プーギーの朝は早く、ガブラスは夜が早い。
……やぁやぁ、僕だよ、転生系アルビノ・ガブラスの元村人だよ。
ハンター(名前はビスカというらしい)の家にお邪魔して早数日。彼女らの生活リズムも分かって来た。
基本的にプーギーのメルちゃんが朝早くに目覚め、キッチンアイルーの手伝いをしつつ、寝坊助の主人を起こしてから、皆一緒にご飯を食べる。その後、ビスカはクエストに出掛け、メルちゃんたちは留守を務め、大体日が暮れた頃に晩餐を済ませて、皆揃って眠りに着くと、そんな感じである。
つまり、何を言いたいのかというと、僕とは生活リズムが真逆に近い、という事だ。夜型だからね、僕。
とは言え、完全に深夜帯が活動時間というとそうでもなく、どちらかと言うと猫(アイルーに非ず)に近いので、朝方と夕方に顔を合わせる事は出来る。頑張れば多少は起床時間を変更出来なくもない。
という事で、ここ数日は朝餉と夕餉を共に出来るよう、睡眠時間を調整している。朝ご飯の後に直ぐ様お眠りタイムに入り、暮れなずむ頃合いに目を覚まし、夕ご飯を食べたら暫しメルちゃんと遊んでから、朝まで眠る、というサイクルである。元々は完全に日が沈んでから夜中くらいまで行動し、丑三つ時には寝床を探して、後はずっと寝ている感じだったので、そこまで苦では無かった。
結果、僕は朝にメルちゃんに起こされ、朝食と夕食を共に供し、皆寝るまでメルちゃんと一緒に遊ぶという、非常に癒される時間を過ごしている。やっぱりプーギーは可愛いなぁ。
ちなみに、この家にはメルちゃんの他にも、フェニー(雲羊鹿「ムーファ」の子供)の「フルーク(通称:「フルちゃん」もしくは「フルフル」)」、薄紅グークの「サクラ(通称:「サーちゃん」)」、白毛フクズクの「ホロホル(通称:「ホロちゃん」)」と、様々なペットが棲み付いている。どの子も服を着せて貰い、帰って来た主人へ一斉に擦り寄る事からも、とても可愛がられているのが分かる。どうやらビスカはペットを大切に出来る人間のようだ。
だが、唯一僕に対してだけは、何処か距離を置いているようにも見える。メルちゃんたちの手前、笑顔で接してはいるが、最初に小屋を覗いた時以外は自分から近付こうとはせず、ペットを介して世話しているので、先ず間違いないだろう。特に嫌われるような真似をした覚えはないのだが……。
まぁ、ガブラスが相手では無理もないし、僕としても安定した餌と寝床を提供してくれるのなら、別に腫物扱いでも構わないけどね。
そう言えば、ビスカはハンター故に昼間はクエストに向かうのだが、基本的に採集のみであり、モンスターの狩猟や討伐は主に彼女のライバル(自称)が行っているらしい。装備がメルホアシリーズ一式である事からも、採取や採掘がメインなのだろう。
しかし、全く戦えないかと言えばそうでもなく、ドスファンゴの肉やリオレイアの尻尾を持ち帰って来た事もある。どうもフレグランスで眠らせてから大タル爆弾Gで吹き飛ばす、所謂「睡眠爆破」が得意らしく、ボマーのスキルも発動させている為、ダメージがとんでもない事になる。その上、自分はランスで安全に起爆出来るので、ダメージは無い。とんだテロリストである。
さらに、採集がメインである代わりなのか、広大な農場を有しており、採集に使う道具も自前で作っているので、様々な素材を自前で収穫出来る上に売上金だけで生活すら可能なのだとか。こうなるとハンターというよりファーマーと名乗った方が良い気がする。実際、近所にも「大地主」で通ってるみたいだし。ハンター稼業はあくまで趣味の範疇で、ペットの餌や自分へのご褒美を獲りに行く程度なのだろう。
「ただいま~」
そんな農家ハンター、ビスカが帰って来た。今日もドスビスカスの匂いがするメルホア装備に身を包み、自作の剪定した花香るフレグランスを背負っている。
『プ~♪』『クァ~♪』『フェ~♪』『ヒュィ~♪』
そして、愛する主人をメルちゃんたちが出迎え、その様子を僕は暖簾の隙間からジッと覗き、夕飯の時を待つ。これが最近の日常。
――――――さぁて、この毎日が崩れるのは、何時になるかねぇ?
◆グーク
メゼポルタで愛好されているアヒル。それ以上でもそれ以下でもそれ以外でもない。
デフォルメしたアヒル然とした生き物で、戦闘能力は無いに等しいが、餌や遺伝により羽毛の模様が変化するという特徴があり、まるで金魚の如くその容姿を楽しむ事が出来る。プーギー同様お世話や着替えも可能で、キュートな仕草に胸を射抜かれるハンターも多い。「グーク鍋」という“グークと一緒に鍋作りを楽しむ(決して「グークの鍋」ではない)”文化もあり、趣味と実益を兼ねる事が出来るからか、ある時期から人気が急増した。こんな形でも鳥竜種らしく、巨大に成長した個体は空を飛べるのだという。戦闘能力は相変わらず皆無だけど。
グークの飼育は現大陸の方ではあまり根付いていないようだが、とあるメゼポルタ帰りのハンターが「グークと現大陸でも触れ合いたい」と願い、千羽分もの「剣斧ノ折形【桜雲】」を造り上げたとか。