翼を下さい   作:ディヴァ子

30 / 52
それは開いてはいけないパンドラの箱……。


閑話:絶望の扉

 アタシはヴリア・トラスナーガ。ココット村出身の、凄腕女ハンターだ。趣味はガブラス狩り。アタシの左目を奪った奴らを嬲り殺しにしてこそ、生を実感出来るのさ。

 そして、ある日アタシは出会った。運命の怨敵(あいて)と。

 それは、真っ白なガブラスだった。それに加えて紅桃色の瞳を持っているので、先ず間違いなくアルビノの個体である。

 

 ……何と素晴らしく、貴重(レア)なガブラスだろうか。

 

 ガブラスはご存じの通り黒系統の体色で、(一応腹側は黄ばんでいるが)白い部分は皆無と言って良いだろう。当たり前だ。野生下で目立つ事は自らを危険に晒す行為であり、特に様々なリスクを抱えるアルビノが生き続けるのは、容易な事ではない。

 しかも、何故か翼だけが未成熟で、よちよち歩きしか出来ない、選ばれし欠陥品(ポンコツ)である。翼蛇竜という分類は何だったのか。飛べないガブラスは、ただのツチノコだろ。

 だが、そのガブラスは生きていた。まさかまさかの、我が好敵手(ライバル):ビスカ・メルホアールのペット枠として。何でだよ。おかしいだろ、それは。

 だから、その間違いを是正してやろうとしたら、どういう訳か総スカンを食らった。何でぇ?

 特にビスカ、お前がそっち側なのはおかしいだろ。自分の背中に刻まれた、毒牙の痕は飾りじゃないだろうが。それを言ったら、出会った時から餌にされそうだった、メルホアも同じなのだけれど。今すぐハムにしてやろうか!?

 結局、ビスカたちの妨害のせいで白いガブラスには逃げられてしまい、悶々とする日々を過ごす事になった。

 しかし、チャンスは何処に転がっているか、分からないもの。

 シルクォーレの森に出現したイャンガルルガの討伐報告と素材納品の為、漸く再開発されたココット山の抜け道をえっちらおっちら、遠路遥々とミナガルデに訪れたのだが、

 

「ねぇ、ハンターさん。ちょっとお願いがあるんだけど」

 

 受付嬢のベッキーから内密のクエストを依頼されたのだ。

 

「……実はワタシ、ギルドナイトなんだけどさ」

「いきなりぶっちゃけたな。まぁ、実は前から薄々勘付いてたけど」

「あらそう? なら、話が早いわ。……あなた、メラル・アイルールって知ってる?」

「ああ、何か張り紙されてたな。確か誰かに殺されたんだけっけか?」

「そうそう。―――――その犯人、実は白いガブラスだって知ってた?」

「何だと!?」

「詳しく聞きたい? なら、聞かせて……あ・げ・る♪」

 

 その内容というのが、アルビノ・ガブラスの狩猟依頼だった。ベッキー曰く、メラルというハンターを毒殺して、そのまま何処かへ逃亡したのだとか。そもそも何でガブラスなんぞ近くに置いていたかと言うと、怪我した所を保護した、事実上のペットだったんだとか。恩を仇で返すとか、酷い話である。

 やはりガブラスは敵だな。世の為、人の為、アタシの為にも、全力で狩らねば!

 

「一応、ヴェルドの方で目撃情報が出てるらしいけど、そっちでも優秀なハンターのペットに成りすましてるみたいだから、中々手が出せないのよ」

「……貴族か」

「そ。だから、令状は渡すけど、なるべく手早く、強引にでも始末して頂戴な♪」

「へいへい、難癖を付けられる前に、ってね」

 

 密命とは言え、ギルドナイト直々の依頼だ。公式がガブラス狩りを認めたと言っても良いだろう。

 だが、貴族が後ろ盾に付いているとなれば、話は変わってくる。西の要塞都市:ヴェルドは、シュレイド王国時代の悪しき風習が根強く残っており、貧富の差が凄まじく、貴族が政治の全てを牛耳っていると言っても過言ではない。当然、貴族とは一定の距離を取っているハンターズギルドとしては、色々と遣り難い土壌が出来上がっているのだろう。

 そこでアタシの出番って訳だ。ハンターとして紛れ込んで、情報をしっかりと集めてから、一気に片を付ける。煩い連中から追及される前に逃げ出すって寸法である。流石に門番や支部ギルドくらいなら、「ギルドナイトの依頼」で誤魔化せるからな。何なら今の飼い主も消せば良い。その為の許可証も今、手元にある。

 悪魔のように細心に、天使のように大胆に。最終的に勝てばそれで良かろうなのだ。

 しかし、ここでも問題が起きた。

 

『ぎっ……!』

「この時が来るのを、夢にまで見たぜぇ!」

 

 出だしまでは良かったんだよ。扉が開くと同時に「バレットシャワー・蛇改」の散弾でアルビノ・ガブラスを蜂の巣にして、ギルドナイトの令状を飼い主に見せびらかしつつ、止めを刺そうとした。アタシの邪魔をする事はギルドへの反逆であり、万死に値する事だと教え込み、首尾よく始末を付けられる……筈だったのに。

 

 

 ――――――バゴォオオン!

 

 

 アタシの「バレットシャワー・蛇改」が、壁に縫い付けられた。ガブラスの飼い主である、アイル・パーカーが投擲した、「蛮顎剣フラムシーカ」の盾によって。

 嘘じゃん。何でマスターランク装備が上位武器に弾かれちまうんだよ。

 つーか、それ以前に投げた盾でライトボウガンを壁にめり込ませるとか、人間業じゃないんだが……。

 

「テメェ、どういうつもりだ、ハンター:アイル! これはギルドナイトからの依頼だっつってんだろ!?」

「知るか、死ね。わたしから奪う奴は、誰だろうと縊り殺してやる!」

「うわぁあああい!?」

 

 だ、誰か助けてー!




◆バレットシャワー・蛇改

 「ショットボウガン・蛇」系統のマスターランク武器であり、究極化の一歩手前に位置する名品。散弾や放散弾に毒弾を速射で撃つ事ができ、【攻勢】スキルと相性が良い。リロードこそやや遅いものの、少ない反動とブレの無い射撃が約束されており、攻撃力も高い為、癖のないライトボウガンとして一定以上の人気を保っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。