私がレジスタンス!   作:にわかの底力

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あらすじ
再び幻想郷を革命の渦に巻き込むと宣言した天邪鬼、鬼人正邪。早速仲間を集めるべく、封獣ぬえとともに旅を始めたが、開始数十分で裏切られ、深い穴に蹴落とされてしまう。果たして、天邪鬼、鬼人正邪はどうなる!?まだ一日も経っていない二日目、始まり始まり…


二日目 地獄に落ちた天邪鬼

「ぶへっ、水か!?」

落ちた先は水だった。

井戸の水かと思っていたが、この水は流れている。

「クソ、周りが暗くて何も見えねえ」

流されるまま流されていると、ようやく光が差し込んだ。

出口だ。

「なんだ?地上にでも出るのか?」

そのまま流されて出た先、広大な空間が広がっていた。奥に町の明かりが見える。おそらく人間の里よりも規模としては大きいかもしれない。

もちろん地底には日光は差し込まない。しかし、この空間は地上と比べると薄暗いものの、日常生活では困らないほど十分に明るかった。

「ここが噂の旧地獄か」

旧地獄。忌み嫌われた妖怪どもが身を潜めているという地底に広がる世界。あいつも地上に出る前、長い間ここに封印されていたらしい。

「なんだ、ぬえの奴。協力する気満々だったんじゃないか」

地上の奴らから忌み嫌われた奴らがうじゃうじゃといる所なら、地上に恨みを持つ奴も当然いるはず。

すぐに我ら幻想郷革命軍(たった今命名した)は結成できそうだ。

「そうと決まりゃ、まずは旧都からあたってみんか」

 

怪しまれぬよう離れたところで川から上がり、服を乾かした。

地底は涼しい印象があったが、案外あったけえ。むしろ少し蒸し暑いくれえだ。服もすぐに乾いた。

「あの橋を渡りゃ、旧都ってわけか」

先ほど私が流されていた川にかかる赤い橋の向こうが旧都というわけだが、なぜか橋の中央で欄干にもたれかかったまま動こうとしない女がいる。そして橋の前にこんな立札がある。

『このはしわたるべからず』

渡るなと言われたら思いっ切り渡りたくなるのが天邪鬼ってもんだ。遠慮なく渡らせてもらおう。

「…妬ましい」

「…へ?」

「貴方の事よ。橋を渡らないでも、頓智をきかせて橋の真ん中を渡るでもない。この橋姫がいながら堂々と橋の端っこを渡れる貴方の度胸が妬ましい」

「…妬まれるような事なんかしたか?」

「妬みに理由なんていらないわ。私が貴方を妬ましいと感じたら、貴方は私から妬まれる対象になる。それだけの事。感情なんて主観的なものだから」

「理不尽な」

「そう、感情は理不尽。理不尽な感情が、理不尽な世界を創った。妬ましい」

早々にして変な女に絡まれた。金髪に緑眼、整った顔、尖った耳、ミステリアスなオーラ。

地底は地上から忌み嫌われたものが住んでると聞くが、私の中で単純に近寄りたくない部類の生き物がそこにいた。

「そこは通らない方がいいよ」

メキメキ…バリッ 「!?」

ばっしゃーん

「冷てっ!」

もうちっと早く言ってくれよ。折角乾かした服がまた濡れた。

 

所狭しと並ぶ平屋、頭上から無秩序に垂れ下がる提灯、ヒビだらけの石畳の遊歩道。

立ち並ぶ店のほとんどが飲食店で、飲食店のほとんどが酒屋。行き交う者のほとんどが鬼で、そのほとんどが酔っ払い。

地獄かここは⁉︎…地獄だ。

良い言い方をすれば喧騒に包まれたスラム街。悪い言い方をすればクソうるせえスラム街。

「見渡す限り360度むさくるしい奴らばかりじゃねえか。早えとこ仲間見つけてとんずらすっか」

完全によそ見していた私は、目の前に誰かがいるのに気づかず、背後から衝突してしまう。

「って!おい!どこ見てんだ…よ…」

「あ~ん?なんか言ったか嬢ちゃんよ」

ああ、終わった。目の前にいた奴は私の頭二つ三つ高えとこから見下ろしてくる。頭に一本の角、私がすっぽり入ってしまいそうなぶっとい腕とぶっとい足、浴衣は胸まで隠しきれず胸筋が溢れ出ている。

小柄な私など、あっという間にひねり潰されてしまう。

「だから、どこ見てほっつき歩いているんだって言ってんだよ!」

なーに言ってんだ私。天邪鬼としての性が要らぬところで放出された。もう手と足の震えが止まらん。

「いい度胸じゃねえか。つきやってやってもいいんだぜ?」

脱いじまったよ。相手はもうふんどしだよ。やる気満々だよ。どうすんだよ。

「あーあ、誰に喧嘩を売っているんだあの阿保は」

「生きては帰れんなあいつ」

「賭けにならん喧嘩はつまらん」

おいおい、やっぱやべえ奴に喧嘩売っちまったんじゃねえか?私。

いつの間にか歩道からは誰もいなくなっており、私と奴の姿だけが取り残されていた。

まずい、あん時みてえに道具があるわけでもねえし…やるしかねえ!

「おい!みろ!酒が天井から流れてきてんぞ!」

流石にこんな古典的な手には…

「なんだと!?どこだ!」

まじかよあいつ天性の阿保だ。脳みそまで筋肉に侵されてんぞ。だが今のうちに。

「なんだ、なんもねえじゃねえかって、あいつ!逃げやがった!!」

あのでっけえ図体ではさすがに追ってはこられないはず…って、速えっ!!

やべえどんどん追っついてくる。

「ゴラ、待ちやがれくそったれ!」

まずいまずいまずい!追っつかれる!私にはやんなきゃいけねえことがあんだよ!世界をひっくり返すって立派な使命があんだよ!おめえらみてえに呑んでひっくり返ってる場合じゃねえんだよ!ああクソ、クソクソクソ!

ぼふ…

何か柔らかいものにぶつかって私の勢いは完全に止まった。

「どうしたのかい?お嬢ちゃん」

ぶつかった何かが話しかけてきた。声からして女。

「おいどけ!まずいんだ…よ」

私がぶつかった相手は額から角が一本生えた女。手首と足首に謎の鎖と重りをつないでじゃらじゃら鳴らしている。あとはその…いろいろとでかい。ただでさえ色っぽいのに、少しはだけた着物が余計になまめかしい。

「そんなに焦って、何かあったんかい?」

一瞬でもあいつの事を忘れたのは致命的だった。足音がすぐ真後ろで急に止まった。

「おい!そいつを放せ」

詰んだ。チェックメイト。ぬえ、末代まで呪ってやる。

「よお、久しぶりじゃねえか。虎熊の大将」

「おめえこそ、もう野垂れ死んじまったんじゃねえかと思ってたところだ」

こいつら知り合いか?

「よかったな、墓にかける酒代が浮いたじゃねえか」

「おめえの墓にかけるもんなんてしょんべんで十分だっての」

え、何?この空気。この女、こいつとおっぱじめようとしている?嘘だろ!?いや、私よりかはしっかりとしてると思うが、あいつは規格外だぞ。

「おい!大将と姐御の喧嘩だぞ!」

「おめえどっちに賭ける?」

「やっちまえ大将!」

「姐御!任したぞ!」

「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」

一色触発今にも衝突しそうな二人の周りを、いつの間にか大勢のギャラリーが取り囲んでいた。

「後悔すんじゃねえぞ!」

最初に殴りかかったのは巨漢の方。あの図体からは想像も出来ねえ速さで拳をあの女に振り下ろした。恐ろしい速さ。

瞬間、ものすごい衝撃波が私を場外まで吹っ飛ばした。

女は無事では済まないだろう。

ギャラリーの隙間から覗いてみると、あの女、一寸も動かず巨漢の拳を素手で受け止めていただと!?しかも、片手はでっけえ盃で埋まっているのに、片方の手であれだけのエネルギーを吸収していた。

「いけー!もっとだ!」

「やっちまえ!」

こんなもんを見て平気でいられるこの連中もなんなんだ?ぬえ、あいつ、こんな恐ろしいとこに居たのか?

誰もが喧嘩に夢中になっている中、私はその場を後にした。




鬼人正邪が落ちた先は旧地獄。正邪は混沌とした旧都で革命軍の同士を見つけることが出来るのか?

次回、三日目 喧騒に咲いた花 

刮目せよ!
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