走れるから走るだけ   作:鈴木颯手

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第三話「人間とウマ娘」

「馬鹿じゃないの?」

 

 その人物、同じトレーナーであるおハナさんの辛辣な言葉に何も言い返せない。俺がショッピングモールでやらかしてから三日が経った。俺がセクハラ、にしか見えないがウマ娘の太ももを触ったせいで不審者として突き出されかけたが相手が求めた多額の金銭で示談を成立させることができた。おかげで俺は貯金をすべて失い今見ているゴールドシップやウォッカからは蹴られまくってボロボロになりとどめとしておハナさんからの言葉を受けたわけだ。

 

「まぁ、確かに貴方は見ず知らずの娘を触る癖はあるけど……」

「おハナさん、その言い方だと俺が変態にしか聞こえないんだが?」

「そうではないの?」

 

 違う、といいたいところだが何も言い返せないな。今回は初めてつかまりかけたわけだし次からは気を付けないとマジで両手に手錠を付けることになりそうだ。

 

「……それで? 相手はどんな娘なの?」

「はっきり言って三冠を狙えるやつだった」

 

 おハナさんの目が真剣な表情になったから俺は噓偽りなく答える。正直に言ってあのウマ娘、シュバルツカイザーはやばい。見た時からその名に恥じない王者の風格が出ていたし実際に触ってみればそれが風格だけではなく実力もあってのものだと理解した、理解させられた。

 

「それほどなの?」

「ああ。はっきり言うが強者っていう言葉が似あうやつだった。見た時からだが触った瞬間に俺は()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()。恐らくだが勝負になるウマ娘は片手で数えられる程度しかいないはずだ」

「……そんな娘が埋もれていたなんて。で? 特徴はあるの?」

 

 おハナさんもチームリギルというウマ娘達のトレーナーだ。気になるんだろう。俺としてもごまかしたり噓をつく理由はない。正直に話していく。

 

「黒髪にセミロングのストレート。表情はキリッとしているというか素で王様っぽい雰囲気を出していたな。年はたぶん10代中ごろ。恐らくだがトレセンには通っていないがレースの出場経験はあると思う」

「? レースには出ているのにトレセンには通っていない?」

「ああ、たぶんだが違法レースに参加しているんだろう」

 

 違法レースの言葉を聞いておハナさんの顔が歪む。まぁ、こんなことをいう俺の顔も歪んでいるだろう。

 違法レース。それは僅かな金を与えることでウマ娘達を見世物にする最低なレース場の事だ。そこにいるのは腐った金持ちどもにウマ娘を道具としか考えない主催者だ。更に参加するウマ娘も様々な事情により違法レースに出るしかない者ばかりだ。

 

「それはつまりそのウマ娘は何かしらのドーピングをしているってこと?」

「いや、違うだろう。恐らくだが素の実力だ。だから違法レースに出ているかもしれないとしか言えないんだ」

「もしそうならトレセン学園に通えない理由でもあるのかしら……」

 

 実力がありながらトレセン学園に通えない者は一定数存在する。そもそもトレセン学園が近くにない、性格に難があって受け入れてもらえなかった等大体が断念せざるを得ない理由ばかりだ。

 それだけに彼女、シュバルツカイザーが何故トレセン学園に通わないのか理由がわからなかった。別に走れないわけじゃない。距離の問題でもないだろう。なら親に反対されている? 違法レースには出ているのに? なら金のためか? あり得る話だ。違法レースで勝てる実力者なら簡単に金を稼ぐことができる。

 

「どちらにしろもう一度会ったら話をしてみようと思っている。あんな脚質をもった奴を違法レースで使いつぶすなんて勿体ないからな」

「あら? 示談で済んだとはいえ不審者と認定された貴方が近づいたらまた警察が呼ばれるんじゃない?」

「……」

 

 おハナさんの言葉に俺は何も言えない。実際、示談で済んだが次はマジで訴えられそうだ。彼女からはそんな雰囲気を感じ取れた。

 

「ま、まぁ。流石に面と向かって話せばわかってくれる、はずだ……」

「……そんなんで信用しろと? 変質者が正面から来たって余計に警戒されるだけでしょ」

「そ、それはそうだけど……。ならおハナさんも一緒に来るか? 俺から聞くよりも実際に見たほうがいいだろ?」

「……」

 

 俺の言葉に悩みこむように黙ったおハナさん。流石に俺一人で行くより女性のおハナさんがいたほうが話がこじれることもないだろう。おハナさんだけで行かせてもいいがそれはそれで話を持っていくのが難しいからな。見ず知らずの人が一方的に情報を知っているなんて警戒させる理由にしかならねぇしな。

 

「わかったわ。私としてもあなたがそこまで言うウマ娘が気になるもの」

「おっと、最初に目を付けたのは俺だぜ?」

「セクハラで訴えた人に教わりたいと思う娘がいると思っているの?」

 

 は、はは。おハナさんは本当に言葉がキツイぜ……。

 

 

 

 

 

 

 そして、そんな二人には想像することもできないだろう。シュバルツカイザーの正体が大きすぎる特典を望んだ結果、前世の記憶を失った転生者であるなどとは。何しろ本人すら理解していないのだから。そして、その結果としてウマ娘なら必ず持っている勝利欲求や競争意識と言った本能を失っていた。

 そう、彼女は本当に()()()()()()()()()なのだ。そんな彼女の事情を理解できるはずがないのだ。出来るとすれば本人か、この世界に転生させた神くらいだろう。だからこそ、二人がシュバルツカイザーへの説得のために用意したカード全てが無意味で終わることになるのはこれから少し先の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ウマ娘という存在は基本的に無駄に大飯ぐらいだ。中には人間と同じ量で済む者もいるらしいが私は違う。最低でも一般成人男性の二倍は食べる。つまりコンビニ行けばお弁当を最低でも二つは購入し、そこからおにぎりや総菜なども食べないと腹が満たされないのだ。

 今でこそ違法レースで稼いでいるために食費には余裕があるがそれまではその日に食べる物に困るほどだった。もうあんな思いはしたいとは思えない。

 さて、今日は予定もないし臨時収入(示談金)が入ったから例のショッピングモールにでも行こうと思っている。午前中はゲーセンで遊び、昼食はモール内の店舗を利用。午後は本を買って閉店時間まで読もうと思っている。つまり一日中モールで遊び倒すというわけだ。

 しかし、それゆえだろうか? 普段やらない一日モールで遊び倒そうとしたせいか私は意外な人物たちに会うこととなった。

 

「お前がトレーナーが言っていたやつだな!」

「ごめんなさい。トレーナーが迷惑をかけたみたいね」

 

 私の前には3人のウマ娘がいた。そのうちの一人は前回変質者……、トレーナーと一緒にいたゴールドシップだ。残り二人も関わり合いがわからないがどういった人物かは知っている。ダイワスカーレットにウォッカ。実力でいうのならゴールドシップに勝るとも劣らないウマ娘たちだ。

 

「この間はごめんなー。うちのトレーナーって職業柄ああやって確認することが多くてさ。別に女性に触りたいからしたわけじゃないんだよー」

「ええ、私はもう気にしていないので問題ありません」

 

 誠意は見せてくれたんだ。これ以上話を蒸し返すつもりはない。だがこうして示談金を手に入れたせいでからまれていると考えるといら立ちを感じてしまうな。

 

「……それより3人は何故ここに? 学校はいいんですか?」

「何言ってんだ? 今日は日曜日だぞ」

 

 ああ、そうだったのか。道理で人が多いわけだ。どうもこんな生活を続けていると曜日の感覚がおかしくなってしまう。加えて気にする性格でもないから余計にな。

 

「そういえばそうでしたね。3人は遊びに来たんですか?」

「まぁ、正確にはスカーレットの服を買いに来たんだけどな。こいつこの前新調したのにもうサイズ合わなくなってさ」

「ちょっと!? 勝手に何言ってんのよ!」

 

 ウォッカの言葉にダイワスカーレットが顔を赤くしている。……この反応から見て服は下着の可能性が高そうだな。確か中等部だったがまだ成長するのか。まぁ、うらやましいとは思わないけどな。私だってそれなりにあるしこれ以上成長するのなら邪魔にしか感じないからな。ちなみにサイズは87のDだ。日本における平均程度の大きさだ。

 

「お、そうだ。お前も一緒に来ないか? 皆で買い物したら楽しいしさ!」

「それはいいわね。トレーナーの馬鹿がやらかしたお詫びも兼ねてね」

「……」

 

 正直に言ってめんどくさい。だが態々絡む必要などはないが断る理由もない。別に悪い者達ではないし少しくらい遊んでも問題はないだろう。たまにはこういった経験をしておくのも悪くはないだろうしな。

 

「わかりました。それではご一緒させてもらいます」

「おう! だったらその口調はやめて素の喋りでいいぜ? 明らかに壁を作っているように聞こえるからな」

「……わかった。なら普通に喋らせてもらう」

「ええ、私もそっちのほうがいいと思うわ」

「おっし! んじゃ早速どこにいくか? スカーレットのブラが先か?」

「だ! か! ら! なんで人前で言っちゃうのよ!!」

 

 幼少期より何故かこの男口調が喋りやすかった。だから保育園や小学生の時は揶揄われる事が多かった。その度に報復をしていたからかすぐに揶揄ってくる奴はいなくなって舎弟のような存在が大量に現れる結果となっていた。みんな高校に上がって自分たちの青春を謳歌しているころだろう。

 ……そう考えるとこうしてゴールドシップ達と楽しむのも青春といえるのかもしれないな。ならば今はこの時間を良い思い出に出来るように楽しむとするか。

 




原作キャラの口調こんな感じでよかったのかな……?
一応アニメ1話前で想定します。

因みに以下は悪ガキにシュヴァルツカイザー(ロリ)が行った事。
悪ガキA:保育園時に男女と揶揄った
→悪ガキをおんぶして走る(60km越え)。悪ガキは現在まで続くスピード恐怖症になった。

悪ガキB:小学1年生時にスカートを捲った。
→手足を縛ったうえで全裸で校庭に放置。ウマ娘恐怖症になってウマ娘とは無縁の場所に引っ越した。

悪ガキC:小学3年生時にシュヴァルツカイザーを罵倒。
→罵倒した内容を大袈裟にしつつ学校中に広めてCを孤立。最終的に親同士が呼び出される事態に発展させた。結果的にCは女子すべてを敵に回した状態で田舎に転校した。

悪ガキD:小学生6年時にシュヴァルツカイザーに糞を含む泥を投げつける。
→小屋に閉じ込められた上にシュールストレミングが自動的に開かれる罠を設置。一日放置した後学校に連絡して回収させた。閉所恐怖症暗所恐怖症に加えてちょっとでも臭いものを嗅ぐと発狂してしまうほどのトラウマとなった。

悪ガキE:中学1年生時に絡んできた不良
→股間を思いっきり蹴り上げて潰して撃退される。女性恐怖症になったうえにEDとなって引きこもりとなった。
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