翼を下さい   作:ディヴァ子

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今回はビスカ視点


閑話:大きな夢

「うん、良い出来ね」

 

 私ことビスカ・メルホアールは、今日も今日とてクエスト……ではなく、農業に勤しんでいた。アイルーを沢山雇っているので、別に私が手を出さなくても良いのだが、やはり自分で見定め納入した作物たちの状態くらいは、己の目で確かめたい。

 ちなみに、今見分しているのは「ドスビスカス」という花。ココット村を代表する特産品だ。

 だが、この一角にあるドスビスカスは、唯のドスビスカスではない。最近になって発見された、「ヴァリアビスカス」という突然変異種である。

 ドスビスカスは風土に合わせて形質を変化させるという特性があり、このヴァリアビスカスは頭がクラクラする程の強い香りを発するという。事実、私も嗅いだ瞬間、ちょっとクラッときた。

 海外のとある王国の環境に順応している為、発芽が難しく、仮に芽が出ても花を咲かせる事は難しいと言われてきたが――――――遂に、蕾を付ける段階まできた。専用の囲いと様々なアイテムを使って再現した人工的な環境を用意して漸くだ。

 それもこれも、アイルーたちとの試行錯誤の成果と言える。ここに至るまで、一体どれ程の時間と金を消費したか……。

 しかし、その見返りは大きい。ヴァリアビスカスが花開く時、私のフレグランスは最強の矛と成り、メルホアシリーズは偉大な防具と化すだろう。

 いやぁ、今から楽しみだなぁ~♪

 

『旦那さん、今日も観に来てるかニャ~?』

 

 と、ヴァリアビスカス育成チームのリーダー、農場アイルーの「エビス」が声を掛けて来た。緑茶色の毛に赤紫色の瞳が特徴の働き者である。

 

「うん。このまま環境を維持すれば、近い内に咲くかもね」

『確かに旦那さんの言う通りですニャ。……これじゃあ、管理者のお株が奪われちゃうニャ~』

「大丈夫だよ。私は何時も傍に居られる訳じゃないから、やっぱりエビスたちが頼りだよ。他の子にも宜しく言っておいてね」

『了解だニャ。旦那さんはこれからクエストですかニャ?』

「そうだね。農場の肥料が足りなくなってきてるから、採集に行こうかと思って」

『……クエストが終わったら、ちゃんとお風呂に入ってくださいニャ~』

「言われなくても入るよ! ……それじゃあね」

『いってらっしゃいませニャ~』

 

 という事で、エビスに後を任せ、私はクエストを受注する為に村長の家へ向かう。昔は「ミナガルデ」と交流が盛んで、集会所も向こうにあったのだが、崖崩れにより行路が完全に途絶えてしまった為、今では村長が集会所も兼任している。

 村の“お悩み解決”の面が強い「村クエスト」と違い、集会所はギルド直営なので難易度が高く、その分だけ報酬が良い。遣り甲斐を求めるなら、そちらを受注すると良いだろう。事実、我がライバル様はそちらをメインに活動している。

 しかし、私は採集がメインのハンターなので、別段クエストの種類は選んでいない。欲しい物がある時に、したいクエストをしている。今回はモンスターのフン集めだから、村クエを適当に受注しようかな。

 

「おお、ビスカか。クエストを受けに来たのかの?」

「はい。畑の肥料集めのついでに、何か狩猟しようかと」

「……フンのついでにモンスターを狩るのか」

 

 早速、村長宅兼集会所の前に行き、村長に挨拶をしたら微妙な顔をされた。解せぬ。良いじゃん、肥料のついでだって。そんな顔ばかりしていると、ベッキーさんの方に行っちゃうぞ。

 

「それで、何かお困りの事は?」

「そうじゃのう……最近、森丘の方で変わったイャンクックを見掛けるそうじゃ」

「亜種ですか?」

「分からん。何分、チラッと見ただけらしいからの。ただ、かなり興奮気味で狂暴化しとるそうじゃ」

「それは危ないですね」

 

 森丘はココット村の目と鼻の先にある狩場。既存のモンスターならともかく、未知のモンスターにうろつかれるのは良い気がしない。狂暴だというのなら猶更だ。肥料のおまけで狩ってやろう。

 

「おやぁ? 何時もの探索ツアーじゃなくて、狩猟クエストに参加するとは、どういう風の吹き回しだぁ~?」

 

 すると、後ろから嘲るような調子で声を掛けられた。この挑発的な口調、間違いない。

 

「ヴリアちゃん!」

「“ちゃん”って言うな。呼び捨てにしろって何度も言ってるだろ!」

 

 振り向けば、そこには大切な友の姿が。

 頭以外をガブラスーツで纏めた、銀髪灼眼の勝ち気な女の子。過去の事故で左目が失明しており、常にオリジナル防具の眼帯を付けている。背負う武器は「蛇剣【毒蛇】」。他にも「モータルサーペント」や「バレットシャワー・蛇」、それから「蛇槍【ウリトラ】」など、ガブラス素材の武器を数種類持っている。

 そんなガブラス尽くしな彼女は、ヴリア・トラスナーガ。私の幼馴染であり、最高の心友である。

 ……うん、彼女にはアルビノ・ガブラスの事は黙っておこう。見た瞬間に捌きかねないし。

 

「――――――って言うか、ヴリアちゃん、デデ砂漠の方に行ってなかったっけ?」

「そんなモン、とっくに終わらせたよ。……それよりよぉ~、今から狩猟に行くんだろぉ? なら、アタシも連れて行けや。腕が訛ってないか確かめてやんよ」

「フン集めるの手伝ってくれるんだね?」

「それは自分でやれ。見張りはアタシがやるから」

「あ~ん……」

 

 つれないなぁ~。

 まぁ、良いか。それじゃあ、お言葉に甘えて、久々にヴリアちゃんとクエストに行こうかな!




◆ヴリア・トラスナーガ

 ココット村出身の女ハンター。ビスカの自称:ライバル。こちらは狩猟をメインに活動しており、大剣・ランス・ハンマー・スラッシュアックス・ライトボウガンと、様々な武器を使い熟す。頭以外の全てをガブラス系統の装備で固めているのがトレードマーク。
 過去にガブラスによって左目を潰されていて、それがトラウマになっている。その為、復讐と克服を兼ねて、狩猟の度にガブラスを殺すのが日課となった。
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