私がレジスタンス!   作:にわかの底力

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革命軍設立の旅の途中、ひょんなことから旧地獄に来た正邪だったが、これまたひょんなことから喧嘩に巻き込まれてしまう。果たして正邪はこの過酷な環境下で生きていけるのか?まだ一日も経っていない三日目、どうぞ!


三日目 喧騒に咲いた花

路地裏に入った。生臭えごみやら酒瓶やらが散乱していて、いよいよ治安の悪い地域なんだということを感じさせるような場所だ。

と、目の前をふわふわと横切っていく青白い光がある。火の玉のように見えなくもない。遠慮なく尻尾?みたいなところをぎゅっと握る。

「ってえ!なんでえ、にぎるこたあねえだろ!」

「あ、おまえ喋れたんだ」

「舐めとんのかおめえ!」

正面の顔…なのかは知らねえが、骸骨のような模様がある。こいつは怨霊だ。生前に犯した罪が重すぎてなかなか成仏できねえ奴。ぬえ曰く、旧地獄が地獄としての機能を停止する際に残ってしまった罪人の魂なんだとか。私も将来ああなんのかな。

「おめえさん見ねえ顔だな」

「ああ、地底に来たのは初めてなもんでな」

「地上の奴が何の用だ?」

「ああ、地上でちっと一旗揚げようかと思ってな、仲間を探してんだ」

「ほう、どんな仲間だ?」

「地上にとびきり大きな恨みを抱いてる奴」

悪霊は少し考えるような(なんとなくわかる)仕草を見せ、無い口を開いた。

「あんましここで面倒を起こされたくはねえんでぇな。ここいらの連中が地上で悪さしたってんなら、巫女がすっ飛んでくんでな」

「いるにはいるのか?」

「…まあこんな場所だし」

「どこにいんのか?」

「…」

ありゃりゃ、だんまりしちまった。

「いいや、とりあえず、どっかになんかねえか?行きつけの酒屋とか、なじみの店とか」

「おお、それならおすすめのところがありますぜ」

闇雲に探すより、こいつの知り合いとかから探った方がはるかにやり易い。早速案内してもらう。

「ところで、お前って何して怨霊なんかになっちまったんだ?」

「聞きてえか?俺が地獄に落とされ成仏できなかった理由」

「いや、聞きてえわけじゃねえが」

つまんなそうな顔をしてんのがわかる。

「じゃあなんで聞いたんだよ」

「いや、将来私もそうなるかもしんねえから、どんなもんかなって」

「おめえ、悪いことでもしたんか?」

「まあ、いろいろとな」

現に今も閻魔から狙われているみてえなもんだし。

「そんな何十人も殺したとか、そんなんじゃねえがな。まあ、あれだ、俺は生前は京都の都に住んでてな。職を失ってふらふらしてた時、むかつくババアを見つけてな」

「そいつを殺っちまったと」

「いや、服を引っぺがしてやったんだ」

「…お前、あれだろ。本当に悪い奴だろ」

そうこうしているうちに目的地に着いたらしい。案内された所は明らかに他の飲み屋とは雰囲気の違う店だった。のぼりは一切出ておらず、軒下には赤い提灯が多数ぶら下がっており、戸は全部閉まって中の様子を確認することが出来ない。

「本当にこの店やってんのか?」

「おうよ、絶賛営業中でえ」

戸を開けて中に入る。

「「「おかえりなさい、ご主人様!」」」

「…は?」

私たちを迎えたのは小娘の鬼たち。顔立ちもよく、身長こそ低いものの、どいつもしっかり着物からいろいろはみ出している。

「はい、ただいま。お席はどこかな?」

「ただいまご案内いたします、ご主人様!」

「…なあ、ちょっといいか?」

「ん?…ああ、ちょっとごめんよ嬢ちゃんたち、すぐ戻るから。…どったんで?」

「表出ろ」

「んな!?今来たばかりでねえか!?」

「いいから出ろ!」

「いでででででででで!そこは掴むなっての!わかったから、放せって!」

さっきから浮かれたように浮いている人魂をひっ捕まえて、無理矢理外に出す。

「どうしたんでえ、いきなり外につれだして」

「なんでここに案内した」

「おめえさんがおすすめのところに連れてけってゆうから」

こいつ、いろいろとはき違えてんな。

「そらなじみの店なんて曖昧な場所を指定した私が文句言うのはおかしいけどよ!なんでよりにもよってこんなところに連れてきた!」

「なじみの店って言われたら、常識的に考えて風俗だろ?」

「地底の常識なんざ知るか!いや、例えそうだったとしてもだな、女の私をこんなところに誘うのは男としてどうかと思うぞ?」

「え!?おめえ、女だったんか!?」

「ぶち殺すぞ!!」

「もう死んでるが」

何をどう見たら男に見える?スカート履いてるし、声だって思いっきし女じゃねえか!

 

「なあ、嬢ちゃん、悪かったってば。いい加減口きいてくれてもいいだろ?」

「わかった、わかったから。いい加減その呼び方止めろ!」

結局私たちが来たのは、仲間探しの定番っちゃ定番の大衆酒場。鬼だけでなく、多種多様な妖怪が入り乱れ、様々な垣根を取っ払った混沌とした空間を作り出している。

「おーい!注文いいか?」

「あいよ!」

近くを通っていた女給のねえちゃんに声をかけた。

「何にする?」

「ここのおすすめはなんだ?」

私の問いに、女給のねえちゃんは、おかしなものでも見たような顔をする。

「そりゃ決まってるでしょ。鬼すら唸る鬼殺し」

「そ、そうだったな」

そんな強え酒一口でぶっ倒れちまうよ。

「おすすめ聞いといてわりいが、純米吟醸鶴齢で」

「俺はテキーラ・サンライズで」

「あいよ、すぐ持ってくるから」

女給のねえちゃんは足早にこの場を後にした。

「…」

「…ん?どったん?俺の顔になんかついとんのか?」

「…いや、意外にハイカラなもん頼むなって」

「悪かったな!これでもカクテルが好みなんでえ!」

「いや、悪くはねえが」

「お待ち!」

「もう来たのか!」

運ばれてきた酒を盃に注ぎジョッキと合わせる。

「ところで名前聞いてなかったな。私は鬼人正邪だ。」

「折角のところわりいが、俺は名前を忘れちまってな。好きに呼んどいてくれ」

「んじゃ下人で」

「…は?」

「いいだろ。なんとなく身分低そうな感じするし」

何がお気に召さなかったのか知らんがぴーちく文句垂れてる下人をよそ眼に、ふと入り口に目をやると、先ほどの脳筋ゴリゴリ岩男が二人の仲間らしき人を引き連れて店に入ってくるのが見えた。しかも全員ぼろぼろだ。

やっべー、出くわしちまった。とっととずらかんねえと。

「な、なあ。そろそろお暇すっか」

「あ?何ぬかじとんじゃ。今来たばっかだろ」

「いやあ、なんとなく落ち着かなくてさ」

「注文の多い野郎だ。姐さん、会計!」

そこで私はとんでもないことに気づく。

「なあ、お前、金持ってんか?」

「い、いや、持ってねえけど。まさかおめえ、持ってねえのか!?」

「そのまさかだ」

「どうすっだ!?俺ら無銭飲食でねえか!?」

「いいか、こっそりずらかるぞ!」

「まじかよ、俺これ以上罪重ねたくねえんだよ」

離れようとする下人の尻尾をひっ掴んで、そそくさと席を後にする。

「…お客さん?待ちなさい!おい!」

気づかれた!とにかく店からは出ねえと!姐さんが叫んだせいで周囲の奴らが皆こっちを見てる。

「おい、奴だ!いたぞ、追え!」

一番聞こえちゃいけねえ声が背後から聞こえた。

「よお、やってるか…おっと!」

店から出ようとしたところでさっきも感じたような感触が私を包み込んだ。

「よお、また会ったな」

店に入ってこようとしたいろいろと規格外の女にまたもや正面衝突したらしい。さっきの脳筋見掛け倒し男と違って体に傷一つない。

「あ、姐御…そいつを寄越して下さんねえか?」

「支払いまだだよ!」

くっそ、四面楚歌だ。

「どうすっでえ。てかおめえさん、さっきもひと悶着あったのかい」

考えろ、この状況を打破する術は…

「やあ、さっきは助けてくれてありがとな。そこの脳筋…じゃなくて、脳無し野郎がさっきのお詫びに私たちの酒代もつってよ」

「…は?」

「なんだ、そういう事だったのね。はい、領収書」

「じゃ、ご馳走さん。じゃあな」

「お、おい、待てゴr‥‥」

「へえ、妙に気前がいいじゃねえか。そんじゃ、今日はお前さん持ちで飲み明かそうじゃねえか」

「い、いや、ははは。…ご勘弁を」

 

追手はこないようだ。うまくいったらしい。

「ところで、おめえさんどうすっで?まさか一文無しとは思わなかった。いままでどう暮らしてたんで?」

「こちとら逃亡中の身なもんで、仲間から恵んでもらってたんだ」

「おめえさんほんとに何やらかしたんで。でもまあ、その友人とやらはここにはおらんのだろ?一文無しってのはまじいからなんか仕事見つけんと」

仕事か。そういや私、生まれてこの方働いたことねえわ。

「なんかいい仕事ねえか?たくさん稼げて楽な仕事」

「そんなのあったら苦労はしねえよ、こっちが聞きてえわ。ここいらじゃあほとんどは土方だな」

「儲かんのか?」

「まあ、需要あるから安定はするけどよ、稼げるってほどじゃねえかな。それにほら、おめえさんのそんなヒョロヒョロな身体じゃ、無理じゃねえか?」

革命軍成立には人員と、もう一つ必要なものがある。そう、活動資金だ。規模を大きくすればするほど費用も膨大になる。その場しのぎの銭じゃ足りねえ。

「どこでもいい。稼ぎのいいとこどっかねえか?」

「うーん、あんまおすすめはしねえが、あるにはあるんだな」

「どこだ!?どんなとこでもいい!」

なぜか私の体をなめるように見渡す下人。

「お、おい。なんだよ。なんか、やらしいぞ!」

「いや、おめえ、なかなかにいい体してんなって」

「な、なんだよ、いきなり。男と言ったり女と言ったり忙しいやっちゃな。…てか、おい!まさか、この体を使えってんじゃ…」

「…」

「図星かよ!」

冗談じゃねえ。革命軍のリーダーが元水商売人だったなんて知られてみろ!

「悪かったって、それ以外にゃ割のいい仕事なんざねえんだよ」

そうだろうなとはうすうす気が付いていた。なんせ、ここはならず者と忌み嫌われし者たちによってつくられた街。まともな仕事などほとんどないのだろう。何も食わずして生きていける妖怪や幽霊が多いのも理由の一つかもしれない。

「これじゃあ一か月持つかどうかだな」

「こまったなあ。俺も家があるわけじゃねえし」

しょうがねえ。何年経つかはわからねえが、そこら辺の仕事適当に見つけて稼ぐしか…

「いや、待てよ?うーん、どうすっかな…」

「…なんだよ、なんかいいところがあるんか?」

下人の尻尾を掴んで問いただす。

「いでででででで、わかった!話すから放せ!」

大人しく下人を解放してやる。

「ただ、おっかねえとこだぞ」

「稼げればどこだっていい」

「そっか。そんじゃ、あまり進めたくはなかったんだけれどな。この屋敷に地霊殿ってところがある」

「地霊殿…?」




費用、人員、革命軍設立の前に立ちはだかる壁の数々…。果たして正邪はどう切り抜ける?

次回、四日目 地霊殿の主
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