「撃てぇ!」
――――――ドン! ドドン! ズドドドン!
覚醒したミララースに、空から大砲が撃ち込まれる。龍識船を筆頭にした無数の飛行船が援護に駆け付けたのである。凄まじい火力が釣瓶撃ちされ、次々とミララースに着弾していく。大型モンスターはおろか、古龍でさえも粉微塵に出来る程の威力はある。
だが、相手はミララース。この程度では死なないだろう。
――――――キィイイイイイイイイイインッ!
それ処か、ミララースはとんでもない反撃をして来た。背中の棘から無数のビームを乱射したのだ。お前、それでも生物か!?
『ギャヴォオオオオオッ!』
しかも、口や尻尾の先端からもビームを発射。ついでに流星群まで降らせ、龍識船をも撃墜した。大破こそしてないが、暫くは飛べまい。他の飛行船に関しては……考えない方が良いだろう。
そして、その脅威がこちらにも向いてきた。
「ぎゃあああっ!」
「ぎぇえええっ!」
「ぶげぁああっ!」
大地から噴き上がるマグマ、ビームと隕石の雨あられが、討伐部隊を次々と血祭りに上げる。防護壁も一時凌ぎにしかならず、直ぐ様溶断されて蒸発した。
「だりゃああっ!」
『ギャヴォァッ!?』
しかし、ハンター側もやられっぱなしではない。アリスから託された「蛇槍【ヴリトラ】」を構えたビスカが突撃し、猛毒を注ぎ込む。
すると、一瞬だけビームが火炎に戻り、ミララースも少しだけ怯んだ。……やはり、こいつの弱点は毒と龍属性か!
だが、どうやって伝えれば――――――、
「全員、毒を持て! 無い者は龍属性の武器を使用しろ! それが奴の弱点だ!」
『………………!』
間を置かず、アルメリアが僕の気持ちを代弁した。流石は僕のチームメイトだぜ!
よーし、殺せ殺せ、ぶっ殺せぇええええええええええええええええええええぇっ!
「食らえ!」
「死ねぇ!」
「くたばれ!」
「王国の名の下に!」
「ぶち抜くわよ!」
「オレの筋肉を食らえ!」
「ドーッハッハッハッ!」
「バーッハッハッハッ!」
アルメリアを筆頭としたハンターと騎士たちの猛攻が入る。周囲からも毒弾や滅龍弾が撃ち込まれていく。皆が皆、決死の覚悟で挑んでいる。
『キュアアアアッ!』
『ケァアアアアッ!』
『ホロロロロァッ!』
むろん、僕たちも劇毒と龍属性ブレスを叩き込む。ホロちゃんでさえ攻撃に参加し、ダメージに貢献している。まさに全力全開全身全霊の特攻劇である。
『グヴァァァヴォオオオオッ!』
しかし、これだけの連撃を受けても、ミララースは斃れない。確かに毒と龍属性が効き、全身に傷が付いて、マグマの血が噴き出しているが、まだ生きているのだ。正真正銘の化け物だな!
「舐めんじゃないわよぉおおおっ!」
と、墜落し動けない筈の龍識船が突っ込んで来た。浮力に使うガスを爆発させ、それを推進力にしたのであろう。血だらけの竜人族の女性が、物凄い形相で舵を取り、ミララースを撥ね飛ばした。龍識船は完全に大破したが、ここでひっくり返せたのは大きい。
『グギャヴォオオオオオッ!』
いよいよ死が近付いて来たからか、ミララースがやたらめったらに火を吹いた。
だが、さっきまでのビームの面攻撃に比べれば遥かに隙だらけだし、威力もずっと劣っている。僕たちを止めるには、まるで火力不足だぞ!
「……使え!」
『きゅあっ!』
アリスがありったけの龍滅弾が詰まったポーチを投げ渡してくれた。ベッキーが持っていた物だろう。有難く使わせて貰うぞ!
『クェアアアアアッ!』
シュレイドも道を切り開いてくれている。彼の龍属性ブレスで風穴を開けられてしまう程、ミララースの炎は弱火になっていた。
……さぁ、殺される覚悟は出来ているか、ミララース?
答えは聞いてない!
『キュルァアアアアアアッ!』
『グギャヴォオオオオオッ!?』
そして、龍滅弾ごと噛み付いた僕の毒牙が、ミララースの左目に死の劇毒を送り込み、
『ギギャアアアォァアアアアアア……ガァァ……グォ……ッ!』
遂に奴は斃れた。バタリと倒れ、ピクリとも動かない。命の灯が消え、元よりも更に黒ずんだ色になっている。
そう、僕たちはやったのだ。
『キャォオオオオオォンッ!』
僕の雄叫びと共に、全員が歓声を上げた。
◆龍識船
龍歴院が開発した巨大な移動要塞。「龍識船」「飛行商船」「集会酒場」の三つが連結した飛行編隊でもあり、食料や高度の問題でそれまで調査が出来なかった秘境を探索する目的で建造された。出来た当初こそ急拵え感が拭えない代物だったが、数々の修羅場を乗り越えた末に、バルファルクとも戦える程の空中要塞と化した。
酒場のマスターとその相棒は過去に鏖魔ディアブロスと一戦交えた事があるが、それが原因で現役を引退する破目になったらしい。
今回の戦いには商船仲間や現役時代の友人などに声を掛け、大船団で奇襲を掛けたが、流石に伝説の紅龍(しかも最終形態)相手には敵わず、手傷を負わせるに留まった。
ちなみに、あんな目に遭ったものの、何と相棒共々生還していたりする。女は強し。