芹澤君のかえりみち   作:三流FLASH職人

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九州弁難しい・・・orz


第三話 芹澤朋也と岡部稔

『環さん! 今どこですと!? 無事東京には着いたかですか!?』

「だ・か・ら、引き返してないって言っちょろうが、心配せんでええね!」 

『いやそりゃ心配するですとよ、見知らぬ土地で男と一緒なんぞ猛獣隣に置くようなもんですたい!ましてや鈴芽ちゃんも一緒やのに!』

「はぁ・・・・・・・もう、大丈夫だって言っとろうに。それより仕事はたまっとらんっちゃろうね?」

『大丈夫! い、いや溜まっちょります!そらもう組合が回らんなるほどに、じゃから早う帰って来て・・・・・・』

「やったら電話しとらんと手ぇ動かさんね!」

『は、はいいぃっ!』

 

 俺から電話を受け取った環さん、着信相手との丁々発止のやり取りがダダ洩れである。相手の人の地声が大きいせいで普通の通話なのにセルフスピーカーモードになっているので会話が丸聞こえだ。

 

『宿はちゃんと取れたですか?この季節とはいえ東北は冷えますけん、くれぐれも・・・・・・』

「あー、一応野宿やっけんど、ちょっと現場を離れるわけにはいかん状況になっとっとよ」

『あの男は?あの言うちょった貧乏ホストは一緒じゃなかとですよね!』

「くどか!大丈夫やっていっちょろうもん!!」

 

 あれ?なんかこの電話の相手の物言いに違和感感じるな・・・・・・なんつーかこう、単なる心配の次元を超えてるような。漏れ聞く会話から環さんの職場の同僚みたいだけど。

 

(やからもう結婚も半ばあきらめとって)

 

 ん?そういやそんな事言ってたな。という事は環さん周囲に男っ気のまるでない環境だと思ってたけど、この人聞こえる声も若いし何よりその内容からしても、もしかして・・・・・・

 

「とにかく、全然健全やから!心配せんでええから!」

 そう言って電話を切ると、はぁ、と大きく息をつく。なんかもう重いくらいに心配されているのがひしひしと伝わって来るな、相手の人から。

 

「会社の人ッスか?」

「せや、後輩。ホンマに心配性で困るちゃよ」

 え、環さんにとっては今のが単なる心配症で済まされるのか?

「いや・・・・・・同僚心配する次元超えてると思いますけど」

 それを聞いてようやく会話がダダ洩れだったのに気付く環さん。話を聞くにただでさえ地声の大きい九州男児なのに、加えて漁業組合の勤務の男性なのもあって日常から潮騒に負けない声量で会話しているせいで、電話の声が漏れているのは日常茶飯事だそうだ。なので今回のトーンの高さも環さんにはあまり響かなかったらしい・・・明らかに違うのに。

 

「なんね、妙にニヤニヤして!」

「いやー、今の電話の人、ひょっとして環さんに気があるんじゃないかって」

 美人でデキる人っぽいのに、妙に鈍感な所があるんだなと思うと思わず顔がニヤける。が、彼女はというと目をぱちくりさせてしばし硬直した後・・・・・・

「あははははは、稔クンが?無いない、ありえへんて、あははははっはははは!」

 大笑いされた。あーこの人マジで全く気付いてないな。

 

「彼まだ29よ、こんなおばさん相手にせんて」

 ようやく笑いが収まった彼女は、半ば矢継ぎ早に電話の相手、岡部稔の事を話し始める。

「誠実で正直で仕事もすっごくデキる、知恵も回るし度胸も体力も抜群なんよ。頼りになるし裏表ないし、若い娘がほっとかんて、あげなイイ男。」

 うーん、そういう人だからこそ過剰な心配をしてるのかな?まぁ俺が間男認定されているのはちょっと嫌なんだけど。

「まぁイケメンってタイプやないけん女慣れしとらんせいか、私と話す時もちょっとオドオドしとるのはマイナスじゃけんどねー」

 

 や っ ぱ り か ! 

 

 明らかに好意丸出しじゃないですか、見た目キャリアウーマンなのにこと恋愛に関しては女子高生並みのメンタルなのか?いやすずめちゃんが草太に惚れ込んで日本列島縦断したのに比べたら、それ以下・・・・・・?

 

「あ、それより歌のアプリの最中やったね、続き頼むわ」

 そう言ってスマホを俺にパスする。DLは終わってるからあとはインストールするだけなのだが・・・・・・なんかこう、色々とモヤモヤするな。

 

「んじゃインストールしますよー」

「うん、頼むわ」

 もはや画面すら見ずに座り直す環さんを見て俺は思わずニヤリと笑みをこぼした。インストール中に素早く着信履歴を開き、先程の電話の相手の番号を脳内で復唱して記憶する。

 

 

「じゃ、俺はそろそろ寝ますよ。草太たちが帰ってきたら明日は一日運転なんで」

「あ、そうやね。運転ご苦労様っちゃ。」

 近くにもたれるのに丁度いい高基礎があったもんで、そこに背を預けて地面に座る。現在午後9時半、あの扉からは未だに草太もすずめちゃんも戻ってこない、というか本当に戻ってくるのかな?

 

 

 約30分後、環さんも5mほど離れた所ですぅすぅ寝息を立て始めた。よし、計画通り!

 

 俺はそっとその場を離れ、スマホに手持ちのイヤホンを繋いで会話が漏れないように準備すると、さっき暗記した電話番号を入力する。09×-××××-××××、と。

 

 プルルルル、ガチャ

『もしもし、岡部ですがどちらさまで?』

「ああ、俺、芹澤って言います、初めまして。」

『芹澤さん・・・ですか?どういったご用件で?』

「えーと、貴方のお知り合いの環さんですけど・・・・・・今俺の隣で寝てますよ」

 電話の向こうでぶはぁっ!と豪快に噴き出す音が響いた。ちなみに嘘は言ってない、隣りと言うにはちょっと距離あるけど。

 

『きっ、キサン!環さんの言っとたホストか!待っとれよ、今からぶん殴りに行くけん!!』

「距離考えて下さいよ、つか冗談ですって、指一本触れてませんよ」

 多少の齟齬はあるが、俺が環さんに手を出すつもりが全く無いという点で意味は同じなのでそう言っておく。

『な!、そ、そうか。そんならよかけんど・・・・・・いやあかんばい、男女が一緒に野宿とか!そういや鈴芽ちゃんは?そっちにも手を出しとらんね!?』

 はい確定。女子高生のすずめちゃんより結婚適齢期を過ぎている環さんの方をまず心配している時点で、間違いなく環さんに惚れてるよこのヒト。

 

「そのすずめちゃんが帰って来るまで待機してるんスよ。なんでこのさい俺が間男みたいにみられてるのに文句の一つも言っておこうと思いまして。」

『あ、ああ・・・・・・それはすまんたい。』

 なるほど確かに頭の回転速いな、もし本当に環さんやすずめちゃんに手を出すような男なら、わざわざ電話する訳がないというのをもう理解している。

 

「で、本題なんですが・・・・・・アンタ、環さんに惚れてるでしょ」

「んなっ!まっ、ちょごっ!?ほ、ほんなこつっ!!」

「・・・・・・分っかり易ぅ」

 なんだろう、二人とも俺より年上なのに、まるで中学生の煮え切らないカップルを見ている気分になるのは。

 

「ちゃんと告白したんスか?」

『でっ、出来る訳なか!あんな上等な美人に俺なんかがつり合う訳なかと!!』

 あーもうこのおばか共!

「言わなきゃ何も変わらないでしょうが、このヘタレ!」

『ばっ、誰がヘタレか・・・・・・うんおいはそうたい』

 

 思わずだはーっ!と息を吐き出す。ああタバコ吸いたい。

 

「あのですね・・・・・・・環さんも憧れてるんですよ、自分の人生の変化に。なので思い切って告ってみたらどうです?案外脈あると思うんですけどね」

『ば、ばってん、おいみたいな粗忽者が、環さんみたいなむぞらしか(可愛らしい)人とは釣り合わんし。もしそうなったら次の日からどんな顔して会えばよかね』

 ああそういう事情もあるのか。確かに会社の同僚に告白して振られたら次の日から確かに辛いな。だがまぁその件に対しては俺は無責任になろう、そんなの世間では珍しくも無い。

「九州男児でしょ?玉砕覚悟で突撃するのが美学じゃないんですか?」

『わ、分かったぁっ!もし振られたら潔く腹を切るっ!』

「そこまでするなあぁぁぁぁっ!」

 

 結局、告白の確約と結果を俺に報告する旨を約束して電話を切った。やれやれこれで少しはスッキリした。いつまでも間男扱いじゃ嫌だし、あの闇の深い環さんにこっそりサプライズを仕込めたことにも満足感がある。

 

 

 さて、あとはすずめちゃんと草太の帰りを待つだけか・・・・・・追及が今から楽しみだ。

 




ちなみに現在常世では、ちょうど鈴芽と草太が要石を刺したあたりです。
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