「ぐぉっ!」
アタシ――――――アリス・イワン・ダラードは、ミラボレアスのテールスイングで吹き飛ばされた。ガードしても防ぎ切れない、凄まじく重い一撃である。
「アリス!」
アタシがホームランされたのを見て、ビスカが叫ぶ。アタシの本名を言わないでくれているのは有り難いが、他人の心配している場合かよ。
――――――ゴヴォオオオオオオッ!
「くっ!」
思わずと言った感じで駆け寄ろうとしたビスカに、ミラボレアスが爆炎を浴びせ掛ける。ギリギリで盾が間に合ったが、それでもかなりのダメージが貫通しているようだ。
「どりゃあああっ!」
『グヴァゥゥゥッ!?』
しかし、更なる追撃はエイデンの放った滅龍弾によって中断された。
「くたばりゃあっ!」
さらに、怒りに燃えるベッキーが、移動式速射砲でドカカカと、弾が尽きるまで撃ちまくる。ミラボレアスの外殻は、最初こそまるで刃が立たない強固だったものの、流石にこれだけ食らわせていると少しずつながら、傷付いていった。涙ぐましい努力とか言ったら殺す。
「フンッ!」
「でぁっ!」
『ギャヴォオオオッ!』
そして、ノアが剣で斬り付け、アルメリアが盾でぶん殴って、更にミラボレアスが傷付いた。うーん、痛いよねぇ、あのパンチ。それと同等の威力を発揮しているノアとか言う野郎も、相当なパワーの持ち主だな。胸の辺りの甲殻が一部だけど砕けちゃったよ。
だが、調子に乗っていられるのもそこまでだった。
『……グヴォァッ!』
「ぐぅっ!?」
胸殻を砕かれた事がよっぽど腹立たしかったのか、急にミラボレアスがアルメリア1人に狙いを定め、傷口に押し付けたのである。
「ぐぁあああああ!」
すると、傷口が朱色に燃え上がり、強烈な熱気がアルメリアを襲う。少しずつだが防具が融け始め、彼女ごと一体化しようとしていた。
『きゅあっ!』
『クァアアアッ!』
『ギャヴォァッ!?』
しかし、完全に焼き付けられる前に、アイルの指示でシュレイドが龍属性ブレスを吐いて、ミラボレアスの右絵を狙撃。危うい所で、アルメリアは解放された。
『ホロロ!』『ケァッ!』
「……助かった!」
さらに、ホロホルとハーケンが回復薬Gをぶっ掛ける。命拾いしたな、アルメリア。
……それにしても悪趣味な奴だな、ミラボレアス。あの胸殻、他の部位に比べて妙に脆いと思ったら、返り討ちにしたハンターを防具ごと焼き付けてたのかよ。マジで化け物だぜ。
だが、鎧が剥がれているという事は、弱点が丸出しってこった。ぶっ貫いてやるよぉ!
「ビスカ!」
「ヴリア!」
アタシとビスカは、殆ど同時に踏み出し、ミラボレアスの胸に突撃していた。どさくさに紛れて、遂に本名で呼びやがったな、テメェ!
『グルゥゥゥ……グギャヴォオオァアアアアアン!』
と、胸を突かれたミラボレアスが特大の咆哮を上げ、何と空へ舞い上がった。まさか、逃げるつもりか?
「退いたんスかね?」
その様を見たエイデンが、ポツリと呟く。
しかし、
『きゅぁあああああああっ!』
突如、アイルがけたたましく吠えた。まるで、今すぐ隠れろ、と言わんばかりに。
「……退け!」
次いで、アルメリアが瓦礫を目指して走り出した。これはもう、嫌な予感しかしない。
『グルルルル……!』
ほぉら、振り向いて口内に爆炎を灯してるよ、ミラボレアスが!
「アリス!」
「分かってるよ!」
「やばやばやば!?」
もちろん、アタシたちも駆け出した。
「……はしゃぐのはまだ早いな!」
「走るぞ!」
エイデンとノアも、走る走る。
そして、全員が奴に背中を見せた、その瞬間。
――――――バヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
ミラボレアスが、広場全てを呑み込む程の、とんでもない裂火炎を吐いてきた。
◆エイデン
新大陸へ向けて派遣された、第5期調査団の陽気な推薦組。現大陸で「我らの団」の看板娘に現を抜かしていた「筆頭ルーキー」と同一人物でもある。お調子者な性格ではあるが、ギルドの特殊任務を担う程の実力者であり、古龍級生物処か古龍すら討伐出来る凄い奴だったりする。それでもやらかす時はやらかすが。
実はモンスターによって故郷と両親を失ったという暗い過去を持っており、その後引っ越したティンデン村で師匠となる「ジュリアス(筆頭リーダー)」と出会い、様々な経験を経て今に至っている。