燃え盛る大地。響く悲鳴。轟く咆哮。巨大な影。闇よりも暗い、漆黒の古龍。
『ゴギャアアアヴォオオオオン!』
それは避けられぬ死、宿命の戦い、舞い降りる伝説。
嗚呼、彼の者は正しく――――――、
◆◆◆◆◆◆
『きゃうっ!』
嫌な夢を見た。最近は見ていなかった、恐ろしい悪夢である。僕が死ぬまでの、終わりの始まりの物語。“奴”が現れた事で、文字通り僕は何もかも失った。故郷も、家族も、自分の命さえも。
そして、死臭に誘われたガブラスに啄まれる所で、僕の悪夢は終わる。
否、終わってなどいない。“奴”はまだ健在だろうし、何より僕自身が“奴”を許せないからだ。必ず復讐してやる。
『クァ?』
と、シュレイドが心配そうに見つめてきた。大丈夫だよ。実は全然大丈夫じゃないけど。こういう時は、そう言って誤魔化すものさ。
しかし、何だって今頃になって、あんな悪夢を見たのだろう。折角、平穏無事な生活を手に入れたというのに、最悪の気分である。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくぅ~っ!
よし、こんな時は!
「……あっ、アイルだ。……久し振り、シュレイドも」
『うきゅあ~』『ケァケァッ!』
インフニティア邸にお邪魔してやるぜ!
……相変わらず言葉がたどたどしいなぁ、アルメリアよ。会話出来るだけマシなのかもしれないが。
「おやおや、アイルくんたちじゃないか。元気そうで何より」
エメスも相変わらず腹に一物抱えてそうな笑顔ですね~。今度は何を企んでいるのやら。
「……今からご飯だけど、食べていく?」
『『イェーイ!』』
「……素直で宜しい」
そう言えばアルメリアの奴、料理がかなり上手くなったんだよね。ガブラスである僕に負けるのが悔しくて頑張ったらしい。今ではそこらの料亭よりも旨い飯を作れる。雇った料理人に任せず自分で作っちゃう辺り、貴族の奥方になってもハンター時代の習性は治っていないみたいだな。マジで美味しいから別に良いけど。
という事で、頂きま~す♪
ちなみに、今日のメニューは「火竜の夫婦ロースト」「トロサシミウオのマリネ」「千年米のライス」「ロイヤルチーズ入りサラダ」「黄金芋酒」。結構な金が掛かっているけど、大体全部アルメリア自身が狩ってきた物であり、実質的に只同然だ。それで良いのか貴婦人。
「そう言えば、
宴もたけなわといった所で、エメスが質問してきた。言うまでもなく、アリス(ヴリア)とベッキー(メラル)の事だろう。
『きゅあ!』
紙に書いて説明してやった。
とりあえず、アリスは滞りなくミナガルデの受付嬢を務めている事、ベッキーは今も爛れた生活を慎ましく(笑)続けている事を伝え、ついでに今後の予定も書き記していく。
僕としては、そろそろベッキーを処分しても良いと思うんだけど、どんな遣り方が相応しいかねぇ?
「……ドリスハンバーグを食べさせながら命乞いさせるとか?」
君も言うようになったねぇ、アルメリア。人の命を何だと思っているんだか……。
「ギギネブラと融合させて見世物にするのも面白いかもね」
エメスもとんでもない事を思い付くなぁ。尊厳とは。
「冷凍してから輪切りにして、額縁に飾るとか?」「大岩と合体させて名所にするのも良いですわね」
おい、メイド姉妹。気色の悪い美術展を開催しようとするんじゃない。絶対に客足が……あるかもな~。
『クルァッ!』
だが、そんな愉しい会話も、ハーケンの齎した“緊急の報せ”によって中断と相成った。
「――――――“彼の地に伝説が舞い降りた。運命の戦争が始まる”、だと?」
それは、「禁忌」が舞い降りた証。避けられぬ死の運命が、押し寄せてきた。
◆黄金芋酒
滅多に手に入らないと言われている、高価なお酒。「酒の王」とも称され、名前だけなら一番高そうな「ブレスワイン」よりも高級な品物である。
と言うのも、作り方を知っているのがよりにもよってチャチャブーたちなので、彼らから奪い取るか、アイルーたちに頼み込んで仕入れるしかない。
むろん、アルメリアは自力で強奪してきた。どうだ、これが貴婦人の嗜みだ!