翼を下さい   作:ディヴァ子

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こんな街は嫌ダ。


不自由な街へ

 やー! 僕だよ、元村人の現ガブラス(アルビノ)だよ!

 ……さて、出だしからテンションが上がってしまって申し訳ない。

 何せ、西の都:ヴェルドに辿り着いたんでね!

 いやー、まさに城塞都市だねぇ。街全体が高い壁にグルっと囲まれてるし、何なら大砲だのバリスタだのがズラリと並んで要塞化してるし。

 まぁ、前にも言ったと思うけど、守られているのは富裕層が住む壁内の話。壁外のスラム街はあってないような存在として扱われている。

 ――――――昔はこんなんじゃなかったのになー。時の流れってのは恐ろしいね。そこまでの歳じゃないけどさ。

 

『きゅっ!』

 

 さぁ、行くぞ「シュレイド」!

 

『ケェエエン!』

 

 おお、良い返事だね、シュレイド。

 ……うん、このホルクの名前はシュレイドにしました。せっかくシュレイド地方に居るからね、あやかっておこう。単純に響きがカッコいいし。王国に栄光あれ~ってね。滅んでるが。

 余談だが、シュレイドの行動パターンは「連続ブレス解禁」「秘境大好き」「狩人を気遣う【回復】」の3つに絞った。他にも出来るっちゃ出来るけど、あまり選択肢が多いと咄嗟に動けないから、これくらいの方が良い。

 傾向としては、基本的に僕を補佐しつつ、自らも攻撃を仕掛ける感じにしている。手の届かない高さから釣瓶打ちにされるのだから、相手は堪った物じゃないだろう。何時ものガブラスとか言わない。自覚してんだから。むしろ、誰か僕を空へ飛ばしてくれ。

 ともかく、シュレイドの数十日間に及ぶ修行の成果が見られた為、いよいよ以てヴェルド入りを果たそう、という流れになったのである。

 しかし、それには生贄となる人間を見繕わなくてはならない。オトモならともかく、野生の小型モンスターが街に入れる訳がないからな。拠点はスラム街にするとしても、やはり買い物は中でしたいしね。

 そんな訳で、ヴェルドの壁外地区へレッツゴー!

 

『きゅきゅ……』

『クゥゥゥ……』

 

 うーん、分かっていた事だけど、汚い。掃き溜めとまではいかないが、こう……薄汚い。寄せ集めの材料で作った長屋は火が付いたら一気に燃え上がりそうだし、土が剥き出しの道路は雨が降ったら数分と経たず泥濘そう。そのせいか、そこかしこに泥や埃が掛かり、元の色が分からない程に汚れている。

 むろん、住人も中々に不衛生だ。継ぎはぎだらけの服は何日……いや、何十日と洗っていないのだろうし、髪も身体も煤けていて、まるでボルボロスである。あと臭い。汗や垢処か屎尿の始末もロクに出来ないのだろう。人口だけは多そうだからな、ここ。

 まぁ、住人の生活事情なんぞ、どうでも良い。必要なのは、野蛮でも聖人君主でもない、程々に目の濁った、幸せな人生を諦め切れない、そんな等身大の人間だ。特に若くて将来性のある少年少女を所望する。

 良い感じに騙くらかして、僕たちの駒として動いてくれる大人に育成をサポートするのである。

 つまり、今お探しの人材は“孤児”だ。身寄りの無い、孤独に震えている子供、居ないかな~?

 

「………………」

 

 おっ、居た居た。立て掛けられたボロ板の小狭い空間に縮こまっている、一際汚い濡れネズミが。骨と皮ばかりで分かり難いが、おそらく女の子だろう。年の頃は、10歳前後って所か。良いね良いね、調整し甲斐があるよー。

 誰も見ていない……というか、そもそも見向きもしてないし、早速お話しようじゃないか!

 

『きゅきゅ!』『クェン!』

「………………?」

 

 何だ君らはって顔だな。無理もない。アルビノのガブラスと赤黒いホルクが突然接触してきたんだからね。普通はビビる。

 だが、この子は既に心が死に始めているのか、首を傾げるだけで逃げ出すような気配は微塵もなく、ただ茫然とこちらを見詰めるのみ。大丈夫か君、感情ある?

 ――――――えぇい、もう面倒臭い、攫ってしまえ!

 

『きゃぷ』『ケェン』

「………………!?」

 

 こうして、僕は人生(ガブ生?)で初となる人攫いを経験する事となるのであった……。




◆ヴェルド

 西シュレイド地方で一番大きな街で、強固で武装化された壁に囲まれた城塞都市にして王都。共和制に移行した東シュレイドの大都市「リーヴェル」と違い未だに絶対王政であり、貧富の差も激しく、壁に守られた内部で暮らすのは金持ちばかりで、壁の外には危険地帯と隣接したスラム街が延々と広がっている。その上、周囲を森と山、海によって隔絶されている為、殆ど鎖国状態と言っていい。
 そんなお国柄のせいか、度々クーデターが発生しており、近い将来に国政が変わるかもしれないと噂されている。
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