『ギャギャヴォッ!』
「「危なっ!?」」
イャンガルルガが突進しながら啄んでくる。イャンクックのそれと違い、鋭く抉るような攻撃だ。
『グギャッ! ギャォッ! グゴォッ!』
「うぉおおおっ!」「くぅっ……!」
さらに、クルッと振り返ったかと思うと、火炎液弾ではなく、火球を三連打してきた。火竜かお前は。
「この……うわっ!?」
『ギャヴォオオッ!』
私は何とか反撃を試みるが、イャンガルルガが突如として力強く羽ばたいて、風圧で身動きを封じてきた。
「不味い、避けろビスカ!」
『グギャァアアアアアッ!』
「ぐはっ!?」
そして、イャンガルルガが容赦なく追撃。風圧で怯む私にサマーソルトで吹き飛ばすと同時に、毒を打ち込む。雌火竜か貴様は。
……って、言ってる場合か。ヤバい、毒で体力が――――――、
『グヴォォォ……ギェッ!?』
「させるかぁっ! 粉塵だ、起きろビスカ!」
だが、毒と追い打ちで力尽きる寸前の私を、ヴリアちゃんが救ってくれた。閃光玉でイャンガルルガを足止めして、漢方の粉塵と生命の粉塵を撒いてくれたのである。何と有難い事か。
「――――――ハァッ! ふぅ……助かったよ、ヴリアちゃん」
「気を付けろ。こいつは鳥竜種というより、サイズの縮んだリオレイアだと思って接した方が良い。毒も麻痺も減気も、音爆弾さえも物ともせずに、素早い動きで相手を翻弄し、突進、風圧、咆哮で動きを封じて、突進やサマーソルトで止めを刺す。それが“殺戮生物”黒狼竜イャンガルルガだ」
「なるほど……」
身軽で小柄なリオレイアか。
なるほど、確かにそんな気もする。嘴で啄む以外は、火球、風圧、突進、サマーソルトと、リオレイアの要素しか見当たらない。尻尾に毒あるし。その上、毒が効かず麻痺も減気も大して効果が無いとなると、罠で嵌めるか、それこそ昏睡させるしかないだろう。
しかし、大型の鳥竜種という骨格上、スタンにはそこまで耐性が無い筈だ。
ならば、盾で殴れる私が攻めなくちゃね!
「ヴリアちゃん、サイドをお願いね!」
「任せろ! スタンと眠りは頼むぞ!」
「言われるまでもない! おりゃあ!」
という訳で、私は盾で殴り付けるようにタックルをかました。イャンガルルガは眼が眩んでいる筈なのに割と正確に尻尾で攻撃しようとしてきたが、ヴリアちゃんが流れるような三連斬りを食らわせて阻止する。先ずシンプルに尻尾の先端を縦に斬り、その後に渦を巻くような連撃で頭と腹部を斬り裂き、怯ませたのである。
「ドラァッ!」
『ギャァッ!?』
さらに、力を溜めた打ち下ろしで尻尾を斬り飛ばした。
「流れるような剣捌きだね!」
「実際、“流斬り連携”って流派だしな。手数を重視した、属性ダメージや状態異常値を蓄積させる攻撃方法だよ。……それよりも!」
「任せんさい! ドワォッ!」
『ギギャォアッ!?』
そして、私の三連突きからの盾攻撃でスタンを決め、そのまま袋叩きにする。片翼を壊し、耳を削り、背中にヒビを入れた。しかも、起き上る前にシビレ罠で拘束。更なるダメ押しを食らわせる。
『グギャヴォオオオオオッ!』
と、シビレ罠を脱したイャンガルルガが激昂した。これだけボコられれば、流石にキレるか。最初からブチ切れだったような気もするけど。
「……落とし穴は使うなよ。怒ってる時のこいつは勘が鋭いからな。張っても、踏み抜かれるだけだ」
「分かった」
元より、捕獲する気なんぞ更々ないし、さっきのシビレ罠も偶々持って来ていた物だ。もしかしたらヴリアちゃんが持っているかもしれないが、それは然るべきタイミングで彼女自身が使えば良いだろう。
つまり、ここからが正念場という事である。怒り狂ったイャンガルルガの猛攻を掻い潜り、奴に手痛い反撃を食らわせ、2人で揃って止めを刺す。
見せてやる、私たちのコンビネーションを!
『ギャギャヴォオオオン!』
「「シッ!」」
予備動作が皆無に等しい、イャンガルルガの突進攻撃+サマーソルトのコンボ攻撃を、殆ど勘だけで避ける。私はステップで、ヴリアちゃんは前転で、だ。
『ギャヴォオオオッ!』
「フッ……オラァッ!」
『ギェアッ!?』
さらに、私狙いの飛び掛かりをジャストガードで防ぎ、カウンターの十文字斬りを食らわせ、怯んだ所に溜め薙ぎ払いを浴びせた。普通ランスは突く物だが、我が家の自慢の農作物パワーで元気モリモリな私なら、こうしてぶん回す事だって出来るのだよ!
『グヴォ……ッ!? ZZZzzz……』
よし、漸く睡眠状態になったか。ならば!
「ヴリアちゃん、爆弾ある?」
「Gがある」
「上等!」
豪快な寝息を掻くイャンガルルガの目の前に、4つの大タル爆弾Gが置かれる。何で2人揃って持ってたのかは私にも分からないが、これは派手な目覚ましになりそうだね。
「どりゃりゃりゃりゃりゃ!」
『ギャヴォオオオオオオッ!?』
「これも食らっとけやぁっ!」
という事で、突進攻撃による睡眠爆破でイャンガルルガを文字通り叩き起こし、次いでヴリアちゃんが前進しながら下段からの昇流斬り三連撃を食らわせ、瀕死へ追い込む。
『ゲギャギャギャアアッ!』
「させないよ! ……今!」
「死ねよやぁああああっ!」
『ギゲェァ……グゥ……!』
そして、最後の悪足掻きを仕掛けてくるイャンガルルガを盾で食い止め、その隙にヴィラちゃんの激昂したかのような溜め斬りがイャンガルルガの頭を直撃し、遂に息の根を断ち切った。
「終わったな」
「そうね。だけど……」
どうにか討伐したが、まさか斃れるまで殺そうとするとは、空恐ろしいモンスターである。とてもクック先生の親戚とは思えない。その鬼神の如き強さに畏怖を込めて「教官」と呼ぼう。
「……剥ぎ取りはどうする?」
「いらないからあげる。端材が出たら、それを頂戴。オトモにあげるから」
「分かった。それじゃあ、遠慮なく」
ヴリアちゃんが慣れた手付きで素材を剥ぎ取っていく。戦闘中の口振りからして、交戦するのはこれが初めてではないのかもしれない。後で詳しく聞かせて貰おうかな。
「ああ、それはそれとして――――――」
すると、素材を剥ぎ取り終えたヴリアちゃんが、私をスッと見据えて、
「――――――お前の家、白いガブラスが居るんだってな? 村長から聞いたぜぇ~?」
ヤバい、バレテ~ラ。ど、どうしよう……。
◆イャンガルルガ
「黒狼鳥」の異名を持つ凶暴な大型の鳥竜種。イャンクックの近縁種で容姿も似通っているのだが、こちらは黒く刺々しい甲殻と白い鬣を持ち、火炎液ではなく正真正銘の火球を吐く。鳥竜種なのに。
しかし、最大の特徴は、その異常なまでの凶暴性。生粋の狂戦士であり、托卵先のイャンクックを巣立ちと共に殺し、その後は目に付く生き物を殺して殺して殺しまくる。相手が格上かどうかすら関係なく、とにかく挑み掛かり、どちらかが死ぬまで執拗に攻撃する。その為、身体中が生傷だらけで、特に耳介が破損している場合が多い。
そんな生きる殺戮マシンなイャンガルルガだが、実は狩りや子育てがヘタクソで、イャンクックに托卵したり横取りしたりして生活している、意外な一面がある。でも殺す。
また、イャンクックに似て非なる者という事で、ハンターたちからは「教官」と呼ばれている。