(当たり前っちゃ当たり前ですが)
翌日、一行は川にかかる橋を奪還する歩兵隊を援護することになった。
「斥候によれば、橋に戦車はいない。歩兵隊がいるが、対戦車猟兵に気をつけろ。」
エマが無線でそう伝えると、
「了解!」
と応答があった。
「気をつけて。火あぶりにされたくなかったら周りを見回して。」
ハンナが緊張している新兵達に言う。
「はい!」
彼女らは元気よく返事をした。
「敵火点!撃ってきた!」
機関銃の曳光弾が空を裂いて飛び回る。
「弾種榴弾。距離100の機関銃陣地
。」
エマの指示で装填手が榴弾を砲尾に押し込む。
「距離100の機関銃陣地!撃たなきゃ殺されるぞ!」
砲手が復唱し、照準を合わせる。
「てぇ!」
「ッ!!」
轟音とともに放たれた砲弾は弧を描きながら飛んでいき、目標地点に着弾した。
「目標沈黙!」
その声を聞いて、ハンナはホッとした。しかし、安心するのはまだ早い。まだ戦闘は終わっていないのだ。
「進め!」
そうエマが命じると、履帯音が鳴り響く。
「こちら3号車。前方より敵の増援を確認!」
無線機から声が届く。
「こちら2号車。歩兵が煙幕弾を要請してます。」
「わかった。その代わり支援射撃は難しいと伝えておいて。」
「了解!発射!」
各車から煙幕弾が発射され、視界が悪くなる。
「前進!敵との距離を詰めるぞ!」
エマが叫ぶと同時に、先鋒をかって出てバリケードの隙間の道を走っていった数人の歩兵が爆発の中に消えた。
「ほ、砲撃!?」
マリアが言うとエマが、
「いや、これは地雷だ。」
と答えた。
「地雷原ですかね?」
ハンナが尋ねると、
「恐らく。」
とマリアが答えた。
「地雷踏まないよう注意しろよ!」
そう叫んだ直後、また数人の歩兵が吹き飛んだ。
「地雷だ!こちら3号車、履帯破損!行動不能ですッ!!」
「随伴歩兵が少なくなってきました!」
次々に損害報告が入る。
「ちくしょう!!どうするんだこれ!?」
マリアが毒づくと、装填手が
「このままじゃ死ぬだけだ・・・。」
と呟き、車内は混乱に包まれている。そんな中、3号車に対戦車火器特有の尾をひいてロケットが飛んでくる。
「敵の対戦車猟兵です!」
ハンナがそう言った時、ハッチを誰かが叩いた。エマがキューポラから味方だと確認して開けると、歩兵がいて、
「悪いが歩兵は退却する!」
と言ってきた。
「了解したが、3号車が履帯をやられてる!見捨てられない!」
エマが銃声に負けずに声を張り上げる。
「なら置いていけ。こっちはもう保たん。」
そう言って歩兵は走り去った。
「どうします?」
ハンナが聞くと、
「・・・。」
少し考えてからエマは、
「3号車、撤退する!こっちで回収するから戦車を放棄して戻ってきて。」
と言った。
「了解ですッ!」
そういうと3号車の乗員は銃撃戦の最中を突っ切り、エマ達のIV号戦車の上に飛び乗った。直後、別の対戦車ロケットが命中し、3号車は吹き飛んだ。
「これで全員!撤退!撤退!!」
「走れ!走れ!」
マリアがそう叫びながら、めいっぱい後進してエマ達は戦場を離脱した。
「歩兵の奴ら、どこまで逃げたんですかね?」
後退したは良いものの、歩兵とはぐれてしまった、エマ達のIV号戦車隊が森を進んでいた。マリアの問いに、
「まだヴァルハラに行ってなきゃ良いけどね。」
とエマが返す。
「・・・すいません、少し外の空気吸って良いですか。」
砲手がそう言った。気分が悪そうな顔だ。
「良いよ。でも気をつけてね。」
エマが言うと、砲手はハッチから身を乗り出した。人を撃ったのが堪えたのだろう。とハンナは思いつつ、機銃の残弾を数え始める。
「ん?」
ペリスコープの視界の隅がキラリと光ったと感じた時、その光の正体がわかった。
「うわあああ!!」
装填手の絶叫に振り返ると、ハッチから身を乗り出したまま体をぐったりとさせた砲手の姿があった。
「スナイパー!!」
エマが叫び、全員が車内に体を引っ込めた。
「場所は!?」
マリアが車外をペリスコープで見ながら言う。
「1時!1時方向の丘上です!!」
スコープ特有の反射光を見つけたハンナが位置を通報する。
「よしとっちめてや・・・」
「よくも!よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも!!!!!」
と、エマを押しのけて装填手が砲手席に座る。そういえば砲手と装填手は同期だからかとても仲が良かったとエマ達は思い出す。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
轟音とともに榴弾が発射される。その弾は丘上で逃げようと立ち上がった狙撃兵に直撃し、この世から細胞単位で消し飛ばした。
「ざまあみろ!!」
興奮して叫ぶ装填手に、
「落ち着いて!ハンナ、マリア、他に何かいる?」
とエマが蹴りを入れながら言う。
「いえ。」
「何も。」
と2人は返して、再びIV号戦車の列は退却していった。
その後、何とか友軍と合流したエマ達は補充を受けることになった。頭を撃たれて即死していた砲手は埋葬した。
戦友を失ったエマ達だったが、ある人物と遭遇する。
「お?久しぶり。」
「あ!エリカー!!久しぶり!!」
エマが即座に駆け寄ったのは、ファレーズで負傷して後送されていた、エリカだ。
「元気にしてたか?」
「まあまあかしらね。」
「そっかー。」
「えっと、そちらの方は?」
ハンナに装填手が恐る恐るといった感じで尋ねると、
「ああ、前の車長のエリカさんだよ。」
と返した。と、マリアが尋ねる。
「少尉がいるってことは、曹長も・・・」
「シャルロッテはいないよ。」
と、エリカは即答した。聞けば、重傷だったシャルロッテは本国の病院へ送られたらしい。
「結構傷が深そうだったしね。」
エマが言うと、
「ま、シャルロッテの戦闘狂も多少は落ち着くでしょ。」
エリカが笑いながら言った。それに続いてエマとマリアも笑う。
「えっと、それって・・・?」
ハンナが尋ねるとマリアが、
「あぁ、曹長が戦闘中にテンション上がってる時のことだよ。」
と答える。そういえばファレーズの十字路でシャルロッテ曹長のテンションが高かったと思い出したハンナは納得する。
「そういえば、あんたらどこ行ってたのよ?」
「ちょっと連合軍への反撃に駆り出されてた。」
「で、その盛り土は・・・。」
「・・・。」
エリカの質問に、一瞬の間を置いて答えたエマに、マリアとハンナ、装填手は何も言えなかった。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「何で黙るのよ。いや、何があったかはわかるけど。」
沈黙を破ったのはエリカだった。
「あ、そうだ!エリカさんはどうしてここに?」
ハンナが空気を打破しようと話題を逸らす。
「なんでかって?また皆と一緒に戦うためよ。」
そうエリカは言って帽子を被り直した。
こうしてまたエリカと共に戦うことになったエマ達は、エリカが小隊長兼車長。エマが操縦手、マリアが装填手、ハンナが通信手、新入り装填手は砲手に据えた。そして再編を済ませた部隊は、村落を占領した米軍の側背への突進を命じられた。
「それでさ、シャルロッテの奴、さっさと前線に帰るって言うもんだから、脱走防止の為にベッドにふん縛られててさ。」
「ははは!あの人らしい!」
「だろ?」
「うんうん!」
そんな会話をしながら、エリカ達は進撃していた。
「見えた!敵戦車です!」
前を走る僚車が停車する。
「止まるな!狙い撃たれる!」
交代で小隊長になったエリカは僚車にそう指示を出し、エマは戦車を動かし続ける。
「目標、M4戦車。距離400!」
エリカの指示を復唱しながら、新入りが照準を合わせる。
「撃てっ!!」
発射された砲弾はM4へ吸い込まれるように飛び、一瞬で爆炎に包んだ。
「撃破!やるね新入りちゃん。」
エリカが言うが、新入りは目をギラつかせながら照準器を覗いている。
「・・・フフフフフ、ハハハハハハ!!!」
燃え盛るM4から転がり出てきた戦車兵を同軸機銃で撃ちながら新入りは笑っている。
「え、大丈夫この人。」
とマリアが心配する中、
「シャルロッテみたいだ。」
とエマ達は苦笑いした。
その後も前進を続け、戦車数両を撃破した部隊は、村落を占領する米軍の退路を遮断した。
「よし、これで終わりだ。」
とエリカが呟くと、狂ったように笑っていた新入りはスッと元に戻った。
「うお、戻った。」
マリアが呟くとエリカは
「おかえり新人ちゃん。」
とだけ言った。
その後部隊は別の作戦区域へ転戦することになった。同時に、砲手をしてた新入りは別の車輌へ異動になった。
「お世話になりました!」
そう言ってビシッと敬礼する新人に敬礼し返したエリカが
「おう、また会おう!」
と言うと、エマが続いて、
「元気でね。」
と言い、マリアが
「ま、気をつけてな。」
と少しそっけなく言い、
「こういうの、生き残るのが大事だからね。」
とハンナが付け足した。
「はい!先輩方もお元気で!!」
そう言って、新入りはにこやかに去っていった。
「なぁ、砲手って皆あんなになるのかな?」
新入りが去った後、エリカが言う。
「知りませんよ。」
マリアが返すが、
「ま、人の死を見ても平然とできる私たちもたいがいでしょ。」
とエマが言う。
「・・・私たち、おかしくなってしまったんですかね。」
ハンナが不安げに尋ねる。
「どうだろうね。でも、私たちは今生きてる。それで十分だよ。」
とエリカが答えた後、全員押し黙った。
次は病院から脱走されないうちにシャルロッテ曹長も復帰させます。なんか戦闘狂のキャラって良いですよね(唐突)。
ガルパン要素・・・
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少ない。もっと絡めるべきだ。
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無いが、そのままでも良い。
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著者のおまかせで。