エメス・インフニティア。憎いアイツの息子。
だが、似ても似付かない上に、気障な程に話し掛けてくる。きっと口から生まれてきたのだろう。
「………………」
しかし、何故かそれが嫌じゃない。あれから数日置きぐらいの間隔で訪ねて来て、夕餉を共にしたり、夜話に更けたりするのだが、それを楽しみにしている自分が居る。
わたしは一体、どうしてしまったのだろう。高が同い年の異性に話し掛けられたくらいで心を許す程、乙女だったとでも言うのか?
……そんな訳がない。こんな何処の馬の骨とも分からない小娘に懸想するなんて。
おそらく、同じくアルビノであるガブラスと重ねて見ただけだろう。そうに決まっている。
「やぁ、アイルさん。今日も来ちゃったよ♪」
「……いらっしゃい」
その筈なのに、何でこんなにも流暢に話せるのか。落ち着け、わたしの心臓。こいつはアイツの息子なんだぞ!
『きゅーん』『クェーン』
そんな目で見ないでくれるかな、ガブラスとホルク。凄く居心地が悪い。わたしが悪かったから、頼むから止めて。
「どうかしたのかな?」
「……何でもない」
何でだ、何でここまで……。
「もしかして、具合が悪いのかな?」
うん、主にお前のせいでな。この苦しみを何とかして欲しい。もしくはお前も味わえ。
「……うーん、それじゃあ、今日は出直した方が良いかな?」
あっ……、
「では、また何時――――――」
「……待って!」
しまった、つい袖を掴んじゃった。気を遣って帰ろうとする男を捕まえるなんて、恋する乙女か、わたしは。
……いや、恋かどうかは知らないけど、普通に女だわ、性別的に。そこを否定するのは、流石にどうなのよ?
「「キャ~♪」」
張り倒そうかな、あのメイド姉妹。
「まぁ、そう言うのなら……」
エメスはわたしの意を汲み取って、食卓に着く。
「……やっぱり、押し付けがましかったかな?」
「そんな事、無い……」
それは本当。何でかは自分でも分からないけど。
「でもね、君に会いたかったという思いに、嘘は無いんだよ」
「………………?」
「だって――――――」
すると、エメスが「これぞ司令官!」みたいな感じに手を顔の前で組み、さっきまでのベビーフェイスが嘘のように真面目な顔になって、
「
「えっ……?」
誰だ、それは?
「ボクの父を殺したいんだろう? ……いや、タマリスク家の執事だった、エルガント・ミシュライアの敵討ち、かな?」
「坊ちゃま!」「何故そこまで!?」
滔々と語るエメスをメイド姉妹が止めようとしているが、最早そんな事など関係なかった。
――――――わたしは一体今、何を聞かされた?
こいつは何を知っていて、わたしは何を忘れていて、これは……
『フシャアアアアッ!』
と、ガブラスがエメスたちを威嚇した。今すぐに帰れ、厄介事を持ち込むなと。
「……確かに早急過ぎたかな。また来るよ、アルメリア。
そして、わたしが混乱から覚める前に事態は終息して、エメスとメイド姉妹は帰って行き、わたしたちだけが取り残された。
……わたしはこれから一体、どうすれば良いんだ?
◆アルメリア・タマリスク
名家「タマリスク家」の令嬢。現在は行方不明となっており、当主暗殺によってタマリスク家も没落して現存していない。暗殺騒動の際に執事のエルガント・ミシュライアと共に雲隠れしたと言われているが、真実は闇の中である。
ちなみに、インフニティア家とは交流があり、アルメリアが物心も付かない幼少時に、エイル・インフニティアと顔を合わせている。もちろんアルメリアは覚えていないが、2歳年上のエイルの方はしっかりと覚えており、父親には内緒でずっと捜索を続けていた。
そして、遂に努力が報われ、2人は運命の再会を果たした。