翼を下さい   作:ディヴァ子

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お久し振りデース。


閑話:強く生きれる

 そして、時は過ぎ、わたしは成長した。ガブラスたちの予定通りに。

 念願の「猛進剣【猪突】」はもちろん、捕獲したアンジャナフの素材を使い、もう一振りの剣を手に入れた。それが「フラムエルシーカ」だ。防御力が少し心許なく、重量故に会心を出し難いものの、その攻撃力は折り紙付きであり、しかも僅かながら火属性も付いてくる、中々の一品である。行く行くはどちらも強化していきたい。

 防具も一部新調した。いや、新調したというか、既存のファンゴシリーズにジャナフシリーズを混ぜ合わせた。防御力は相変わらず少し低めだが、【火耐性】と【KO術】が付与され、【攻撃】が最大値まで発動しているので、メリットの方が遥かに大きいと言えるだろう。本当に良い腕だ。足と口で縫ってるけど。

 

『きゅ~ん……』

 

 流石の大仕事故にガブラスは疲れ果てて寝ている。ゆっくりと休んで欲しい。今回はホルスと狩りに出掛けよう。

 ……あれからも何度かクエストを熟しているし、ドスファンゴ程度なら難なく討伐出来るようになった。装備だけでなく、自分自身が更新されているのが実感出来る。

 もっと、もっとだ。あの糞共が巣食う壁内の中枢に入り込むには、富と名声が足りない。

 

『ケァン!』

「………………」

 

 だが、焦りは禁物である。欲に駆られて、良き急いだ奴から死んでいく。それが世の理だ。だから、慌てず騒がず、“その時”まで爪を隠し、牙を研ぐ。それがわたしのハンター道である。

 さて、今日は何を狩りに行こうか。

 

『クェン!』

「………………!」

 

 ホルクが持ってきた“それ”に、わたしは思わず目を見開く。

 

 

【ドボルベルク1頭の狩猟】

 

 

 “それ”がクエストの内容だった。

 

「………………」

 

 ドボルベルク。「深黒林」における最大の脅威にして、最強の大型モンスターである。砂漠地帯のディアブロスとほぼ同等のニッチに収まっており、危険度はドスファンゴやアンジャナフの比ではない。今回のターゲットは年若い雄個体とは言え、死力を尽くして挑まなければ、勝ち目は無いだろう。

 それをわたしに狩れと、ホルクは言っているのだ。……信用、してくれたのだろうか?

 

「………………!」

 

 ならば、育てられた身としては、応えなければなるまい。こう見えて、恩義は感じているのだから。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 「深黒林」でも、割かしスラムに程近いエリアにて。

 

『ボフゥ……!』

 

 早速、発見した。縄張り意識が強く、滅多に森の奥から出て来ないドボルベルクが、こんな人里近くに居るのは珍しい。喧嘩に負けたか、それとも……?

 何れにしろ、幾らまだ若いとは言え、こんな馬鹿デカい奴が傍に居ては、おちおち眠っても居られないのだろう。自分たちは安全な壁内で、暖かい布団に包まれながら眠っている癖にね。

 しかし、貧困街の連中に同情する気は無いし、守ってやる義理も無い。むしろ、もしもの時の囮として機能すれば御の字だろう。誰が死のうが、自分以外に悲しむ者はいない。それが貧困街である。

 

「………………」

 

 だから、わたしは狩りに集中する。あまりに距離が近過ぎて、奇襲は望めない。動けば直ぐにでも見付かるだろう。

 鍵となるのは、ホルクの毒だ。ドボルベルクは毒に弱く、浴びせれば即座に発症する上、持続時間も長い。そこにわたしの背負って来た「フラムエルシーカ」の火属性が加われば、かなりの体力を削れる。

 

「………………!」

『ブヴォッ!?』

 

 上空のホルクに目配せしてから、閃光玉を投げ付けた。突如視界を奪われたドボルベルクかがむしゃらに暴れまわり、周囲の木々を薙ぎ倒し始める。

 

『クァッ! ケァッ! グペェッ!』

「………………」

 

 そんなドボルベルクにホルクが容赦なく毒を浴びせ、その隙にわたしは罠を2つ設置する。少しでも拘束時間を稼ぐ為である。

 

『グゥゥゥ……グボォッ!?』

 

 よし、先ずは1個目、落とし穴に嵌まった。最大の弱点である頭を攻撃するチャンスだ。

 

「………………!」

 

 一連のコンボとジャストラッシュを叩き込み、片角に罅を入れる。ドボルベルクの角は脳に直結しており、根元から折ると即死するらしいが、そこまで望むのは高望みだろう。精々頭突きや突進の威力を軽減するくらいの感覚で良い。

 

『ケェエエエンッ!』

『ボルグゥ……グボボガガガガッ!?』

 

 さらに、落とし穴を抜け出したドボルベルクを、ホルクが龍属性ブレスで誘導し、シビレ罠を踏ませる事で再度動きを止めた。一方、わたしは拘束が解かれる前にドボルベルクの足元に大タル爆弾Gを2つ並べ、直ぐ様距離を取る。そこへホルクがブレスを吐いて起爆させ、ドボルベルクの角を完全に破壊した。ついでに瘤にも甚大なダメージを与える。

 

『ボルァアアアアアッ!』

 

 だが、そこはドボルベルク。そう簡単には倒れない。早速尻尾ごと身体を独楽のようにグルグルと回転させながら、こちらに迫ってくる。その後に待っているのは、大跳躍からの尾槌撃だ。食らえば、この装備でも一溜りも無いだろう。

 しかし、だからと言って逃げ続けるのは悪手である。明らかに迫る速度の方が早いし、下手に背を向けると、それこそ粉々にされる。

 ならば、どうするか。

 

「………………ッ!」

 

 わたしは意を決して、その渦中に(・・・・・)飛び込んだ(・・・・・)。慎重にタイミングを見極めつつ、一瞬の隙を突いてスライディング。足元に張り付く。

 そう、これこそがドボルベルクの弱点。デカ過ぎて、足元が疎かになりがちなのだ。特に戦闘経験が無いに等しい若齢個体はそれが顕著である。

 あとはもう、勢い故に止まりようのないドボルベルクを攻撃し続けるだけだ。

 

『ブルォッ!?』

 

 よしよし、脚を集中攻撃されてバランスを崩したな。盛大な勢いでスッ転び、弱点部位である背中の瘤をこちらに晒してくれる。遠慮くなく叩かせて貰おうか。

 

 

 ――――――グシャリ。

 

 

 盾の殴打で、瘤が潰れた。これで残るは、尻尾の破壊のみ。体力馬鹿なドボルベルクと戦うには、なるべく早くに部位破壊を完了したい。さもなくば、こっちが根を上げる事になる。

 

『ブォォ……!』

「………………」

『ボルファッ!?』

 

 堪らずドボルベルクが逃げようとしたので、閃光玉で足止めする。出来れば捕獲したいから、もう罠は使わないが、早期に決着を付けたいのは一緒。可能な限りダメージを蓄積させる。

 

『ブォッ!』

「………………!」

 

 ドボルベルクの尻槌が当たる。ガード越しとは思えない、凄まじい衝撃がわたしを襲う。

 だが、吹き飛ばされない。歯と足を食いしばって耐える。ここで仰天しては、更なる追撃で瞬時にあの世送りにされるに違いない。

 ――――――わたしは、死ねないんだよ!

 

『グルヴォアッ!』

「………………!」

 

 再び迫る尾槌をバックステップで躱し、ジャストラッシュを頭に叩き込む。

 

『グヴォォォ……!』

 

 その一撃で、ドボルベルクがダウンした。【KO術】様々である。尻槌に罅を入れられたし、そろそろ叩き壊せるだろう。

 

『……ブルォオオオオオオオオッ!』

 

 しまった、咆哮で固められた。マズい、頭突きが来る!

 

『ギャォオオオス!』『ブフォッ!?』

 

 ――――――ありがとう、ホルク!

 

「………………!」

 

 このチャンスを逃すまいと連撃を繰り出すが、中々倒れない。本当に馬鹿みたいな体力持ってるな。

 

『ブォッ!』

「………………」

『ブルヴォォォォォ……!』

 

 と、ドボルベルクがわたしを小突いて尻餅を付かせ、僅かに後退したかと思うと、そのまま飛んできた。回転では埒が明かないと考えたのか、巧みな重心移動で跳ね上がり、尾槌撃に繋げてきたのだ。経験は少ないが、天性の勘があるのだろう。

 クソッ、これは避けられない。流石のホルクも、あそこまで跳び上がった相手を墜落させるのは無理がある。

 しかし、わたしは心底諦めないぞ。こうなったら、一か八かだ!

 

「……うぉおおおおおぁあああああっ!」

 

 わたしはわざと大タル爆弾を足元で爆発させ、空中へ舞い上がった。展開する前かつポーチ越しに行ったので、かなりのダメージが入ったが、致し方あるまい。

 この反撃を繰り出すには、ドボルベルクを斃す為には、これくらいは必要な痛みだ!

 

「だりゃああああああああああああっ!」

『グヴォァアアアアアアアアアアアッ!?』

 

 そして、爆風に乗った状態で放たれた盾の一撃は、ドボルベルクの尾槌を完全に破壊し、空中から叩き落してやった。

 

『ギャォ!』「………………!」

『ブルォッ!? ……ZZZzzz』

 

 さらに、着地点にシビレ罠を打ち込んで発動し、捕獲用麻酔玉で昏睡状態へ追いやった。

 そう、わたしは勝ったのである。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 わたしは咆哮した。これ程に嬉しい事は、今まで無かったから。




◆ドボルベルク

 尾槌竜の異名を持つ、大型の獣竜種。飛竜種で言うディアブロスに相当する巨大で狂暴な草食獣で、強い縄張り意識を持ち、侵す者を積極的に排除しようとする。
 背中に栄養を溜め込む瘤があり、寒冷期はその栄養を頼りに冬眠する。あまり動かないからか身体に苔が生えていて、偶にそれを自ら食する事もあるという。非常食なのかもしれない。
 異名の由来にもなっている尾槌の威力は凄まじく、外敵排除はもちろんだが、餌の確保の為に木々を薙ぎ倒す行為もよく見られる。その凶悪な一撃は、大地を叩き割る事さえ可能だ。
 ちなみに、頭に生えている立派な角は脳に直結……というより、根元が密着している為、折れると即死するという、謎の弱点があったりする。どうしてそうなった。
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