翼を下さい   作:ディヴァ子

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今回は名も無き孤児の視点


閑話:開かれた未来

 わたしは誰だ?

 何の為に生まれてきた?

 誰が生んでくれと願った?

 

 ……わたしは、わたしを生んだ、この世の全てを憎む。

 

 だからこれは、攻撃でもなく、宣戦布告でもなく――――――わたしを生み出したお前達への、"復讐" だ。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『きゅきゅ!』『クェンクェン!』

 

 今目の前に、変な生き物がいる。

 ……わたしは名無し。誰でもない何かだ。生まれて間もない頃に捨てられ、名も知らぬ老人に育てられた。

 そして、数年前に天涯孤独となった。育ての親が死んでしまったのである。

 否、死んだのではない。殺されたのだ。心無い大人たちに。行きずりの犯行か、それとも過去に恨みを買っていたのかは分からないが、少なくとも“殺すつもりはなかった”なんて事はないだろう。あんなに滅多刺しにしておいて、間違いも何もあるまい。

 わたしは逃げた。無力で幼いわたしに出来る事は、それしかなかった。殺されるのが、死ぬ程に怖かったから。逃げて逃げて、同じような境遇の人たちが身を寄せ合う場所に辿り着いて、それでも溶け込む事も出来ないまま、呆然と生きてきた。

 しかし、わたしは今日この日まで、あの時の事を忘れていないかった。お爺ちゃんを殺したアイツらの顔、今でも覚えている。歳は食っているだろうが、見間違える事は絶対になかろう。あんな悪魔のような表情、忘れたくても忘れられない。

 だから、“これ”はチャンスだと思った。

 何だかよく分からないが、このモンスターたちは賢いらしく、様々な知識や知恵を授けてくれた。

 そう、ハンターになる為の基礎を。

 しかも、下手な人間よりも器用なようで、調合書も無く回復薬や鬼人薬に硬化薬などのアイテムを作ってくれた。

 さらに、今日はわたしに装備を作ってくれるという。流石に武器は無理だが、素材さえあれば防具を作る事など朝飯前であるらしい。

 というか、狩りその物も上手かった。上空から鳥がブレスを吐いてモンスターを撹乱しつつ、這うように忍び寄った蛇が毒で仕留める。動きに無駄が無く、新米のハンターよりも連携が取れていた。

 

『きゅきゅ!』『ケェン!』

 

 そして、出来上がったのが、この「ファンゴSシリーズ」。ヴァイクシリーズとよく似た海賊(山賊?)然としたデザインが特徴なのだが、彼らなりのアレンジが加えられており、全体的に赤黒く染まっているほか、妙に刺々しくなっている為、“山海の悪霊”といった感じに纏まっている。

 だが、見た目に反してマイナススキルの【悪霊の加護】が【精霊の加護】に書き換わっており、その上、何故か【龍属性強化】と【龍耐性】が最大値で付与されている。もちろん、【攻撃】や【底力】のスキルも付いているので、火力には事欠かない。まさしく肉を切らせて骨を断つ防具である。頭がフェイクじゃなくて良かった……。

 

『うきゅっ!』『ケェン!』

 

 後はお前次第だ、とばかりに見詰めて来るモンスターたち。

 

「………………!」

 

 ――――――なるほど、確かに彼らの言う通りだな。

 彼らは装備もチャンスもくれた。今までのわたしを捨て、これから“謎のファンゴシリーズのハンター”として名を上げて行けば、富と名誉に加えて、壁内の市民権も得られるだろう。

 想いだけでも、力だけでも、成し遂げられない事はある。

 わたしは秘めたる想いを忘れる事無く力を付けて、正々堂々と凱旋した上で、復讐を遂げてみせようじゃないか。

 わたしの敵は今、あの小高い壁の向こう側で優雅に肥え太っているのだから……。




◆名無しの少女

 とある貴族の娘だったが、政敵との争いに敗れた両親が命懸けで逃がし、ヴェルドの貴族に養女として拾われ育った。
 しかし、その貴族もクーデターによって殺され、完全に天涯孤独の身となった上で、スラム街に隠れ潜むようになった。
 ちなみに、そのクーデターに参加した平民は別の貴族に扇動されただけの捨て駒であり、少女の仇敵は今も壁内で贅を貪っている……。
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