魔法少女に変身するとTSしてしまう男子高校生が親友に対して友愛と情愛で揺れてしまう概念。

 息抜きに書いたものなので続きません。

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親友TS魔法少女化概念

 魔法少女。

 

 それは突如にして現れた正体不明の怪物、終焉を齎す者(ジオイーター)を狩る彼女らもまた正体不明な存在だ。

 彼女らは戦いとは無縁そうな絢爛で華美な少女趣味のドレスを身に纏い、魔法と呼ばれる摩訶不思議なエネルギーを戦闘に利用している。

 身元こそ未だにわかっていないのだが、その誰もか美少女と評判であり世間ではその人気に火がつき始めているのだ。

 

 そんな恐れ多くも敬い、尊ぶべき存在。それが今、僕の目の前に立っている。

 

 

「私が、時間を稼ぐから……。逃げて!」

 

 

 そう言って名も知らぬ魔法少女は、僕に逃げるように促した。だが僕は目の前で繰り広げられる戦いの衝撃を直に感じてしまい、足がすくんでしまう。僕の逃げたいという意志とは相反するかのように動きだすことができない。

 

 だって、僕は戦いとは無縁な場所で生きてきた一般市民だぞ? こんな状況に慣れているはずがない。

 

 僕は必死に心の中でこんな状況に陥ってしまったことへの言い訳を思い列ねるが、この状況において意味のある行為ではないことに気がつく。

 だからといって何かしらの行動を起こすこともできず、ただ呆然と地面にへたりこんだままであった。

 

 魔法少女は複数のジオイーター相手に無力な僕を守りながら戦っており、僕自身が足を引っ張っていることは火を見るよりも明らかだった。

 

 

「……全く、手のかかる!」

 

 

 魔法少女は手元の細剣を僕に向けて振り上げる。それと同時に彼女の足元を中心に光り輝く円陣が浮かび上がった。そして彼女は燃えたぎるような長い髪を翻し、その円陣の中心を踏みしめると光の粒子が舞い散った。その光景を見て僕は思う。ああ、これはアニメや漫画で見るような魔法なんだな、と。

 

 そしてその次の瞬間に、僕の視界は目まぐるしい勢いで変化していく。一瞬にして辺りの景色が一変したのだ。

先ほどまでいた場所とは違う場所にいる。それは間違いない。

 だが、状況も状況であり、一体何が起きたのかが理解できなかった。

 

 

「……う、わぁ!?」

 

 

 じわりじわりと自分が空を待っていることを理解し始めると同時に、恐怖という感情が僕の体を蝕み始めることになる。

 今までの人生で味わったことのないような浮遊感が体を襲う。

 このまま落下して死んでしまうのではないか、と脳裏によぎるがそれすらもできない。

 それほどまでに今の状況は絶望的なはずだった。僕は死を覚悟して目を瞑る。

 

 

「……せーふ」

 

 

 しかし、衝撃と言うよりも温かみを感じる。なんだろうと思い恐る恐る瞼を開くとそこには先ほどとは別の魔法少女の姿があった。

 どうやら彼女に抱えられているらしい。所謂お姫様抱っこの状態だ。

 彼女はそのままゆっくりと地面に降ろしてくれた。

 

 

「あ、ありがとう、ございます……」

「いーのいーの。全く、ふーちゃんも無茶するよね」

 

 

 僕を助けてくれた魔法少女は先ほどの彼女とは打って変わって落ち着いた雰囲気の少女だった。

 黒い髪には赤いメッシュが入り、瞳の色は金色をしている。身長は高くスラッとしている。顔立ちはとても整っており、彼女にもまた美少女という言葉が良く似合うと思った。

 

 

「ほら、せっかく逃がしてもらったんだから。君もぼさっとしていないで早く逃げるんだよ?」

「えっ、あっ、はい! 助けてくれてありがとうございました!!」

 

 

 そう言うと彼女はニッコリと微笑んでくれた。きっと、戦い続ける彼女達にとっては何の気なしの日常のひとコマに過ぎないのかもしれないが、僕にとってみればそれはとてもありがたいことであった。

 

 魔法少女は僕、三北(ミキタ)冬真(トウマ)にとっての命の恩人だ。

 

 

 

 §

 

 

 

五十目(いそのめ)町でジオイーター騒ぎだって」

「最近多いねー」

 

 教室ではクラスメイト達がそんな会話をしていた。この陸嶌(たかしま)市の近隣においてジオイーターの出現頻度が増えているという噂は以前からあったが、最近では特にその噂が多く聞かれるようになった気がした。

 

 

「ねえ、大丈夫かな」

「大丈夫だよ。ジオイーターだって自衛隊がどうにかしてくれるって!」

「でも自衛隊だって対処を魔法少女に頼りきりってるんでしょ? 不安で仕方ないよー」

「心配性すぎだよー」

 

 

 僕は窓の外を見つめながらぼんやりと物思いに耽っていた。

 昨日の出来事が頭から離れず、授業にも集中することができないでいる。

僕は、結局何もできなかった。

 ただ、見ているだけだった。

 あの後、すぐに避難誘導が始まり、五十目に遊びに来ていただけの僕は直ぐに陸嶌に帰ることになった。だが、今でも鮮明に覚えている。

 魔法少女が、戦う姿が。

 

 

「おい、冬真。ちょっと来いよ」

 

 

 不意に声をかけられた。振り返るとそこに立っていたのは、クラスの中でもトップカーストに位置するイケメン、高峰(タカミネ)翔吾(ショウゴ)

 そして僕の()()でもあり、幼なじみでもある。

 

 

「ん、何か用?」

「お前、今日変じゃねぇか? なんかボーッとしてるしよ」

「そうかな……。それより、何か用事があって呼んだんじゃないの?」

 

 

 僕がそう聞くと彼は一瞬だけ眉間にシワを寄せたが、直ぐさま表情を取り繕った。

 

 

「ああ、そうだ。なあ、今日の放課後空いてるか?」

「うん、別に予定はないけど」

「そっか、なら良かったぜ。実はさ、駅前に新しいカフェができたんだけどよ。一緒に行かないか? 知り合いから割引券もらったし」

「僕なんかと?」

「バッカ、親友のお前だから誘ってんだろうが。気分転換にでもなるだろ?」

 

 

 彼の言葉を聞いて少し嬉しくなる。こんな根暗な僕を友達扱いしてくれるのは彼くらいだ。だからこそ、僕は彼と親友という関係を続けていけるのだが。

 

 

「カラオケとかなら断ってた」

「うへ、まじかよ……。カラオケも選択肢にあったんだよな……」

「運が良かったな、翔吾」

 

 

 それだけ言って僕は自分の席に戻った。

 だが、彼はその場から動かずに何かを考え込んで僕の方に大声で呼びかける。

 

 

「冬真、放課後な!」

「はいはい、分かったから。もうすぐ先生来ちゃうよ」

 

 

 そうして、いつも通りの日常が過ぎていく。

 何の変哲もない普通の日々が。

 だが、その平和は突如として破られることになる。

 

 

「なんだこれ」

 

 

 学校からの帰り道。

 僕は通学路の途中にある公園で、信じられないものを目撃した。

 目の前に広がる光景。それは、まるで地獄絵図のようなものだった。

 

 地面に倒れ伏す人々。

 血を流し、苦悶の表情を浮かべる人達。

 その中心には見たこともない化け物が立っている。

 

 あれは間違いなく、ジオイーターだ。

 

 

「……っ!?」

 

 

 ぱちりと視線が合ったような感覚に陥り、僕は声にならない悲鳴を上げる。すると、ジオイーターはこちらに気づき、ゆっくりと歩み寄ってくるではないか。

 

 ……やばい。

 

 僕は咄嵯に逃げ出そうとしたが、足が動かないことに気づく。

 恐怖のあまり、また腰が抜けてしまったのだ。ジオイーターは僕のことを品定めするように眺めてくると、ニタリと不気味な笑みを浮かべた。

 

 

「あ……あ……」

 

 

 殺される。

 そう思った瞬間、僕の中で何かが弾けた。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 気がつけば、僕は叫びながら走り出していた。

 死にたくない一心で、ただひたすらに。

 

 しかし、それがいけなかった。

 

 次の瞬間には地面を揺るがすような鈍い音が響く。背中に強い衝撃を受け、息が詰まり前のめりに倒れることになる。

 

 

「げほっ!げほ!!」

 

 

 咳き込みながらも、必死に立ち上がると、そこには先ほどまで僕がいた場所があった。

 そこには大きなクレーターができており、僕が先ほどまで走っていた地面がえぐれている。

 

 

「えっ……」

 

 

 一瞬思考が停止する。

 ジオイーターは僕に向かって腕を振り下ろしていた。

 

 

「ひっ、ぎゃあああっ!!!」

 

 

 僕は目を力強く閉じ、体を丸くする。

 だがいつまで経っても痛みはやってこない。恐る恐る目を開けると、そこにいたはずのジオイーターが消え失せていることに気がついた。

 

 

「私が守るから。安心しろ」

 

 

 後ろを振り返ると、そこには一人の少女の姿。

 白いマントを身につけ、五十目でも見たことがある燃えるような赤い長髪が風に揺れる。

 

 

「ま、……魔法、少女?」

 

 

 僕は呆然としながら呟く。

 彼女はその問いに答えることなく、僕に背を向けると、再びジオイーターの方へと向かっていった。

 そして、瞬く間にジオイーターを片付けてしまう。

 

 

「すごい……」

 

 

 僕はその姿に見惚れてしまっていた。それほどまでに彼女の姿は美しかった。

 

 

「大丈夫だった?」

「えっ、あ、はい」

 

 

 突然話しかけられ、僕は慌てて返事をする。そんな僕を見て、彼女はフッと微笑むと、僕の手を取り立ち上がらせた。

 

 

「立てる?」

 

 

 そう言うと、彼女──魔法少女は僕に右手を差し出す。

 

 

「あ、ありがとうございます」

「気にしなくていい。君のような無力な人を守ることが私の役割だから」

 

 

 魔法少女はそう言って僕を見つめると、優しく手を離した。そしてそのまま踵を返し、どこかへ去ろうとする。

その時、僕は咄嵯に彼女を呼び止めてしまった。

 何か言わないと。何か話さないと。

 焦燥感にも似た感情が僕を襲う。

 僕は口を開き、言葉を紡ごうとするが、喉元に引っかかったように声が出てこなかった。

 

 

「……」

 

 

 僕の呼びかけに、魔法少女は振り返らずに沈黙を貫く。

 

 

「あ、あのっ! 名前を教えてくれませんか?」

 

 

 やっとの思いで絞り出した言葉は、あまりにも情けなく、陳腐なもの。

しかし、それでも彼女の名前を訊かずにはいられなかった。

 

 

「私は烈火の魔導(フレイムラッシュ)マギアルフレア」

「フレア……」

「じゃあな」

 

 

 そう言い残し、振り返ることも無く彼女は去っていった。僕は何も言えずにその後ろ姿を眺めることしかできない。

 

 

「なんなんだよ、一体」

 

 

 僕はそう独りごちて空を見上げる。

 

 きっとまた会える。

 何故かは分からないけど、僕はそう確信していた。

 

 

 

 §

 

 

 

 あれから早くも数日が経とうとしている。その間、ここ陸嶌(たかしま)ではジオイーターの出現はなく、僕たちは平穏な日々を過ごしていた。

 僕はといえば、先日行けなかったカフェに翔吾と行くことになったのだが……。

 

 

「ねぇねぇ、翔吾くん! これどう思う??」

 

 

 僕と翔吾の待ち合わせにはオマケがついてきていた。僕の隣でキャピキャピとはしゃぐ少女の名前は、神威愛梨(カミイアイリ)。肩にかかる程度の長さで切り揃えられた黒髪に、くりっとした瞳。

 まるでアイドルのような可愛らしい容姿をした少女である。

 そしてそんな彼女がなぜここにいるのかと言うと……。

 

 

「二人とも高等部に行ってからあんまり遊べなくなったから、久しぶりに一緒に遊びたいなって思って着いて来ちゃった♪」

「えぇ……」

 

 

 僕はげんなりとした表情を浮かべる。隣を見ると、案の定というべきか翔吾も似たような顔をしている。

 

 

「迷惑だったかな?」

 

 

 しゅんとして俯く彼女に罪悪感を感じ、「別にそういうわけじゃないよ」と答えると、パァッと笑顔になる。

 

 こういうところは昔から変わらない。

 愛梨は僕と翔吾とは一歳違いであり中等部の三年生なのだ。一年間だとしても幼なじみと離れ離れになったのが寂しいのだろう。もう少し我慢というものをしてほしいものだが。

 僕はため息をつくと、「それじゃあ行こうか」と言って歩き始める。すると、待ってましたとばかりに、僕らの横に並ぶようにして愛梨が歩いてくる。

 

 

「えへへ、三人でデートだね」

「それはおかしいだろ。大体な、割引券は2枚しか無かったから俺と冬真だけで来る予定だったんだぞ?」

「翔くんは昔っから(とー)くんにゾッコンなんだから~」

「そ、そんなんじゃねえよ!」

 

 

 しばらく聞いてなかった幼なじみとしての掛け合いに僕は思わず頬が緩んでしまう。それを見た翔吾が「何がおかしいんだ」と抗議の視線を送ってきたが、軽い肘打ちをして誤魔化すことにした。

 その後も三人で他愛もない会話をしながら街を歩いていると目的のカフェが見えてきた。店の中に入ると、落ち着いた雰囲気の店内にはコーヒーの香りが漂っており、心地良い気分になった。席に着くとメニュー表を広げながら何を注文するかを考える。

 

 

「うわぁ〜どれにしよう迷っちゃうな〜」

 

 

 愛梨は楽しげにメニューを見ている。この子は悩み過ぎて中々決められないタイプなので、促してあげた方がいいかもしれない。

 

 

「愛梨は何にするの?」

「ん〜、このパンケーキとか美味しそうだよね」

「じゃあそれにしたら?」

「あっ、でもこっちのプリンアラモードもいいかも」

「じゃあ、僕がそれを頼むから半分こにしようか」

「いいの!?」

 

 

 僕たちのやり取りを見ていた翔吾の顔は少しだけ引きつっていた。

 

 

「お前らどうしてそれで付き合ってないんだよ……?」

 

 

 僕は苦笑しながら、翔吾の言葉を否定する。

 

 

「そんな訳無いじゃん。ただ小さい頃からずっと一緒だっただけだし。翔吾も愛梨に似たようなことするでしょ?」

 

 

 そう、僕たちの関係はそんな甘いものではないのだ。もっとこう家族に近いような感じなのだと思う。

 僕がそう言うと翔吾は確かにと深い溜め息をついた。

 

 

「はいはいその話おしまい! 早く頼もうよ」

 

 

 愛梨が呆れた様子で言う。

 結局僕たちはそれぞれ違うものを頼み、シェアすることになった。

 運ばれてきた飲み物を二口ほど飲むと、僕は早速プリンに手をつける。生クリームやフルーツと一緒に食べると甘さが際立つ。これは当たりの部類に入るのではないだろうか。

 

 

「冬くん! 私にも分けてー! はい、あー……」

「……自分で食べなよ。ほら、あーん」

 

 

 愛梨にスプーンを差し出すと嬉しそうにパクつく。

 

 

「やっぱり親鳥と雛鳥って感じだな」

「翔くぅん、喧嘩売るなら買うよぉー?」

「売ってないが?」

 

 

 そんなやりとりを見て微笑むと、翔吾が怪しげな視線を向けてくる。愛梨の暴走を止めろと言いたいのだろう。

 

 

「ほら、雛鳥さん。プリンはもう要らないのかい?」

「要ります!!」

 

 

 愛梨はスプーンで掬ったプリンにかぶりつく。

 

 

「うんまーい! 幸せー!!」

 

 

 愛梨の喜びように、僕は自然と頬が綻ぶ。

 

 

「ふふん。まだまだあるから遠慮しないでね」

 

 

 愛梨は目を輝かせながら何度も首を縦に振る。僕は内心で彼女のことを可愛いと思っていた。

 

 その時だった。突然店の外から悲鳴が上がる。僕は慌てて窓の外を見る。そこには異形の姿があった。

 頭部は牛のような形をしており、胴体は人間のようだ。しかし、手足は無く代わりに触手のようなものが何本も生えているのがここからでもよく分かる。さらに背中からはコウモリのような翼が生えており、まさに化け物と呼ぶに相応しい姿だった。

 怪物の出現に店内はパニックに陥る。店員も客も皆我先に逃げようと必死になっていた。

 

 

「冬くん、翔くん! ……ど、どうするの?」

 

 

 愛梨は不安げな表情を浮かべながら訊ねる。

 

 

「冬真、お前は愛梨の傍で宥めてろ」

「翔吾はどうする気だよ!」

「……俺は助けを呼ぶ。心配すんなよ」

 

 

 翔吾はそれだけ言い残し、店を飛び出していく。

 

 

「愛梨は危ないからここに居て。大丈夫、翔吾はすぐに戻ってくるさ」

「で、でも!」

 

 

 僕は愛梨の手を握る。震えている手はとても小さかった。

 

 

「怖かったら目を瞑っていていいよ。僕が、気を張ってるから……」

 

 

 優しく語りかけると愛梨は無言でコクリと首を振る。僕は彼女を安心させるべく、頭を撫でて抱き抱える。愛梨は僕の腕の中で大人しくしていた。こんな状況なのに不思議と落ち着いている自分が居る。きっと彼女が怯えていないからだ。

 しばらくすると、遠くの方で爆発音が聞こえた。もしかすると魔法少女が

到着したのかもしれない。

 

 翔吾は大丈夫だろうか……。

 僕は意を決して窓の外を覗いてみる。そこには予想通り、怪物がいた。先程よりも身体が大きくなっており、まるでB級スプラッター映画にでも出てきそうなエイリアンのようであった。

 なんだよと思わず悪態をつきたくなる。あれでは普通の人間は太刀打ち出来ないのではないか? 実際のところ、僕は恐ろしさに足がすくんで動けずにいた。

 だが、それと対峙する人影が一つ。

 赤い長髪を揺らし、怪物と対等に渡り合っている。それは先日見た魔法少女の姿と一致していた。

 

 

「……マギアルフレア」

 

 

 僕は無意識のうちに彼女から聞いていた名前を呟く。目の前の少女は紛れもなくあの時の女の子だった。彼女は華麗に立ち回り、的確に攻撃を当てている。そしてついに決着がついたのか、怪物は光に包まれ消えていった。

僕はホッと胸を撫で下ろす。よかった、無事みたいだ。

 マギアルフレアは僕達の存在に気が付いたのか、こちらに向かってくる。愛梨を抱き抱えたままなので逃げるに逃げられない。

 やがてマギアルフレアは僕達のテーブルまで辿り着く。近くで見ると改めて美人だと実感した。切れ長の目が印象的で、スラッとした体型をしている。髪と同じ色の瞳に見つめられると吸い込まれそうな感覚に陥った。

 マギアルフレアはじっと僕を見据えると口を開く。

 

 

「無事みたいね。そっちの連れの方も」

 

 

 僕は愛梨のことを言っているのだと思いコクりと首を縦に振った。

 愛梨はジオイーターの襲撃の恐怖から立ち直れておらず、僕にしがみついて震え続けている。

 

 

「民間人のあなたが短期間にこれだけジオイーターの襲撃に巻き込まれるなんて災難ね」

 

 

 確かにそうだ。ついこの間までは平和そのものだったというのに、今では命の危険すら感じる。

 

 

「その節はどうも……」

 

 

 マギアルフレアに助けられたのはこれで三度目になる。一度は五十目町で、二度はこの前の公園での出来事だ。

 

 

「今日もたまたま近くに居たから良かったけど、そうじゃなかったら大変なことになってたわよ」

「はい、本当に助かりました」

 

 

 素直に感謝を述べるとマギアルフレアはクスリと笑う。

 

 

「あのマギアルフレアさん、翔吾のこと見てませんか。あ、翔吾は茶髪っぽい髪をした短髪の男の子です。助けを呼ぶってここを飛び出して行ったんです!」

 

 

 僕は矢継ぎ早に質問を投げかけた。少しでも情報が欲しい。

 

 

「……えぇ、見掛けた。彼なら私が安全圏まで連れて行ってあげたから安心して」

「……良かった」

 

 

 僕は安堵のため息をつく。しかし、まだ疑問は残っている。何故彼女は僕を助けてくれたのだろうか。まさかこの前のように無償でとは考えにくい。何か裏があるはずだ。

 

 

「どうしてここまでしてくれるんですか?」

「別に見返りを求めてる訳じゃないわ。ただ、私にも事情があって、あなたみたいな人が危険な目に合うのを放っておけないだけよ」

「それでも助けてもらった身として感謝しています。ありがとうございます」

 

 

 僕は深々と頭を下げる。これは本心からの気持ちだった。

 マギアルフレアは少し照れた様子を見せる。クールなイメージだったので意外な一面を見た気がした。

 

 

「……また会いましょう、冬真くん」

 

 

 名乗っていない名前を呼ばれて戸惑う冬真だったが、マギアルフレアは答えることなく立ち去ってしまった。

 本当に、なんなんだ。あの魔法少女はなぜ僕を知っているんだ……?

 

 

 

 §

 

 

 

(つ、つつつ、ついにこの姿で話しちゃった話しちゃった話しちゃった~~!!)

 

 

 ジオイーターの襲撃現場から離れた"烈火の魔導(フレイムラッシュ)"マギアルフレアこと、高峰翔吾は変身したママの姿で喜びに打ちひしがれていた。

 というのも、彼は返信している状態であるとありとあらゆる自分の性質が反転、あるいは大きく変質してしまうという特異体質の魔法少女なのだ。そもそもなぜ男が魔法少女をやっているのかが不明なのだが。

 

 ともあれ、魔法少女に変身すれば当然性別が変わるし、性格や嗜好も大きく変化する。その中でも変身前の翔吾が特に危惧していたことが、親友として三北冬真に向けている親愛が、異性などに向ける愛情に変換されてしまうことであった。

 

 つまり、彼の中で冬真に対する恋慕が芽生えてしまう可能性があったのだ。それもこれも全部ジオイーターの襲撃に巻き込まれるあの少年が悪い。あいつのせいで私は――!

 翔吾は走りながら思う。

 

 ―――やっぱり冬真が好きになっちゃってるぅ!

 

 自覚してしまった以上もう止まらない。抑えきれない感情が溢れ出す。

 距離を取った今でも湧き上がってくる冬真の胸に飛び込みたい衝動を抑え込み、人目のつかない路地裏で変身を解除する。

 

 すると、先程までの興奮状態は嘘かのように落ち着きを取り戻していた。

 

 

「魔法少女は愛と願いの力と聞くが……。かなり危険だな」

 

 

 冷静になったところで考える。これから自分はどうすればよいのか。このままではまずいことは分かっていたが、具体的にどうしたらいいのか全く分からなかった。

 ひとしきり考えた後、翔吾はある結論に至る。

 

 

「とりあえず帰って、ゲームしよう」

 

 

 高峰翔吾は欲望に忠実な男であった。流行りのゲームもしたければアニメだって見たいし、ネットに転がっているくだらない動画だって見たい。もちろん可愛くて優しい彼女だって欲しい。もちろん、彼女が欲しい。

 

 こうして高峰翔吾は魔法少女として目下の悩みを棚上げし、いつも通りの日常へと戻っていく……。

 




 Twitterの某漫画リスペクトだったりする。
 変身後と変身前がもはや別人。

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