ここはグルメ界 後半の海、人呼んで新世界。多くの美食家たちが食材を求め旅し散っていった場所。
そんな場所で、1組の男女がはしゃいでいた。
「やったぞぉぉぉぉぉ!遂に、遂に見つけたんだ!新生物!でっかい亀だ!この世界に生まれて15年、トリコさんに虐められ、ココさんに毒殺されかけ、サニーさんには何故か嫌われ、ゼブラさんは怖かった。だが、遂にその時間も終わるんだ。俺は今日から美食家の一人だ!なぁ!メルシー!」
「うるさい。まだこの亀が未確認かは分からないでしょ。IGOに問い合わせて確認しなきゃ。まぁキャンピングモンスターで、グルメ界でまともな植生を保ててる島亀なんて聞いたことないから、おめでとうトーヤ。」
「おー!なんだ!これ!甲羅外したら穴が!」
「聞けよ!」
二人がいるのは海に浮かぶ島の上ではなく、亀の上。巨大な亀の上で甲羅を剥がし、生まれた穴に顔を今にもツッコミそうな男はトーヤ。そしてそれに付き合う女がメルシー。二人はコンビを組んでいる新世代だ。
「トーヤ!グルメ界で油断するとか死にたいの?気をつけてよ。」
「この穴の中にはどんな食材が待ってるのか、へ?ヌワァァァァァ」
「トーヤァァァァァァ!」
〜完〜
ここはヒーローを目指す卵たちの通う高校、雄英高校。そんな雄英高校、今日はいつもとは様子が違うようだ。
職員室に集まるは全教師、話すはもうすぐ入ってくる新入生のこと。
入学生が決まり、新入生についての心構えを毎年のようにドーナッツ型の机を囲み話し合う彼ら。その中心には不思議な色をした穴が開き、そこから一人の少年が顔を出した。
「おいおい、なんだコイツは」
「退け、マイク」
動くは髪の毛を逆立てた無精髭の男、イレイザーヘッド。捕縛布を使い個性を封じ確保を狙う。
しかし対するはグルメ界で生存できるほどの男、トーヤ。ワクワクの止まらない様子でこの世界を覗き、そのまま捕まり、穴から引きずり落とされ、確保された。
「ヌワァァァァ、なんだぁ?」
「やぁ、少年。初めましてなのさ。君にはいくつか聞きたいことがあるからこたえてほしいのさ。」
「ネズミが喋った?すげぇな。ここ。あ、どうも、美食家見習いトーヤです。ん?待て、ここ雄英高校って言います?」
「分かってない状態でここに来たということは個性の暴走かい?そう、ここは雄英高校なのさ。そして目の前にいる私はネズミなのか、犬なのか熊なのか、その正体は校長なのさ!と言っても君は知っていたようだね。ふむ。君の個性を聞いてもいいかい?ワープ系統の個性だろうか。それにしては慣れてないようにも感じるね!」
トーヤと根津の呑気な会話に気を緩めるヒーローも複数いた。しかし、一部のヒーロー等はその警戒を解くことはない。その時、先程の穴から一人の女性がまた顔を出した。
「トーヤ?無事?」
「おー!メルシー!やっぱあの亀、新生物っぽいぞ!いや、絶対新生物だね!これで俺も見習い卒業だ!」
「いや、突然そんなこと言われても、何がわかったの?」
突然始まる二人の呑気な会話に周囲は困惑する。相澤はもう一人も捕らえるべきか。それとも個性の暴走したただの一般人か、と悩んでいた。
「話してるとこすまないけれど、君たちのことを教えて欲しいのさ!君たちが敵かそうじゃないかを見極める必要があるのさ!」
「ヴィラン?」
「メルシー!ここは俺に任せな!んんっ。ドーモ、イセカイカラキマシタ、ビショクカデス。ドーゾ、ヨロシク」
「異世界?トーヤ、あんたの故郷ってこと?」
「んー、違うかな。ほら、前にトリコさんから話を聞いたさ、ルフィさんと悟空さんの話しあっただろ?あんな感じの世界よ。俺のは別の世界さ。」
「ふむ、異世界か!興味深いね!それが本当ならどうやってこの世界が異世界だと分かったのか気になるところだけど、まぁ信じるとしよう!それで、その先が異世界になってるのかい?」
「おー!さすが話が早い、多分そうなのよ。亀の背中に穴があってよ、そしたらここに繋がってたって訳よ。」
「校長、余計な心配かもしれませんが敵である可能性があることも忘れないでください。まぁと言ってもここにいるのはほとんどがヒーロー。そしてそこに壁の飾りとなっているオールマイトもいるので被害を気にしなければ何とかなると思いますが。」
相手に警戒を促すための一言か、指し示されたオールマイトは(あ、私かい?彼らはなんかいい人な気がするんだよなぁ)なんてことを考えながら構え、トーヤはそちらを見て自分たちの世界でも相当な実力者に入れるその力に驚き、メルシーはそことは少しズレた場所で目を見開いて固まった。
「トーヤ…ヤバいのがいる」
「ん?オールマイト?大丈夫だって、悪い人じゃないって分かれば攻撃してこないよ。」
「そっちじゃない、あのコックの人、小松シェフに並びそうなレベルで食運が溢れてる。凄い、久しぶりに見た、めちゃくちゃ輝いてる。」
メルシーには食運を見るという特殊な目がある。そのおかげでトリコたちの目に止まった。その時は小松の溢れ出る食運に導かれたかのように引き寄せられた。その言葉に驚いたのはトーヤであった。食運とはこちらの世界にもあるのか。というものと、トリコ世界では無い世界でそこまで食運の高い人間が居たのかという驚きである。オールマイトレベルの戦えるものならまぁまぁいる。それ以上となると先代会長の一龍さんたちやトリコ達と多くいるので驚かないが、小松レベルの食運となると話が違う。そのレベルの食運を持つシェフはほとんどいない。
そして、話に挙げられたランチラッシュは彼らの登場からずっと固まっていた。しょうがない、分かってしまうのである。あの穴の向こうにある溢れんばかりの食材の世界。未知の食材達の匂い、クックヒーローとしての己の本能があちらの世界を求めているのがわかる。だからこそ、進まない話を進めたのがランチラッシュだった。
「校長、多分、大丈夫です。保証しますよ。ねぇ、君たちの世界の食材は無いのかい?作らせてくれ。料理を」
「あ、校長、私も保証します。彼らからは血の匂いはしますが敵という感じではありません。勘ですがどちらかというと私たちに近い気がします。」
「うーん。そうだね!一旦ならここは解散して入学式の準備をしてもらうのさ!時間は無いからね!、ランチラッシュ君と、あとヒーロー科教員達に残ってもらうのさ!オールマイトは出来れば外で待っててくれると嬉しいのさ!困った時に助けてもらうためにね!」
その言葉をキッカケに少しずつ場面は動き始める。人が減って行ったあと、トーヤとメルシーと、雄英教職員の話し合いが始まった。と言っても事実確認はあちらの世界を確認することを求めたランチラッシュや、メルシーが持ち出した食材で二人の行う調理、そしてその時に使われる調理器具などで別世界の可能性が高い。と言ったところまでは落ち着いた。
「うーん。そうだね、君たち、向こうの世界とこちらの世界を行き来できるのかい?あれは閉じることはないのかい?」
その根津の質問に答えたのはメルシーだった。
「おそらく大丈夫です。繋がりの深かった亀の甲羅を持ってきました。多分これが置いてあるところの近くにゲートが移るのではと感じます。」
メルシーの答えは勘。しかしその勘は食運の高いものや食運が見えるような特殊な力を持つものにとっては一定の根拠になる。根津はあちらの世界ではそういうものが分かるのか、と納得し話を進めた。
「君たちの保護者か、上の人に連絡をして欲しいのさ!どうせ放置してても時間の問題、こちらは君たちをある程度は受け入れる用意を始めるのさ!」