「マーサ、おはよう。」
「あら貴方、今日は早いのね?」
最愛の妻にこう言える幸せ、私はその幸せに浸った。
ここはフィッシュベルという小さな漁村。
私と妻のマーサはここに生まれ変わった。
神の悪戯か、または天空の勇者の力なのかわからない。
だが、
パパス「お前は大丈夫なのか?もうすぐです産まれるのであろう?」
マーサ「大丈夫よ。それに動かないと身体に悪いもの。」
マーサが自身の腹部をさする。
目に見えて大きな腹部には私とマーサの大切な子供が眠っている。
今度は2人でこの子を育てていきたい。
マーサ「貴方、今日はどちらに?」
パパス「うむ、実はボルガノの家のアルスをグランエスタードの王の所に連れて行かないといけなくてな。最近王子が何やらコソコソ動いていてな、それをアルスに聞きたいそうだ。」
昨日わざわざ兵を私の家に寄越してまでする事ではないのだがな。
それに俺もあの王子と同じ歳の頃もヤンチャだったんだがな。
そのヤンチャでボロ船をアルスと一緒に修理していた事に驚いたが。
まぁ私も手伝ったがな。
マーサ「まぁ。それじゃあ帰りにお花の種を買ってきてくださらない?最近アミットさんのマリベルちゃんがお花を植えるって言ってたの。」
パパス「わかった。それじゃあ行ってくるよ。」
私は最愛の妻に口付けをして家を出た。
今日は漁の日か。
おそらくアルスはボルガノにアンチョビサンドを渡しに行っているだろう。
あいつ漁の日になるとしょっちゅう好物のアンチョビサンドを忘れるからな。
俺はボルガノの家に向かい扉をノックする。
「はーい。」
扉が開いて中からふくよかな女性が現れる。
「あらパパスさん。」
パパス「マーレ殿、突然の訪問申し訳ない。実はアルスに用があってな。」
マーレ「まぁうちのアルスに?それはごめんなさいね。アルスは主人の忘れ物を届けに行っているのよ。」
パパス「あいつは漁の日になると何故か好物のアンチョビサンドを忘れるからな。」
マーレ「パパスさんにはお見通しね。息子が帰ってくるまで中で待っていてください。」
パパス「ふむ。では失礼する。」
私はボルガノの家に入った。
椅子に座っているとマーレ殿が茶を出してくれた。
マーレ「貴方が来て10年ね。」
パパス「うむ。早いな。」
10年前、私とマーサはボルガノの船に拾われた。
その時の記憶は無かったがどうやら海を2人して漂っていたようだ。
気がついたら私は礼と事情を説明したがグランバニアという大国を知らないと言われる。
それどころか島がひとつしかないとふざけたことを言われる始末。
だがそうだった。
私はボルガノの漁の日に何度も付き添った。
その度にこの島以外何もないと知った。
だがそんな事は私にはどうでも良かった。
魔物が居ない平和なこの島で最愛の妻マーサがいる。
それでいいではないか。
マーレ「お腹の子は元気かい?」
パパス「ここの村の魚が美味いのと住民が優しいからな。マーサと共に元気だ。」
マーレ「そうかい!ちゃんと幸せにしてやりなよ。」
マーレ殿に言われるまでもない。
幸せにするさ。
しばらく話していると扉が開いた。
「ただいま母さん!」
緑の帽子をかぶった少年が入ってくる。
マーレ「おかえりアルス!」
少年はアルス。マーレ殿とボルガノの息子だ。
「お邪魔しますおばさま。」
アルスの後ろに少女がいた。
マーレ「おやマリベルちゃんも一緒かい?」
少女はマリベル。フィッシュベルの綱元アミットの娘だ。
アルス「あれ?パパスさん?こんにちは!」
マリベル「パパスおじさま。こんにちは。」
マーレ「アルス!パパスさんがアルスに用事だってさ。」
アルス「僕に?」
パパス「あぁ。実は王よりアルスを連れてきてくれと言われてな。今から行けるか?」
アルス「大丈夫だよ!ちょっと部屋で準備するから待っててください!」
アルスはそう言って2階にある自室に向かった。
マリベル「城下町に行くのですか?」
パパス「そうだ・・・そういえば妻がマリベルと一緒に花の種を植えると言ってたな。一緒に行くか?」
マリベル「いいのですか?」
パパス「うむ。私にはどの花が綺麗なのかわからないからな。」
マリベル「おじさまそんなんでよくマーサさんのような美人を捕まえましたね?」
ウグッ!
そう言われるとぐうのねもでない!
アルス「お待たせ!」
アルスが戻ってきた。
小さな袋を持っているくらいか。
パパス「それじゃあ行くか。マーレ殿、息子さんを安全に送り届ける。」
マーレ「そう固くなるんじゃないよ。この島に魔物はいないからね。」
パパス「それでもです。魔物はいなくても危険な動物がいます。」
マーレ「はぁ真面目だねパパスさんは。だけどそれが安心できるよ。息子をお願いね。」
パパス「うむ。」
道中は魔物どころかスライム1匹出てこない。
本当に不思議な所だ。
そして城下町に辿り着きマリベルとは一旦別れた。
彼女には花の種を買ってもらおう。
私はアルスを連れて城に向かう。
グランバニアほどではないが立派な城だ。
兵にアルスを連れてきたと伝えて城に入る橋を下ろしてもらう。
アルスは兵に連れて行かれた、私は城下町に戻ろうとすると兵士長に試合をしてほしいと頼まれた。
仕方ないから手合わせをする。
10年前にこの城でこの兵士長と手合わせした時はあまりの弱さに思わず稽古をつけてしまった。
平和が兵士の能力をダメにするのか?
だがそのせいか知らないが今では国一の戦士になってしまった。
しかもこの兵士長がこの国の王子の剣の稽古係になっているとは思わなかった。
王からも兵士として働かないかと言われるが私は自由を愛する者だからと断った。実際はマーサと一緒に居れる時間が無くなるのが嫌だからだ。
稽古を終えて城下町に戻りマリベルを探す。
まぁあの猫被りのお転婆娘は何故かマーサに懐いているからな。
マーサの頼み事である種は買ってあるだろう。
俺は町を白潰ししながら回ると宿屋から出てくる所を見つけた。
まぁ彼女がどこの誰と会おうが私の知ったこっちゃ無いがアミットを心配させないでくれよ。
私は声をかけると花の種を見せながらこっちにやってきた。
そのありすぐにアルスが町に来たため村に戻ることになった。
そして数日。
マーサの陣痛が始まった。
私は教会に行きシスターを呼んだ。
マーレ殿や村の女性全員が来てくれた。
俺はボルガノの家で産まれるまで落ち着かずウロウロしている。
アルスとマリベルと何故か居る王子のキーファが心配そうに俺を見ている。
マリベル「おじさま。そんなにそわそわしていても意味ないから座ってたら?」
パパス「だが・・・」
マリベル「出産は女の仕事よ。男の人はただ黙って待っている事よ。マーサさんを信じて上げなさいよ。それともおじさまはマーサさんを信じて上げれないの?」
パパス「何を言う!私は何よりもマーサを信じている!」
マリベル「だったら座って待ちなさいよ。」
むむ、小娘にここまで言われるのは嫌だな。
私は黙って椅子に座る。
アルス「パパスさんはマーサさんとどうやって知り合ったんですか?」
アルスが突然そう言ってきた。
なんだ急に?
キーファ「俺も聞きたい!パパスさんがどうやってあんな美人を捕まえたのか!」
このバカ王子も何を言っている?
マリベル「私も気になるわ。教えておじさま!」
こうも3人に言われると仕方がない。
この島にはない国の名前などを言うと信じられないと言われるかもしれないがまぁ致し方ない。
私はマーサとの馴れ初めを話した。
話している最中に扉が開いた。
マーレ「産まれたよ!元気な男の子だよ!」
私はそれを聞くと急いで家に向かった。
家の扉を開けるとそこには・・・
マーサ「貴方・・・」
パパス「マーサ・・・」
マーサ「貴方、見て。また元気な男の子よ。」
パパス「そうだな。」
マーサ「名前は決まっているの?」
パパス「そうだな・・・トンヌラ・・・ではなく・・・リュカ・・・リュカにしよう。」
マーサ「そうね。それではこの子の名前はリュカ。リュカよ。」
マーサの言葉にリュカは笑ったように見えた。
更に数日、ボルガノが漁から戻ってきた。
それにより村はお祭り騒ぎだ。
ボルガノは産まれたばかりのリュカを見てリュカはボルガノに驚き泣く。
それをマーサがあやす。
私はマーサと一緒に村を見ているとマリベルがどこかに走って行くではないか。
女の子がどこに行くのかと思うと次はアルスが走って行った。
パパス「マーサ、すまないがアルスがどこかに向かった。ちょっと後をつけてくる。」
マーサ「はい、行ってらっしゃい貴方。」
私はマーサとリュカの額に口付けをしてアルスの後を追った。
アルスを追いかけて木々を抜けた先には遺跡のような場所に来た。
廃れた遺跡だがどことなく神秘を感じる。
そこの奥にアルス、キーファ、そしてマリベルがいた。
パパス「何をしておる?」
私の声に驚く3人。
アルス「パパスさん!?」
パパス「お主とマリベルが出て行くところを見てな、気になって追ってきたが・・・キーファよ、何をしようとしている?」
キーファ「パパスさん!今回はどうか見逃してください!俺は気のなるのですどうしてこの島しか無いのか!何故周りは海しかないのか!もしかしたらこの遺跡に答えがあると思うのです!」
キーファが頭を下げてくる。
王族に頭を下げさせるなんてやってはいけないだろうが・・・
パパス「・・・仕方ない。今回は見逃してやる。しかし条件がある。」
キーファ「条件?」
パパス「私の行こう。」
「「「えっ!?」」」
何故驚く?
パパス「子供だけでは不安だ。私も着いていく。もし君らに何かあったらご両親が悲しむ。だから着いていこう。」
アルス「キーファ!パパスさんにも来てもらおうよ!」
キーファ「おう!そうだな!」
マリベル「お願いしますおじさま!」
パパス「よし。では行くか。」
私達は遺跡に入った。
これから先おかしな出来事や色々な出会いがあると知らずに。