翼を下さい   作:ディヴァ子

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プーギーとモス、何処で違ってしまったノカ……。


この大地に

 やぁやぁ、皆さん、こんばんは。最近アルビノなガブラスに転生した、元村人だよ。

 さてさて、何だかんだで森を彷徨い歩き、外の世界を目指していた僕だが――――――遂に、木々の切れ目が見えて来た。

 

『きゅきゅきゅっ!』

 

 未だに開かない翼(笑)と後ろ脚を一生懸命に動かし、ダッシュする事、数瞬。突如として視界が開け、広大な丘陵地帯に出た。小高い丘々の麓には樹木が殆ど見られず、生える草も短い。縦横に幾つもの小川が流れており、せせらぎをメロディーに島縞模様の草食竜「アプトノス」たちが眠りに着いている。

 何とも喉かで、壮大な光景である。まさに「これから始まる物語」って感じ。

 昼間に見られれば、それはそれは雄大なのだろうが、紫外線に弱い僕には無理な相談なので、せめて満点の星空と丘陵のシルエットによる夜闇のコントラストを楽しむとしよう。うん、とっても綺麗。

 ……まぁ、それはそれとして、ご飯を探そうかな。

 幸い岩場に隠れ家は幾らでもありそうだから、成長を促す意味も込めて、ここは思い切って大物を狙ってもいいかもしれない。

 そう、今回の獲物はアプトノスである。大人しい性格だが、体格だけならランポスよりも大きいので、相手にとって不足は無いだろう。

 もちろん、寝込みを襲うんだけどねッ!

 

『かぷっ!』『フォッ!? ……グムゥ』

 

 という事で、他の個体よりも少し離れて寝ていた、哀れなぼっち君を毒殺。成長に伴い僕の毒も強化されているらしく、今や劇毒レベルの威力を誇る。当然、眠っていたアプトノスに耐えられる筈もない。一瞬にして絶命ですよ。

 さーて、今夜は今までで一番に豪勢な晩餐を楽しむとしようか!

 

『チャーオッ!』『ハーオハーオ!』『キャキャーッ!』

『きゅぅ……!?』

 

 だが、いざ実食と洒落込もうとした瞬間、奇面族の「チャチャブー」に襲撃された。僕の仕留めた獲物を横取りするつもりだろう。

 チャチャブーは小さな体格に反して身体能力に優れており、しかも武器を使う知能もある。集団ともなれば、中型モンスターでさえ脅かす、恐ろしい獣人種だ。実際、たった1回の鉈攻撃で、僕は背中に致命的な重傷を負ってしまった。食事を優先したからか、それ以上の追撃は無かったが、滅茶苦茶に痛い。

 クソッ、僕のご飯をガッツキやがって。精々毒に中って死んでくれ。

 

『『『ギョェーッ!』』』

 

 案の定、僕が草葉の陰に逃げ込んだ頃、チャチャブーたちの断末魔が響いた。毒入りの肉を腹いっぱいに平らげれば、そうなるさな。ガブラス程度の毒なら自前の解毒薬で何とかなると思ったのだろうが、詰めが甘かったね。

 だけど、弱ったな。奴らが騒いだせいで他のアプトノスは逃げてしまったし、何より背中の傷が深過ぎる。自己再生する前に、出血多量で死んでしまうだろう。

 ……うぅ、せめて死ぬなら、最高の晩餐を楽しみたかった。

 と、その時。

 

『プギィ~』

 

 鴨が葱――――――否、豚が茸を背負ってやって来た。ペットとしても人気な小動物、「プーギー」である。豚の次が猪で、締めが子豚かよ。魅惑的なピンクの服を着てるし。

 だが、見た目通りに子豚さんであり、その身は若々しくほろ甘いに違いない。最後の晩餐とするのに相応しい肉料理であろう。

 

『……くっ!』

 

 駄目だ、僕には出来ない。

 僕は生前、プーギーを飼っていた。アルビノ故に引きこもりがちで、友達らしい友達のいなかった僕にとって、その子は最高の心友だった。

 彼女が今、何処で何をしているのかは分からないし、あの災禍を生き延びれたのかも分からないが――――――僕には、プーギーを取って食うなど、とてもじゃあないが、出来ない。

 それは僕が僕たる最後の砦であり、唯一残った人間らしさなのだ。

 

『きゅー!』

『プゥー?』

 

 そのプーギーは、僕が威嚇しても不思議と逃げず、じっとこちらを見詰めてくる。周囲に主人は見当たらないが、彼……否、彼女もまた飼い豚であり、危機感が足りていないのかもしれない。

 

 ――――――ただまぁ、プーギーに最期を看取って貰えるなら、まだマシ、かな?




◆チャチャブー

 非常に凶暴な獣人種の小型モンスター。奇妙な仮面を被る事から「奇面族」の異名を持つ。決して「奇面組」ではない。
 第一印象は、小柄な体躯と奇妙な仮面に大きな鉈や斧を持っているという、不気味ながらも何処かコミカルな出で立ちだが、実際は体格に見合わぬ怪力の持ち主であり、攻撃力がブルファンゴらの比ではなく、大型モンスターとの戦闘中でも構わずに、横槍という名の致命傷を叩き込んで来る危険なモンスターである。まさにモンハン界のチャッキーと言える。
 一応、仮面や道具を作る事からも分かる通り、高い知能と独自の文化を持っているのだが、排他が行き過ぎて野蛮化している節がある。罠を開発する事もあるが、何の為に使うかは考えるまでも無いだろう。
 幼少時はそこまで凶暴ではなく、聖人の儀式である“自分だけの宝物(仮面)探しの旅”に出たのを境に蛮族化する為、その間に人間と仲良くなる個体も居るには居るらしい……が、オトモにしたらしたで、同族だろうと容赦なく嬲り殺しにする辺り、血は争えないのかもしれない。
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