翼を下さい   作:ディヴァ子

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白いガブラスが本当に居たら見てみたいですけドネ。


このココット山に

『きゅ~あぁ~♪』

 

 とりあえず、山彦を呼んでみる。

 やぁやぁ、僕ガブラス。元村人で今は災厄の使者をやってるよ。アルビノだけどね。

 さてはて、ヴリアとかいうふざけたヤロウから逃げ延びて、至る所はココット山。“ココットの英雄”が最後に訪れたとされる、伝説の地である。

 まぁ、ココット村から歩いて来れる距離なのだが(ココット村はこの山の麓にある)。ガブラスの脚で行ける距離なんて、高が知れてるからね、仕方ないね。

 ちなみに、僕の生まれ故郷っぽい「旧沼地(ジォ・テラード湿地帯)」や、僕がビスカと出会った「森丘(「シルクォーレの森」と「シルトン丘陵」)」も地続きであり、行こうと思えば何時でも何処にでもUターン可能ではある。どの道、何れにも暫く戻る予定は無いけど。あのUNK女に遭いそうだし。

 それにしても、良い景色だなぁ、ここ。今まで訪れた事のある狩猟地の数々を一望出来るし、何よりリオス種の巣窟となっている為、脅威となる中型モンスターが殆どいない。その分、リオス種から見向きもされない環境生物が繁栄しているが、僕にとっては餌にし易い奴が多いというだけの話なので、逆に嬉しい限りだ。幸い山頂から幾つもの水流が発生している為、水の確保も出来る。休火山らしいから、火山湖が水源だろうか?

 しかし、標高と生物相の関係上、登れば登る程に植生が貧弱なのが偶に傷。5合目辺りが森林限界(「森」が発生可能な限界の境界線)と言えば、その弱々しさが分かるだろう。身を隠す木々など望める筈もない。代わりに岩だらけなので、主にそれらを寝床にすべきか。芝生を刈り集めないとなー。

 ともかく、暫くはここで厄介になろうと思う。翼は未熟なままだが、何故か脚力が発達しつつあるので、そちらを活かして生きていきたい。

 

『きゅーん……』

 

 さーて、月夜に吠えるのはこれくらいにして、拠点を作るとしよう。

 僕たち翼蛇竜は本物の蛇と違い変温動物ではなく、恒温動物である。特に翼の奇網が発達していて、翼膜から逃げる体温を熱交換で維持したり、逆に余分な熱を逃がして身体を冷却したりと、自在に体温を調整出来る。

 つまり、翼が未発達な僕は通常個体よりも体温調整がヘタクソという事だ。哀しいなぁ……。

 だが、全く出来ない訳ではないし、何より家出の際に持ち逃げした、フルちゃんの羊毛やホロちゃんの羽毛がたんまりある。最初に手に入れたファンゴとモスの毛皮も健在である。これらを利用すれば、即席のコートとして使える。高山の寒さも、これで凌げるだろう。

 ……え? ガブラスがどうやって縫物をするのかって?

 引き籠りを舐めないで頂きたい。村が王国に誇る「裁縫侯(グランクチュリエール)」と呼ばれた、この僕にとって、コートを1枚作るくらいお手の物さ。

 そう、手が使えなければ、足と口を使えば……そぉい、出来た!

 

『きゅ~ん♪』

 

 うーん、フルちゃんの温もりを感じる寝間着だわ。僕の抜け殻を布地にした、中はモコモコ外は頑強な自信作である。他にもホロちゃんの羽毛を使ったお布団も作ったから、岩肌の冷たさと硬さに悩む事もない。

 ああ、外套もちゃんと作ったよ。ファンゴやモスの毛皮を外地にした、遮光性抜群のコートだ。もちろん、内側はフルちゃんのモコモコが付いているから、寒さもヘッチャラさ。我ながら素晴らしい出来栄えである。

 勝ったな、芝刈ってくる。岩に直寝するよりも温かくなるし、布団も長持ちするからね。

 という事で、コショコショコショ。隣の芝刈り~♪

 ――――――よし、集まったね。これで寝床として目星を付けた岩の隙間に敷き詰めれば……OK!

 というか、外套を纏っているとは言え、これだけガブラスがウロチョロしてるのにモンスターが襲って来ない辺り、この山の生態系が伺えるね。飛竜種を頂点とした、環境生物だらけの禿山じゃあ、こうもなるわな。モノブロスもいるらしいけど、それは森林限界より下の話だろう。8合目辺りのここらにサボテンなんぞある訳もない。そこら中にリオス種の巣があるし。

 それはそれとして、ご飯はどうしようかなー。草食種は見当たらないし、精々ランゴスタがブンブン飛んでいるだけ。ちょっとだけブナハブラも混じってるけど、それがどうした。

 ……ここはやっぱり釣りかな!

 毒霧で撃ち落としたランゴスタの腹袋を尻尾に括り付けて、近くの川へ垂らし――――――今ッ!

 

『きゅぁっ!』

『ピチピチピチピチ!』

 

 よーし、サシミウオが釣れた!

 続いてサシミウオ、またしてもサシミウオ、次は小金魚に黄金魚、カジキマグロに……スサノウオぉっ!

 良いね良いね、この調子でドンドン行こうか!

 

※この後、滅茶苦茶釣った。




◆ココット山

 ココット村の英雄たちが最後に立ち寄ったとされる狩猟地。ヒンメルン山脈に属しており、ミナガルデとココット村を隔てる境目でもある。
 かつては強大な古龍が君臨し、周囲に多大な影響を与えていたが、英雄たち5人組が決死の覚悟で挑み、たった1人の犠牲(英雄の婚約者)で討伐に成功したと言われている。その偉業はハンターという地位を大いに上げ、現在の礎を築いたが、同時に“ハンターは5人で組むと必ず犠牲者が出る”というジンクスまで生んでしまったらしい。真実は永遠にココット村の村長の胸の内だろうが……。
 ちなみに、山中では基本的にリオス種が優勢の生態系を形成しているが、何故かモノブロスが現れる事もある。何でや。
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