翼を下さい   作:ディヴァ子

6 / 52
ヒイコさんみたいにランスを使ってみたいナァ……。


閑話:それが始まりの合図

「おーい、メルちゃーん、何処だーい?」

 

 その日、私――――――ビスカ・メルホアールは、「森丘」へ来ていた。ただし、何時もの採集クエストではない。些細な事で喧嘩をしてしまい、家出してしまった、我が家のマスコットたるプーギーの「メルホア(通称:「メルちゃん」)」を探しに来たのである。

 ライバル(自称)曰く、「森丘の方へプーキー泣きながら走って行った」らしいが、一向に見付からない。一体何処まで行ってしまったのだろう。

 彼女に何かあったら、私は……!

 

 と、その時。

 

『プー! プキーッ!』

 

 ああ、あの声は!

 発声源に向かって走って行けば、そこには魅惑的なピンク色の服を着た、可愛い可愛い子豚ちゃんが。間違いない、メルちゃんだ!

 

「メルちゃん! 探したよー! さっきは本当にゴメンね、何でもするから許してお願……い……?」

 

 しかし、歓喜のダッシュは、途中で止まってしまった。

 

『きゅぅ……』

 

 何故なら、メルちゃんの目の前に、この辺では珍しい、翼蛇竜「ガブラス」がいたからだ。それも真っ白な。半分開いた目が美しい淡紅色なのも鑑みるに、所謂「アルビノ」だと思われる。普通のガブラスは真っ黒なので、実に珍しい個体である。

 ただ、何者かに斬り付けられたのか、背中に深い傷を負っており、今にも息絶えそうな状態だった。

 

『プーッ! プゥーッ!』

 

 そんなアルビノ・ガブラスを助けて欲しそうに、必死に鳴くメルちゃん。その顔に、さっきまでの不機嫌さ欠片も見当たらず、彼女が心の底から懇願しているのが分かる。

 どういう風の吹き回しだろうか?

 メルちゃんは割と人見知りが激しいし、何よりガブラスには思う所(・・・・・・・・・)がある筈なのに。

 

「……はい、回復薬グレートだよ」

 

 少し迷ったが、私は回復薬グレートをポーチから出した。ガブラスは私にとっても(・・・・・・)苦い思い出のある相手(・・・・・・・・・・)だけど、メルちゃんの涙目には勝てないよ……。

 

『プゥ~♪』

 

 私が回復薬グレートをアルビノ・ガブラスに掛けると、メルちゃんが大喜びで擦り寄ってきた。もうさっきの事は許して貰えた、という事かな?

 

『……ZZZzzz』

 

 ガブラスの方も回復薬グレートで持ち直したようだし、帰るとしようか。

 

『プー』

「えっ、連れて帰れって?」

 

 すると、メルちゃんがガブラスを連れていけと鳴き出した。えぇ、本当にどうしたの……?

 まぁ良いや。このまま意固地に置き去りにしたらメルちゃんに嫌われそうだし、怪我が完治するまでは世話してあげよう。

 

 ……村長たち、怒らないかなぁ?




◆ビスカ・メルホアール

 ココット村在住のハンター兼農家。むしろ農業の方がメインまである。
 採取をメインに活動するハンターで、新人時代からコツコツと進めてきた貯金と研究の成果により、今では広大な農場を有する大地主になっている。特に「ドスビスカス」の品種改良に余念が無く、上位種にして変種である「ヴァリアビスカス」をココット村でも自生させようと画策している模様。もちろん、装備は「メルホアSシリーズ」で武器も「クラシーフレグランス」。
 子供の頃に出会ったプーギーの「メルホア」は一番の心友で、そのきっかけとなったガブラスは一番のトラウマである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。