タイトル通り異世界で狩人様がBloodborneな感じです。
pixivにも同タイトルで投稿してます。

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なろう系ブラボ

都市部の教会のような厳かな祭壇が部屋奥に鎮座し

貴族屋敷の大広間のごとき空間。

祭壇の正面では腕から鎌を生やした人型の何かが

表音不可能な叫びを繰り返し身をよじらせ悶える。

対岸には、植物の文様が彫られた鈍色の開門扉の前で

一人の少女は今にも閉ざされる扉に縋りつく。

 

「な、なな・・・なんで・・・?」

 

扉に指が触れる寸前、少女の身に衝撃が走り後ろにはじき飛んでしまう。

痛みで明暗する視界をこらすと扉の向こうで杖を構えている女性が口元を怪しく細める。

少女は彼女がなんらかの魔法を行使したと悟る。

金の髪と鋭い目つきの青年は扉を閉めるのを止めず少女に語る。

 

「お前は良いやつだったと思うよ。何のとりえもない荷物持ちのくせに

 オレ達Bランクについてきてくれたんだからなぁ。

 だがよ、もうすぐAランクってとこで欲を出したのがまずかった。」

 

「今のオレ達ならAランクのダンジョンも踏破できると・・・

 だが、道中で装備はボロボロ、アイテムもつき欠け。

 おまけに罠を踏んで”主”の部屋まで一直線だ。」

 

「利益が出るくらいの”遺物”も回収できた。

 でも”主”はオレ達を逃さない。

 じゃぁ、逃げれる状況を作るしかないよな。」

 

しょうがない。仕方ない。運がなかった。

わざとらしい雰囲気を醸しながら少女を囮として使うことに決めた。

そして青年は、もう一度扉に駆け寄る少女を一瞥もせずに扉を閉めた。

少女は、何も言わなくなった扉の前でへたり込んだ。

が、むりやり思考を切り替える。どうすればここから生き残れるか。

少女自身分かっていた。自分では”主”を倒せない。けれど何もせず終わりたくはない。

ここで”主”のほうへ体を向けれたのは著名なBランクの冒険者パーティーにこれまで

ついてこれてた虚勢かまたは諦めからの無謀な逃避か。

少女は腰に差した採取用ナイフを構える。

 

“主”は少女の倍以上の体躯へと変貌しまるで獣のような体毛と四肢

捻子くれた角を生やした二足歩行の化け物がとろけた眼孔で少女を見下ろしていた。

 

 

 

[ダンジョン]世界各地に突如現れる謎の空間。

ダンジョン内には人に害をなすモンスターが跋扈しており

その最深部には”主”と呼ばれる人知の及ばぬ怪物がいるとされ、

侵入者を容赦なく出迎える。

だが、[ダンジョン]には宝飾品や、外では希少な自然物が群生しているとされ

人々はその危険に見合わぬ強大な見返り”遺物(アーティファクト)”を求めて[ダンジョン]に向かう。

 

「ア˝ァッ・・・!」

 

巨木のような腕を振るわれただけで少女の身は坂を転がる石のごとく弾かれる。

痛む体に鞭を打ち、腕をしならせ体ごとこちらに振り下ろしてくる”主”の横を

転がり攻撃を紙一重で避ける。

すぐさま、[収納箱]から火炎壺を取り出し”主”に投げつける”。

体の遠心力を利用して投げつけられた火炎壺は”主”が反応する前に顔に直撃し

一気に周辺が燃え上がる。甲高い奇声を上げながら両手で顔の火を叩き落とす主。

“主”の体は顔以外にも黒く焦げている部位が数か所あるが、どれも小さく決定打には

至ってはいない。

少女は”主”の反応から火は有効であると判断するがこれまでを鑑みて顔や手等の

体毛が薄い場所に当てないと意味がないと悟る。

勝機は見えたように思えた。だが、[収納箱]にはもう投げつけれるものなど無かった。

 

荷物持ち(ポーター)”は、”スキル”[収納箱]を使用し自身が内包する異空間に物を収める

事ができ、極めたものは平屋一棟をしまうという。

少女は、自身のスキルでは巨大なものはしまえず大量に入れられる許容量もない。

それでも、パーティーの、誰かの役に立ちたく[収納箱]の速度を鍛錬した。

今では”スキル”を発動した瞬間に指定の物を取り出し収納できるようになった。

この状況ではそんな事は何も意味がなかった。

 

何度も何度も”主”の攻撃を避けナイフで切りつけるが歯牙にかけず腕を振り回す。

ついには体力が尽き、”主”の攻撃を受けてしまう。

 

「ガッッ・・・!」

 

突き飛ばされ壁に激突し、衝撃で肺の空気が一気に押し出され乾いた苦しさと

全身を支配する鈍痛と鉛みたいな重さの体を動かそうと力を入れるが、

目は重く指の一本も動けず呼吸はヒューヒューと荒く動くのみ。

もう終わりなのかな・・・。と少女は心の中で初めて弱音を吐いた。

すぐに考えを改める。死にたくない。たとえ見苦しいと誰かに嘲笑されても生きていたい!

向かってくる足音が近くなる。刺し違えてでも・・・、指を何とか動かしナイフを探る。

指先にコツンと固く冷たい物が当たる。

 

 

重たい目を上げ指先を見るとそこには道中で拾った”遺物”とおもしき小さな鐘。

だが、この鐘は音を鳴らす舌が無かった。パーティーメンバーは鳴らせない

装飾等もされてない鐘を価値の無い物とし、捨てるように言った。

少女は鑑定してもらったら何かしらの結果が出ると思い[収納箱]ではなく

衣服のポケットに入れていた。

突き飛ばされた拍子に転がり落ちていたようだ。

鳴らせない鐘になにができようかなにに縋ることができようか、

それでも少女は鐘を手に取り何かに祈るように鐘を揺らした。

 

─ コォーン・・・コォーン ─

 

鳴るはずの無い鐘が鳴り、鐘を中心に透明な波紋が音に共鳴するように

広がる。水面に投げ込んだ石のように。

少女は気づくと目の前に、暗い空間が浮かんでいることに意識を奪われた。

それは宇宙だった。黒く滲んだ色が広がり砂粒のごとき無数の星々が怪しく

刺すように光を放っていた。

少女はその特異な光景に見惚れていた。そして悟った宇宙は空にあると。

部屋中に歪な咆哮がつんざく、”主”が少女との間に存在する宇宙に向かい叫ぶ。

鐘の音と共にひと際大きい波紋を打ち宇宙は溶けていった。

 

“主”と少女の間には黒い外衣を着込んだ背の高い男が佇んでいた。

いつの間に?あの空間からでてきた?謎の男の存在に少女の頭を疑問が支配する。

その人は首を回し倒れている少女を見下す。

貴族や商人が着ていそうな上質な装いに鼻まで隠すマスク、枯れた羽を想起させる三角帽。

少女は唯一露出している男の目元から覗く目と合った。

二つの眼は仄暗く少女は先ほどの星がきらめく宇宙よりも暗い枯れ井戸の先、

深淵を覗いてしまったかのような冷たさを感じ背筋に冷汗が流れる。

 

男は少女から正面に向き直る。男の両手にはいつのまにか二つの得物が握られていた。

”主”は突如現れた男に襲い掛からず得体の知れなさを

本能で感じ取り観察するように男を睨む。

石畳を踏みしめ肥大化した腕を男に振り下ろす。

少女と相対してときとは比べ物にならない膂力ある動き、少女は目の前の男の

これからを想像してしまい目を背ける。

腕が石畳を砕き空間を揺らすほどの奇声を発する、だが目の前に男はおらず

苦しみ叫ぶ”主”の背後、右の得物を振るいそのわき腹を削り斬った男の姿だった。

右手に握られている半月状の刀身には棘にも似た刃が不規則に並べられており

ノコギリを想起させる。

だが、それは武器と呼ぶにはどこか残虐で確たる目的によるものと少女は感じ取った。

 

 

“主”が男を叩き潰さんと猛攻を振るう。

男は振るわれた腕の僅かな隙間を縫うように果敢に攻める。

四足獣のように身を屈め懐に入りこみ”主”の胴体を何度も何度も切り裂いていく、

そして男と”主”共々あたりは血に濡れているが、どちらが疲弊しているかは

少女にも一目瞭然であった。

 

“主”はふらつく足に力を込め、再度こちらに近寄る男に向けて右腕を振り下ろす。

男は自身が”主”に詰め寄るより早く腕が下されるのを悟り、後ろに下がる選択をした。

だが、”主”はそれを狙っていた。腕が石畳を叩く勢いのまま飛び上がり男に向かい

全身を急降下させる。

直撃は免れたが、男は衝撃に耐えれず蹴られた小石のように転がされる。

“主”は体勢が崩れた男を見逃さず、先ほどよりは低くしかし速く踏みつぶさんとばかりに

飛び掛かる。

男は回避を取らざるを得なくなり、態勢を立て直すこともできず体を転がし続け、

そして、背中に固い衝撃が走る。壁に追い込まれていた。

 

“主”は煮え湯を飲ました男を漸く叩き潰せると歯牙を見せながら腕を振り下ろす。

少女は今度こそ男が殺されると声を張り上げて逃げるように促す。

振られる腕が空を切る音、少女の叫びそれらをかき消すように破裂音が響いた。

男は左に握られた木と金属の筒を”主”に向けて”発砲”していた。

筒からはうっすらと黒い煙が上がっており、血とカビの臭いが充満する空間に

火薬の臭いが新たに漂っていた。

少女でもそれの存在は知っていた、上流階級の間で流行っている銃という道具。

だが、火薬と専用の弾それに銃そのものの複雑さと生産性の関係から、

一般市民はおろかAランクの冒険者も手に入れることができないと言われている

嗜好品(ブランド)

 

 

虚を突かれた”主”は面となって放たれた弾を正面から受けてたたらを踏む。

男は中腰から前転し距離を詰め得物を振るい、腕を斬りつけ下した刃を振り上げる。

その勢いのまま男は得物の仕掛けを解いた。

半月状の刀身は展開し、その姿は長柄の鉈へと変形し"主"の片腕を撥ね落とした。

刃は固い皮膚を削り切る用途から重さで断ち斬る曲線の物へ、

重心が移動したそれを遠心力と重力を乗せて”主”へと振り下ろす。

刃は”主”の前頭部をかち割り、その勢いのまま地に突き刺さる。

男は武器から手を放し、朦朧とする”主”の眼に自身の手を突き刺す。

眼球を潰し血肉をかき分け頭の奥を掴み、そして渾身の力を込め

腕を振り抜いた。

 

“主”は力なく人形のようにだらけたまま石畳を数度撥ね、

勢いが止まり一度だけ痙攣し、活動を停止した。

 

YOU HUNTED獣を狩った

 

少女は驚愕した。

見たこともない得物を振るい死にたがりと思えるほど、

果敢に攻め込み敵を追い込む。

冒険者はさまざまな人種がいる。誰もが各々の経験を持った戦い方をする。

礼節を持った決闘とも力任せで野蛮な攻撃とも格式と儀礼の魔法とも違う

男の戦いは獣のように貪欲で人のように理知的、それは正に”狩り”だった。

 

男は少女の前に立ち静かに見つめる。

少女はまだ痛む体を抑えながらゆっくりと起き上がる。

首を上に傾け改めて男が自分よりもかなり長身だ。

お礼を言いたいが、男の様相と先ほどの戦いの余韻で口が回らない。

しばらく見つめあっていると急に、男は少女の周りをぐるぐる回りだした。

突然の奇行に少女は目を丸くする。

数周ほど少女を軸に周っていると男は少女の目の前でぴたりと止まり、

何かを探るように男は自身の腰裏をまさぐる。

そして一つの小さな銃を握り、ゆっくりと銃口を上げる。

撃たれる!と思い少女は身構えるが、銃口は少女を通過し天に向けられる。

 

パスン…と間の抜けた音が沈黙を破り…辺りはまた沈黙に支配される。

男は一瞬項垂れ、天を仰いだ。少女は訳が分からず首を傾げた。

 

 

 

 


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