だけですよ。」
「・・・確かにそうだが、今はそれどころじゃない。早く十字路を確保せねば。」
そう言って、彼らは十字路に近づいていった。
「うあああ、こっち見てるぅ・・・!!」
シャルロッテに照準器を借りて外を見ていたマリアが小声で言った。
「だから、ここに潜ませる必要があったんですね。」
エリカが人差し指をピンと立てて言った。
今、エリカ達のIV号戦車は藁の山に潜っていた。藁を被せて近くの藁の山に擬態している。英軍の車列は十字路に差し掛かっている。
「・・・そろそろかな。」
と、自身も頭に藁をつけてキューポラの上から外を見ているエリカが言うと、
「そうですね。」
と、ハンナが答える。
そして、車列の先頭の戦車との距離が50m程になった時、その戦車の車長とエリカの目が合った。
「・・・ッ!?」
一瞬にして顔面蒼白になった英軍戦車長に対し、エリカは口角を吊り上げて
「シャルロッテ!」
と叫ぶ。
「待ってました!!」
とシャルロッテが砲弾を放った。距離は50m以内。必中の距離だった。英軍戦車長が気付いた時には、既にその体は砲塔ごと吹き飛んでいた。
「ハハハハハ!ヒーハァ!!」
「エマ!」
「任せといて!」
シャルロッテの笑い声の中、エマは即座にIV号戦車を前進させ、藁の山から這い出る。
「戦車前進!敵戦車を撃破するぞ!」
「了解!」
エリカの合図で、IV号戦車が飛び出した。
「なっ!?敵戦車!応戦しろ!!」
「どこだ!?」
「お前が邪魔で撃てない!射線からどけ!」
初撃で隊長車を撃破された英軍は混乱に陥った。
「さあ!狩りの時間だ!かかってこい!」
と、シャルロッテが言うと同時に、徹甲弾が放たれ、その先にいる2両目の戦車に命中した。
「やられた!脱出!」
「大変だ!エミリー!敵はタイガーだ!」
「違う!あれはIV号戦車だぞ!」
2両目はエンジンから火を吹き上げ、乗員が大急ぎで飛び出した。
「あぁ!エミリーがやられた!!」
「落ち着きなさいメアリー、あなたが指揮を引き継ぎなさい!」
「り、了解です!」
と、答えた3号車は残骸の影に隠れ、英軍の戦車隊も指揮統制が復活した。
「目標、2時方向のシャーマン!」
「てぇ!」
エリカ達のIV号戦車はまたM4を撃破すると、機銃で歩兵隊を蹴散らし、縦横無尽に走り回った。
「もっと戦果を!もっと戦果を!!ハハハハハ!!」
と、シャルロッテが興奮した様子で言う。
「ああ!戦車はなんだってできる!」
と、エリカもそれに呼応する。でもどこか、またかよ。と言いたげな表情だった。
「・・・シャルロッテさん、いつもあぁなんですか?」
ハンナがエマに聞くと、
「仲間内じゃ無いとあぁはならないから、認めてくれたんじゃない?」
と返ってきた。その後も、エリカ達のIV号戦車は、残骸を上手く盾に立ち回り、次々と敵戦車を火だるまにした。
「・・・ん?」
と、そこでふと何かが見えた気がして、エリカは目を細める。すると、
「・・・あれは!」
そこには、1両の戦車がこちらに向かってきていた。
「シャーマン長砲身!砲塔回せ!」
「・・・あれ?」
シャルロッテはとっさに照準を合わせる。だが、マリアが徹甲弾を掴もうとした手は空振りした。徹甲弾はもう残っていなかった。
「あ・・・」
ファイアフライが放った砲弾は咄嗟に車体を回して回避行動をとったエマの奮闘虚しく、砲身を撃ち抜き、勢いそのまま砲塔正面の左側3分の1を吹き飛ばした。
「うわあああ!!?」
「だ、大丈夫!?」
エマが振り返ると、腹部を朱色に染めたシャルロッテが呻いていた。
「シャルロッテー!マリア!救急キットを出せ!」
エリカも血にまみれた左腕を抑えながら叫ぶ。
「わ、わかりましたッ!」
マリアは急いで救急箱を取り出す。
「いでで・・・」
「シャルロッテ曹長、動かないで。」
マリアは布を当てて止血処置を行い、エリカは自らの傷口に布をキツく巻いた。
「これでよし・・・」
「エマ!ここから早くずらかるよ。」
「了解!」
すぐに後進をかけるエマだが、ファイアフライはまだ狙ってきていて、残骸の影から動けなくなってしまった。
「クソッ!あの野郎まだやる気か!」
と、その時、砲弾が幾つか飛来し、地面を抉った。
「Shit!敵の増援だ!退却しろ!!」
英軍を退却に追い込んだのは明後日到達予定のはずのSS装甲師団の装甲偵察大隊所属のsd.kfz234/2プーマ装甲車とハーフトラックに分乗した歩兵達だった。
英軍にとっては撃滅できない相手でもなかったが、包囲される危険を1層感じた為か、残った部隊も煙幕を張り逃走に移った。
「逃すな!掃討しろ!」
SSの小隊長がそう言うと、歩兵部隊は周辺を掃討し始めた。
「・・・やれやれ、危なかった。」
と、IV号戦車のキューポラから顔を出したのはエリカだった。
「救援、感謝します。案外近くにいたんですね・・・。」
近付いてきた大隊の指揮官車両にエリカが敬礼する。被弾した際の破片やらでボロボロだ。
「はは、砲声が聞こえたんでね、飛ばしてきたのさ。」
と大隊長は笑ってみせた。
「しかし、随分派手にやりましたな。」
「えぇ、まぁ。」
「おかげでこっちも本隊を置いてきちまった。ははは。」
と、大隊長は笑ったが、負傷しているエリカ達を見るや、その笑いはすぐに止まった。
「って、衛生兵!早く負傷者を後送しろ!」
すると白地に赤十字の衛生兵が数人で担架を持ってかけてきた。ハンナとマリアが、出血で顔面蒼白、瞳孔が開きかかっているシャルロッテを半壊した砲塔から運び出した。
「うぅ、ありがとう・・・。」
弱々しく吐き出された言葉に、
「お救い料、後で貰いますからね。」
とマリアは笑ってみせた。彼女も、エリカやシャルロッテ程では無いが、怪我をしている。
「ハンナー。」
シャルロッテが呟くようにハンナを呼ぶ。しかしハンナは彼女の目の前にいる。ハンナが返事をすると、
「あ、あぁ。ごめん。もうほとんど見えなくて。・・・今までたくさん殺してきたバチかな・・・?」
「縁起でもない事言わないでくださいよ!」
とハンナは少し怒ったような口調で言った。
「あぁ、エリカ、エマ。共に戦えて良かったよ・・・。」
シャルロッテは力なく微笑むと、そのまま気を失った。
「シャルロッテさん!?」
「あぁ、大丈夫、気絶しただけ。」
と、衛生兵が落ち着かせるように答えた。
「よかった・・・。」
「ただ、安心はできないけど。」
と、エマは顔を曇らせる。
「・・・曹長、私は?」
マリアはボソリと呟いた。
「少尉殿も。」
衛生兵にそう促されて、エリカも運ばれていった。
「・・・どうします?」
運ばれていくシャルロッテとエリカを見ながら、ハンナが切り出す。
「さぁね。砲手も車長もいないんじゃあ、ねぇ?」
とエマが答える。
「じゃあ・・・。」
「・・・いいんじゃない?このままで。」
とマリアは言う。
「いいんですか!?」
「だって、私達がいても足引っ張るだけだし・・・。」
「でも、それならそれで、って、それ大丈夫なんですか?」
ハンナはマリアの怪我のことを指摘する。
「んー、まぁ、平気だよ。ありがと。」
と言いつつ、彼女は左手を押さえている。
「うわ、血が。」
「ちょっと痛いかも。」
「そりゃそうですよ!早く手当しないと!」
「うん。わかってるんだけど、ちょっと疲れちゃったかな・・・。」
と、マリアはため息をつく。確かに疲れ切った様子だ。そのまま力無く倒れた。
「うわああああああ!!!」
「・・・大丈夫、寝てるだけみたい。」
エマはマリアの状態を確認すると、
「じゃ、とりあえず戦車に載っけるから手伝って。」
と言い、ハンナとエマは、寝息を立てるマリアを引き摺って、砲塔が半壊しているIV号戦車へ戻っていった。
次回からはヒュルトゲンの森編です。アーヘンでも良かったんですが、市街戦はカーンでもうやってしまったのと、wikiで装甲師団の投入が確実なのがヒュルトゲンの森の戦いだったので。
ガルパン要素・・・
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少ない。もっと絡めるべきだ。
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無いが、そのままでも良い。
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著者のおまかせで。