「でっきったー!!!!!」
花舞市の一角にある食堂……の地下にある、神瀬のつくった秘密基地にて。朝早くから神瀬のご機嫌な声が響いていた。
「できたできたできたよー!!見てくれ深紅くん!!」
「愛華さん、うるさいからシメといて」
「承りましたわ」
「げふっ!」
バタバタ足音をたててリビングに現れた神瀬に、深紅は目もくれず愛華に指示を出して静かにさせた。神瀬の死角から現れた愛華は、神瀬に延髄斬りをくらわせて鎮圧した。
「さすが愛華さん。見事な延髄斬りだ」
「お褒めにあずかり光栄ですわ、深紅様。紅茶のおかわりはいかが?」
「もらおうかな。橙弥はどうする?」
「……あ、オ、オレも」
その場に倒れ動かなくなった神瀬を気にしていた唯一の良心こと橙弥は、急に話を振られ慌てて意識を向かい合って座る姉に戻した。愛華がその場から離れたのを見てから、橙弥はこっそり神瀬に両手を合わせた。
「橙弥、カミセンのことは気にしなくていいと思うよ。朝っぱらからあんな騒いで朝食食べてる私達のこと気にしないでホコリ立ててた方が悪い」
「そっ……うなのかなぁ……」
愛華の用意した紅茶を置き、橙弥は相変わらず動かない神瀬をツンツン、と指で突いた。
すると突然神瀬がガバッと起き上がった。
「ひどい目にあった!」
「わぁ!?」
「橙弥驚かせんな!!」
「ぐほぉっ!?」
本日二度目の延髄斬りをくらい、神瀬は床を転がった。今度のは深紅によるものだ。愛華に比べたら威力の低かった延髄斬りでは、意識を奪えなかったようだ。今度はすぐに復活した。
「いっててて……。朝からバイオレンスだねぇ」
「神瀬さん、手当は必要ですか?」
「大丈夫だよ。瀧くんは優しいね。女性陣と違って」
「お?やんのか?」
「喧嘩なら買いますわ」
「私が悪かったですごめんなさい」
準備運動を始めた深紅と愛華を見て、神瀬はすぐ土下座の体勢に入った。この男にプライドは無いのだろうか。瀧が橙弥にあんな男にはなるなよ、と耳打ちしていた。
「うぅぅ……せっかくすごい発明品できたから見てもらいたかったのに……」
「すごい発明品って言っても、どうせいつもの使い方がニッチなやつでしょ?」
「そんなことはないさ!ふふふ、聞いて驚くなかれ。題して異世界とこの世界を繋ぐフラフープ!!」
「異世界とこの世界を繋ぐフラフープ!?」
神瀬は白衣からフラフープを取り出した。見たところは普通の赤いフラフープにしか見えない。
「異世界とこの世界を繋ぐって……。なんでそんなもの作ったんですか……」
「好奇心が勝っちゃったんだよねぇ。私の頭脳を試したかったんだよ」
深紅と橙弥はフラフープをおっかなびっくりツンツンつついている。瀧はそっくりな行動をとる皇姉弟を見てやはり家族だな、と微笑ましく見守っていた。
「どう使うんですか?」
「使い方は簡単!そこら辺の壁に貼り付けるだけさ。簡単だろう?」
「簡単すぎて悪用されそうですね……」
「何が起きるかもわからない。慎重にいこう」
「瀧様にしては珍しくまともな意見ですわね。少し見直しましたわ」
「愛華は俺を何だと思っているんだ……?」
あくまで慎重に神瀬の作ったフラフープを扱おう、という結論に落ち着いた矢先。
「よぉいしょっと」
神瀬がフラフープをペタッと壁に貼り付けた。
「あぁーっ!?」
「何してんですか何してんですか何してんですか!?」
「大事なことだから三回も言ったのかい?」
「呑気なこと言ってる場合ですか!?」
フラフープの向こうはすでに異世界に繋がっているらしい。フラフープを境目に、壁に謎の空間が広がっている。
「あぁぁもう、今すぐ剥がさないと……!」
深紅がフラフープを壁から剥がそうとフラフープに手をかけた時。
ニュッ
「「……」」
謎の空間から何かが顔を出した。
「どうも」
「ど、どうも……?」
その何かは誰がどう見ても怪人の姿をしていた。緑のレンズのゴーグルのような物が目にあたる部分に埋め込まれ、フリルやレースを思わせる装飾が全身に施されている、どこか愛らしさを感じさせるその怪人は空間から身を乗り出し全身を完全に深紅の側に置いた。
「……いやどちら様!?」
「我はトラトラ」
「俺は瀧純一郎だ」
「そこで律儀に名乗らなくて良いんだよ瀧くん」
トラトラと名乗った怪人は、キョロキョロ周りを見回している。
「ここはどこだ?」
「たぶん君のいた世界とは違う世界だろうねぇ。私の発明でこの世界に間違えて来てしまったようだ」
「ほう、異世界とな?」
その瞬間、トラトラの目が光ったように見えた。
「どうりで我のいた世界とは服装が異なるのだな」
「トラトラのいた世界だとどんな服着てたの?」
最近異世界もののラノベを読んだ橙弥は、本物の異世界の住人に興味津々だ。率先してトラトラに質問した。
トラトラはよくぞ聞いてくれた、と前置きした上でこう言った。
「女装だ」
……世界の時が止まったような錯覚に陥った。
「なんて?」
「女装だ」
「聞き間違いじゃなかった」
深紅はこの時点ですでに頭を抱え始めた。神瀬をキッと睨みつけたが、神瀬はどこ吹く風だ。
「我のいた世界は素晴らしいぞ。住人全員が女人の装いをするのだ。女装の似合う人間ほど強い権力を持つほど、女装は神聖視されているのだ」
「なんっだそれ……」
橙弥はげんなりとした顔でそう呟いた。異世界に対するイメージが呆気なく壊されてしまったのだから無理もないと言えば無理もないのだが。
「しかし、ふむ……。この世界では女装が一般的ではないのだな?」
「まぁ……」
「なら我が作り替えるか」
「なんだと」
さらっととんでもないことを言い放ったトラトラに、深紅と瀧は咄嗟に戦闘態勢をとった。この世界の平穏を守る仮面ライダーである二人からすれば、トラトラの発言は聞き捨てならないものだ。……平穏を脅かしているのが女装を神聖視する怪人でなければ、もっと二人の格好はついただろう。ちなみに愛華はトラトラの発言のシュールさにやられ隅で笑いを堪えている。たぶんこの話では使い物にならない。
「私達の世界で好きにはさせない」
「その通りだ。大人しくしてもらおうか」
「ふっ、我はそう簡単に諦めたりせぬよ。これでもくらえ!」
トラトラは深紅達に向かって手を向けると、その手からビームのようなものを発射した。辺りには煙が立ち込める。
「うわっ!」
「な、何だ!?」
「おや」
「姉ちゃん大丈夫!?」
煙が次第に晴れてくると──深紅は再び頭を抱えた。深紅自体は何も変化がない。変化があるのは男衆だけだ。
「な、何だよこれ!?」
深紅の視線の先。そこには魔法少女のような装いに身を包んだ橙弥と、着物姿の瀧と、セクシーなチャイナドレス姿の神瀬が立っていた。
「スースーする……!」
「動けない」
「深紅くん似合うかい?」
「なんでノリノリなんですかカミセン!!」
丈の短いスカートだからか、橙弥は恥ずかしそうに裾を引っ張っている。瀧は着方が複雑な着物のせいで、その場から動けず固まっている。その一方で神瀬はなぜかノリノリでポージングを決めていた。
「ふーむ、女装力が一番高いのは魔法少女の少年か。しかし六十七、と。百以上ある者はなかなか見つからないな」
よく見るとトラトラのゴーグルに数字が浮かんでいる。どうやら女装力とやらを計測する機能もあるようだ。
「ね、姉ちゃん!早くあいつ倒してよ!」
「もちろんそのつもりで──は?」
深紅がいつものバックルを手に取り腰に当てようとした。……のだが、バックルはふわふわのフリルで覆われていた。
「はぁ!?何これ!?」
「あ、貴様はすでに女人の格好をしていたから可愛くないそれをアレンジしておいたぞ」
「ありがた迷惑なんだが!?あーもう、アーティファクションキーが挿さらない!!」
「そうカリカリしないでくれたまえよ深紅くん。ほら、私という名の絶世の美女を見て落ち着くんだ」
「ヴォエッッッッッッ!!」
「ひどくない!?」
深紅はアーティファクションキーを何度もバックルに挿そうとするが、やはりフリルに邪魔され挿さらない。
「すみません、瀧さんお願いしま──」
深紅は瀧を頼ろうとしたが、瀧は着物の帯やら布に全身巻き付かれ、深紅の方をじっと見ていた。
「助けてくれ」
「アァーーーーーッッッッッ!!」
とうとう深紅はツッコミを放棄し叫んだ。それはそうだ。何だ女装が神聖視されてる世界から来た怪人と戦うって。
「あーっ、もう!!こんな物のせいで!!」
深紅は思わずフラフープを殴りつけた。
すると、フラフープがおよそ正常とは思えない挙動をしながらも起動してしまった。
「うそ!?起動した!?」
「姉ちゃんが殴るから!」
「何か来るぞ!」
フラフープは年季の入った洗濯機のような音をたて続ける。
深紅は頼むからもうこれ以上変な奴は来ないでくれと祈る。この状況を打開してくれる存在が来てくれ……などと高望みはしない。せめて無害な存在であってくれと。
その祈りは────。
ボンッと空気砲のように白い煙が穴から吹き出す。
「今度は何が……」
煙の中、逆光にそれは立っていた。
少しずつ、輪郭が露となり深紅はぽつりと呟いた。
「女の子……?」
こつん、と下駄の音。
白煙を裂いて、異邦からの存在が
流れるような黒髪。
雪のような白い肌。
気品漂う蝶が描かれた和服を身に纏い、その目は麗しい紅に染まっていた。
「君は……」
その者は深紅の問い掛けに微笑で応え、名を告げた。
「私は、夜舞薫と、申します……」
儚げな少女の登場に呆気に取られる一同。
だが、トラトラだけは違った反応をしていた。
「む!むむ!?ば、馬鹿な!」
夜舞薫を見つめるトラトラは驚愕の声を上げる。
上げ続ける。
「九十九……百……二百!?なんだこの数値は!?どこまで上がるのだ!?」
「女装力が測れているということは……。まさか、彼女は女装だというのか!?」
「嘘でしょ!?」
神瀬の言葉にトラトラ以外の面子も驚き、夜舞薫を見つめる。
どこからどう見ても、女装とは思えない。
百人が見たら百人が女の子だと言うだろう。
それでも、彼女。いや彼は……女装なのだ。
「計測不能だとぉ!?ガッ!?」
トラトラのゴーグルが小さな爆発を起こし、悶える。
目をおさえて転がるトラトラをよそに、深紅はバックルのフリルが消失したことに気付いた。
あのゴーグルが壊れた影響かどうかは分からないが、とにかく変身することがこれで可能になったとバックルを装着した。
「ところで……こちらは、どちらでしょう……?」
「えっと……。今はそれどころじゃないんだ。あいつがこの世界を女装の世界にするとかなんとかで……」
「なるほど……。世界の危機、というものでしょうか?」
「ま、まあそうかも。馬鹿げた世界の危機だけど。とにかく離れていて。私があいつを倒すから」
「世界の危機なれば……。この夜舞薫、微力ながらお力をお貸しいたします……」
そう言うと薫はネックレスを手にする。
ネックレスは蝶を模した仮面となり、またも周囲を驚かせた。
「君も仮面ライダー?」
「仮面、ライダー……? 私は御伽装士、です……。ですが、仮面ライダー……かっこいい響きでございます……。今回は、そう名乗るとしましょう……」
「────オン・ビシャテン・テン・モウカ。舞え、マイヤ……」
薫の全身に赤い蝶の紋様が描かれる。
これには痛みが伴い、薫は目を細めた。それは倒すべき敵を睨み付けるようにも見え、トラトラにプレッシャーを与える。
「私も!」
深紅も戦意を高め、アーティファクションキーをバックルへと装填する。
そして────。
『変身!』
奇しくも、その言葉は重なった。
まったく別の世界の者同士であるが、その根源は同じ。
仮面ライダーという名で、二人は繋がっていた────。
深紅が変身した白き薔薇の騎士は仮面ライダーローサー。
薫が変身した様々な紫に彩られた蝶の戦士は仮面ライダーマイヤ。
白薔薇の花弁と光の蝶が舞い、二人の仮面ライダーの登場を飾った。
「お前達は……!」
「私は仮面ライダーマイヤ……。あなたのような悪を滅する、夜の蝶でございます……」
トラトラに向かい名乗り、一礼するマイヤを見たローサーは自分もそういうことした方がいいのかと思い、咄嗟に名乗った。
「仮面ライダーローサー……。仮面ライダーローサー!」
「深紅くん!名乗り思い付かなかったんだね!だからとりあえず二回言ったんだね!」
「愛華さん」
「ごふっ!?」
トラトラよりも先に愛華によって倒された神瀬。
そんな神瀬のことなど置いて、戦闘が始まる。
ローズカリバーでトラトラに斬りかかるローサー。トラトラは慌てながら横薙ぎに振るわれた斬を、奇跡的にイナバウアーのような体勢で回避し上体を起こす。
だが、トラトラの動きを予測していたマイヤの紅き槍『厄除の槍』がトラトラの胸部を穿つ。
ローサーは後退るトラトラを追撃。袈裟懸けに斬り上げ、トラトラを追い詰める。
「くっ……このままでは……!」
「待て!」
とにかく逃げるトラトラ。
律儀に扉は閉めるなどして外へと飛び出したトラトラは駆け続ける。
追う仮面ライダー。
そして三人が行き着いたのは、廃工場。
「おのれ仮面ライダー!何故邪魔をする!?女装は素晴らしいのだぞ!」
「たしかに橙弥の女装は可愛かったけど、無理矢理世界ごと変えるなんて間違ってる!」
「はい……。人はそれぞれ、自分のしたい格好というものがあります……。それは人によって違うもの……」
「人の自由を!」
「守る……!」
仮面ライダーは人類の自由と平和のために戦う者。
自由を脅かすトラトラは仮面ライダーが戦うべき存在。
今、この戦いを終わらせるべくローサーとマイヤの……仮面ライダーの必殺技が放たれる。
「退魔、覆滅技法……。千蝶一蹴……!」
右足を半歩、前へと出し構えるマイヤ。その足下から無数の蝶が飛び立ち、マイヤに力を与える。
集中と力が極限まで高まった瞬間、マイヤは跳びたった。
「決める」
ローズカリバーの鍔に施された薔薇を押し、地面へ剣先を突き刺すと茨がトラトラに巻き付き拘束。
身動きの取れなくなった隙にローズカリバーを抜いて再び薔薇を押し込み跳躍、剣をトラトラへと向かって投げつける。
剣は巨大化し、トラトラを貫く勢いで迫る。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!」
叫ぶトラトラであったが、剣はトラトラの前で停止。
トラトラは助かったとホッと息をつくが、まったく助かってなどいない。
舞い散る白薔薇、舞い飛ぶ蝶。
『はああああああ!!!!!!!!』
二人のキックがローズカリバーを蹴り押し、トラトラは貫かれる────!
「じょ……女装ばんざぁぁぁぁぁい!!!!!!」
白薔薇、蝶、爆炎。
その三つが二人の仮面ライダーを美しく飾る。
こうして、謎の女装怪人トラトラの野望は打ち砕かれたのであった。
世界の平和は二人の仮面ライダーによって守られた。
ありがとう仮面ライダー!
(だいぶ馬鹿馬鹿しい世界の危機だったがな!)
秘密基地に戻った二人は改めて自己紹介をしていた。
そして、薫は神瀬の作った発明品によってローサーの世界に来てしまったことを知ったのだった。
「このフラフープに……そのような……」
「カミセンの発明品は大体こんな感じだよ」
「このフラフープ……」
「うん?」
「まるで……○○ぬけフープのようで……」
「それは、言っちゃダメ」
「壁に貼りつけるあたり、とても……」
「やめようねぇ!」
「結構グイグイ来るなこの子」
別の世界に来てしまったというのに、まったく動じた様子は見せないどころか順応してしまっているようですらある。
「それにしても……」
「なんですか瀧さん?」
「深紅くんと彼女、いや彼……。見れば見るほど、姉妹のようだなと」
瀧の言葉に「あー」という言葉が出た。
たしかに深紅と薫は同じような赤い目と、赤みがかった髪をしていると共通点があった。
そんな風に言われた二人は顔を見合せ、たしかにとお互い感じた。
そして、薫は何かを思い付いたようで小さく笑うとその思いつきを口にした。
「ふふ……。深紅、お姉様……」
「おー、いいね。妹も欲しかったんだ」
薫の頭にポンと手を乗せ、撫で始める深紅。
その光景は、本当の姉妹のようで……。
「いや、妹じゃなくて弟だよ深紅くん」
「私は……どちらでも構いません……」
「構わないんだ!?」
性別とか超越しちゃってる系な薫にとって、弟か妹かなど些末な事であった。
しかし、これを些末とはしておけない者が一名……。
「姉ちゃんは譲らないからな!弟は俺一人でいい!」
そう、我らがシスコン橙弥である。
だが、ここで橙弥にとって想定外のことが起こる。
「……橙弥、お兄様……」
その時、不思議なことが起こった。
橙弥の脳内に溢れ出す、存在しない記憶────。
幼き日、夕焼けの中で小さな手を繋ぎ家路につく橙弥と薫。
さらに、妄想は続く。
以下、妄想。
『橙弥お兄様』
『橙弥お兄ちゃん』
『橙弥兄さん』
『橙弥兄ぃ』
『にいにい~』
『兄貴』
様々な装いの薫が橙弥の周りに現れ……。
『薫がいっぱいだ!』
妄想終了……。
「ああ、薫。お兄ちゃんだぞ」
「はい……」
よーしよしよしとものすごい勢いで薫を撫で始めた橙弥。
恋に落ちたかのように、一瞬で橙弥にとって薫は妹と認識されるようになってしまった。
「ねえ、弟が変なんだけど。カミセンなおして」
「きっと妹が欲しかったんだよ、ずっと」
「男は妹を欲するからな……」
「えぇ……」
うんうんと頷きあう男二人。それを見て引く愛華。
橙弥がおかしくなったことにショックを受ける姉。
このメンバーの良心兼数少ないツッコミ枠の橙弥が陥落したことによりツッコミ不在となってしまった。
そんな中、突然薫の身体が透けた。
「あら……?」
「何が起こってるの?」
「この世界に存在出来る時間がもう僅かなんだ。元の世界に自動的に帰せるようにしてたからね」
「えっ。じゃあさっきの奴も放っておけば元の世界に戻ってったってこと?」
「そういうことになるね!」
「よし、シメるか」
またもシメられる神瀬をよそに、薫の帰還は進んでいく。
「か、薫!」
「別の世界……大変、興味深いものですが今回はこれまでのようです……。それでは、皆さんさようなら……」
金色の粒子となって、フラフープに吸い込まれていった薫。
短い時間ではあったが、神瀬の発明により世界と世界が繋がった瞬間であった。
普通であればとてつもない発明品を作った科学者として称賛されるはずがそこは神瀬、普段の行いによって称賛ではなく懲罰されていた。
そして、妹(偽)と生き別れてしまった橙弥は……。
「薫ぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!」
泣き崩れた。
深紅が宥めたが、それでも泣き続けた。
泣き疲れて一度寝た橙弥。目覚めた時、薫との別れを思い出してまた泣いた……。
落下していくような感覚で目が覚めた。
開いた目が映すは自分の部屋。
お気に入りの椅子に腰掛けて、いつの間にか眠ってしまっていたよう。
ということは、あれは夢……。
「それは少し……残念です……」
一人呟き、落胆していると襖が開いて咲希が部屋に入ってきた。
「あ、いたいた。って、どした?」
落胆しているのが目に見えて分かったのか、咲希に気を遣わせてしまった。
「いえ……。夢を見たのですが……夢であったことが寂しかったと言いますか……」
「夢? 寝てたの薫? ここで?」
「はい……。いつの間にか……」
寝る前の記憶がほとんどないのが不思議ではあるが……。
「え、一瞬だよね寝たの」
「……一瞬?」
「私、5分くらい前にも薫の部屋来たけど、その時は寝てなかったし」
……はて。
あの夢は5分やそこらで見れるものではない。
それに、夢にしては現実味があったというか……。内容は現実味まったくないものだけれど……。
で、あれば……。
「夢、ではなかった……」
「え?」
「ふふ……。私、流行りの異世界転移をしてしまったようです……」
「えー!? なにそれどういうこと!?」
詰め寄る咲希を笑って誤魔化し、少しばかり秘めた思い出といたしましょう……。
花にとまる一羽の蝶を見かけて、彼女、じゃなかった。彼のことを思い浮かべる。
ほんの短い交流ではあったけれど、確かな絆が生まれたと思う。
異なる世界の仮面ライダー。
他にも、たくさんいるのだろうか?
「姉ちゃん」
「ああ、待って。いま行くから」
先を歩く橙弥のもとへ歩き出すと同時に蝶も羽ばたいた。
またいつか、きっと再会出来るだろう。
それに、これから先たくさんの出会いがある気がする。
仮面ライダーという縁で繋がる出会いが────。
というわけで大ちゃんさんの仮面ライダーマイヤとのコラボ作品でした!
コラボは初めてだったのでわからないことだらけでしたが、大ちゃんさんのおかげで完成に至ることができました!ほんと感謝してもしきれないです……!
大ちゃんさん、そしてここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございました!