狩人世界の入道使い   作:N2

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19.その頃の彼ら

 ヨークシンのとある安ホテル。

 

「よーし乗ってきた!!もう一杯行っとこ!!」

 

「いいねいいね!やっぱ、お酒は楽しく飲まなきゃ嘘だよねー!」

 

 幻影旅団に捕まり、自分たちを見張っていた男、ノブナガから必死の思いで逃げてきたキルアは緊張感の欠片もない光景を目の前にして微妙な気分になっていた。

 

「人が捕まってた時に酒盛りしてたんか、こいつら」

 

「おー戻ったか。ゲッ、いつの間にかすっかり夜じゃねーか」

 

 レオリオが返ってきたキルアとゴンに気づき、お前らも飲めと絡んでくる。

 

「レオリオ、確か未成年って言ってただろ」

 

「オレの国は16からアルコールOKだぞ。オレは12から飲んでたけど」

 

「そーそー!5歳から飲酒OKな国だってあるんだから細かいことは気にしない気にしない!」

 

 キルアの指摘に対してレオリオはごく自然にそう返し、一緒に飲んでた()()が追随する。

 

「はぁ、ったく。競売の方は大丈夫なんだろうな?()()()()()

 

 

 

 

 

 ゴン達一行がナズーリンと出会ったのは偶然だった。

 値札競売市でゴンの目についたナイフ。ベンズナイフと言う隠れた名品だったのだが、お宝かもしれないとキルアに聞いてその場で売ってほしいと交渉するレオリオと、先に入札した人がいるから規定時刻まで売れないと言う店主のやり取りに乱入してきたのが、そのナイフに入札していたナズーリンだった。

 レオリオに対してマナー違反だと憤っていたのだが、彼女は一輪の部下の一人であり一輪の元に滞在して修行していたゴンやキルアと面識があり。結果、ナズーリンがその場でナイフを購入することでその場は収まった。(店主曰く、他に入札してる人もいないからいいよとのこと)

 話を聞くと、彼女は掘り出し物探しが趣味とのことで、毎年ヨークシンのオークション期間は休暇を取ってヨークシンをうろついているらしい。暇と言えば暇とのことで、目利きとしての能力がある彼女にゴンとキルアが思いついた念でぼろもうけ大作戦の協力をしてもらうこととなった。

 そして、競売市では首尾よく有名作者の限定リトグリフに手作りのアンティークドール、そして財宝の詰まった隠し金庫木造蔵を手に入れ業者市に出品することとなったところで、マフィアに高額賞金を懸けられていた幻影旅団の目撃情報が入ったため、競売を彼女に任せてそちらに向かったのだが……。

 

 

 

 

 

「…………んなことがあったのか。おめーら、よく無事で帰ってこれたな」

 

「まったくだ。幻影旅団に捕まって無事で済んだなんて運がいいよ」

 

 ゴンとキルアは幻影旅団を捕まえるどころか、逆に捕まってしまう始末。帰ってこれたのは単に奴らが探してる相手ではなかったから。まあ、実力を考えれば捕まえようというのがそもそも無謀だった。

 

「そう言えば聞いてなかったけど、なんで賞金稼ぎの真似事までしてお金稼ごうとしてるのさ?あなたたち、そんなお金にがめついタイプじゃなかったと思うけど」

 

 ふと気になったと言う風にナズーリンが尋ねる。正直、ナズーリンからすると破格の賞金がかかっていようと幻影旅団の相手なんて御免こうむりたい。まあ、彼女自身が戦闘要員でないこともあるが、今のゴンやキルアにとっても危険度は変わらないだろう。ゴンはともかくキルアはその辺のリスクヘッジもできるだろうに、そんな彼がなぜ特大のリスクを背負ってまで金稼ぎに精を出すのか、純粋に気になった。

 

「あ、そう言えば言ってなかったっけ。グリードアイランドってゲームをオークションで競り落としたいんだ」

 

「グリードアイランドを?」

 

「うん。親父の手掛かりがグリードアイランドにありそうなんだ」

 

「……それなら旅団を追っても無駄かもしれないよ」

 

「え?」

 

 その言葉に、ゴンとキルアがナズーリンの方を見る。

 

「無駄ってどういう意味だよ?確かに実力的にきついのは分かってるけど、他にグリードアイランドを競り落とす金を短期間で手に入れる方法なんてそうないだろ」

 

「んー、そうじゃなくて、仮に奇跡的に賞金かかってる旅団全員捕まえたとしても、多分140億じゃ足りない」

 

 え、と思わず声をあげるゴンとキルア。

 

「バッテラっていう大富豪がいるんだけど、金に糸目をつけずグリードアイランドを買い集めてる男でね。ゲーム自体に170億ジェニーの懸賞金をかけてる。

 今回、オークションに出るグリードアイランドに関しても買い占めを公言しててね。当然、最低でも170億以上は出してくるだろう。あるいは、200億300億だってね」

 

「まじかー……140億稼ぐのだってかなり危ない橋なのに、その倍以上なんて稼ぐアテねーぞ」

 

「うーん……」

 

 頭を抱えるキルアと考え込むゴン。どうやら、140億で足りないと言うのは想定してなかったらしい。

 

「……そのバッテラさんだけど、ゲームを買い占めるってことはそれだけプレイヤーも必要になるよね」

 

「当然そうなるね。流石に腕利きの能力者をそれほど大量に抱えてるなんてことはないだろうし、外部から募集することになるだろうけど」

 

「ならさ、俺たちがそのプレイヤーとして雇われるのは無理かな?」

 

 ゴンがさりげなく放った言葉に、キルアも顎に手を当てて考えを巡らす。

 

「そうか、俺たちはゴンの親父の手掛かりを探すためにプレイできればいいんだもんな。確かにその方法なら今から金を稼ぐよりよっぽど現実的だ。行けるぜ!グリードアイランドの出品されるオークション会場に行けばバッテラがいるはずだからそこで交渉して……!」

 

「いやー、そのやり方じゃ無理だと思うね」

 

「なんでだよ!」

 

 盛り上がってたところに水を注されたキルアは不満そうだ。

 

「だって、ゴンってハンターとしての実績皆無じゃん。キルアに至ってはアマチュアだし。そんな人間がいきなりアピールしても雇ってもらうのは難しいって」

 

「あー、そりゃそうだな」

 

 ナズーリンから放たれた現実的な言葉に、レオリオが同意する。

 そう、いかに才能があろうと、ゴンとキルアはハンターとしてルーキーとアマチュアでしかないのだ。いきなり、大仕事を受けることは簡単ではない。

 当然と言えば当然のことだが、これまでゾルディック家のネームバリューの元で生きてきたキルアにはその辺の認識が欠けていた。

 

「つっても、今からバッテラの出せる額を上回るだけの金を稼ぐのは無理だろ。なんとか、雇ってもらわねえと」

 

「そうだね……ちょっと待ってね」

 

 そう言って、パソコンを操作するナズーリン。しばし、それを見守る。

 

「あったあった。バッテラ氏のプレイヤー審査の告知」

 

「プレイヤー審査?」

 

「うん。プレイヤーを募集するけど、採用する相手は厳選するって話。……審査への参加資格はオークション会場へ入場できること。プロアマ問わずだとさ、運がいいね」

 

「カタログはもうあるから、オレたちは審査を受ける条件は満たしてるわけだね。いつ?」

 

「9月10日のオークションが終わってすぐ。そのまま、オークション会場を使って審査会をやるらしい」

 

「なら、その審査に合格すればグリードアイランドをプレイすることはできるわけだ」

 

 キルアが不敵な笑みを浮かべながら言う。自分が落とされる可能性なんて考えてない自信満々な顔つき。

 実際、キルアは実力で言えばアマチュアながら並みのハンターを上回っているし、ゴンもルーキーとしては十分に上澄みだ。

 しかし、ハンターの仕事は戦闘力だけですべてが決まるわけではない。彼らは念能力者としては初心者を脱しているが、ハンターとしてはまだまだルーキーだ。

 

「そうは言うけどね。君ら、ハンターとしての仕事はこれが初めてだろう?なんか対策しといた方がいいんじゃない?」

 

 その言葉にキルアが侮られたと感じたのが少しムッとした顔を見せるが、特に反論はないようだ。

 

「対策かー。どうすればいいかな?」

 

 ゴンに関してはその言葉を素直に受け入れ、対策の方法を考え始めている。

 

「まあ、一番簡単なのは慣れてる人に指導してもらうことかな。木造蔵の競売でお金も入るし、審査までの期間で熟練の(ベテラン)ハンターを指導員として雇うとか?」

 

「指導員かー。メイリンさんじゃダメかな?」

 

「あの人は念能力の指導はできても、ハンターとしての指導は無理だよ。ハンターじゃないもん」

 

「つっても、そんな都合よく雇えるかあ?」

 

 レオリオが疑問を呈する。確かに、丁度ヨークシン近辺に予定があいてるベテランハンターがいるなんて、都合がいい話があるかと思うだろうが。

 

「バッテラの仕事は成功報酬が500億と大きい。審査を受けるつもりでヨークシンまで来ていて、審査まで暇してるベテランがいるかもしれない」

 

「なるほど。そりゃ、500億ともなると腕利きも来るわな」

 

 そして、名の知れたハンターならば足取りを追うことも(本人が痕跡を隠していなければ)難しくない。

 実力に自信があるならハンターライセンスを使って交通手段や宿の手配をすることも多い。そして、ライセンスの特典を受けられるのはある程度メジャーな会社だから、使用履歴がオンライン上に必ず残る。それを追えば、大体の居場所を突き止めることは容易い。逆に周辺の宿などの履歴を調べれば、近くにどんなハンターがいるのかも分かる。

 ちなみに、実力の足りないルーキーが同じようにライセンスで交通手段や宿の手配をしたら、その手段で居場所を突き止めたライセンス狙いの小悪党のいい獲物(カモ)になることになる。

 

「ん、丁度いい人がいたよ。二ツ星(ダブル)ハンター、ビスケット=クルーガー。お金で雇われてくれる相手なのも都合がいい。私が連絡をとっておこう。明日は友達と会うかもなんだっけ?なら、明後日から10日までの五日間の指導で……2000万も出せば雇えるかな」

 

「五日間の指導で2000万!?マジでか!?」

 

二ツ星(ダブル)の実績を持つハンターをそれで雇えるなら上等だよ。お金だけでは雇えない相手も多いし」

 

 その言葉を聞いたレオリオが、真剣に二ツ星(ダブル)ハンターを目指すか少し考えたのは別の話だ。

 

「指導員ねえ……本当に必要かよ?」

 

 それはさておき、キルアはまだ少し不満そうだが。

 

「ゴンもキルアも念能力者としての実力という点では合格点だろうけどね。丁度いいから、ここでハンターとしての基本も学んでおくといい」

 

 そう言われると反論もないらしい。実際、彼らはハンターとしてはルーキーなのだから。

 そんな風に話がまとまったタイミングで、部屋の中に電子音が響いた。その電子音の元……ゴンとナズーリンが携帯を手に取る。

 

「あれ、イチリンからだ」

 

「私もだ」

 

「イチリンからってことは、時間取れそうな日ができたって話か?」

 

「……いや、なんか予定に変更があって明日にはヨークシンを発つから悪いけど今回は会えないって」

 

「私の方もだな。私は休暇期間中はヨークシンに居てもいいけど、ボスたちは先に帰るって連絡だ」

 

 えー、なんだよ、つまんねーな。と文句を言う三人組を横目にナズーリンは思考を巡らす。

 このヨークシンのオークションはマフィア組織にとってかなり重要なことだ。その途中でヨークシンを発つ?

 

「なんか、厄介な事態になってそうな気がする……」

 

 ナズーリンの小声のつぶやきは誰の耳に届くこともなかった。




そんな感じでヨークシン編は終わりです。
この後、主役四人組による幻影旅団関連のあれこれがありますが、そっちは原作通りに進むのでカット。
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