「ここが地霊殿か…」
案内されて辿り着いたところは、どこぞの吸血鬼の館と張り合えるくっらいにはでかいんじゃねえかってくらいでかい屋敷。こんなのが地底にあるなんてな。
門の両脇にこれまた趣味の悪い怪物の像が設置してある。
「ここには門番がいねえんだな。怪しいやつが勝手に入ったらどうずんだ。んじゃ、ちょっくら行ってきますか」
門を開けて一歩踏み出す。
背の低い木々で覆われ、中央に置かれた翼が生えたよくわからん怪物が口から水を垂れ流すっていうなんか抵抗感のある噴水が印象的な庭を通り抜け、館の玄関の前に来た。
ドアにまでカラスの頭のような装飾がついている。どこまで悪趣味なんだ。
ドアをノックする。
「すんませーん。誰かいますかー」
返事はない。
「すんませーん」
「あやしいひとはっけん!」
「ほぅあっ!?」
しまった背後を取られた!
「い、いや、お嬢ちゃん、決して私は怪しいやつなんかじゃ…」
「お姉様にペットにしていいか聞いてこよっと♪」
「聞いてねえな」
突如として現れた謎の緑髪少女は私の襟元を掴むと、私をずるずると屋敷の中に引きずり込んでいった。
「お、おい!いい加減放せって!」
「お姉さん地底の人じゃないでしょ」
「やっぱし聞いてねえ!」
襟を掴まれ首が締まりながらずるずると引きずられていく私を、いくつもの光る眼がにらみつけてくる。動物好きの主とは聞いたが、まさかここまでだったとは。
気が付きゃとある部屋にいた。
天井には豪華なシャンデリアが垂れ下がり、壁際を石像や絵画で飾り付けただだっ広い部屋に、なんとも似つかわしくない少女が二名。うち一名は薄汚ねえ逃亡犯を引きずっている。
もう一名は、部屋の奥のそれまた豪華そうな机と椅子に座って、こんなシュールな光景を、さも日常風景のように捉えているかのように全く動じず、机上に山積みにされた書類一枚一枚に万年筆を走らせているピンクい少女。
「お姉ちゃん、新しいペット」
「…こいし、お外から帰ってきて手は洗ったの?」
「この人足洗うって」
こいつ私が何者かわかって言ってんのか!?
「お世話は誰がするの?」
「こいしなんでもする!餌の準備に、おさんぽ!」
「…はあ、今回だけだからね」
ちょっと待て!冗談かと思っていたら、こいつら人型の生き物までもペットにする気か!?
「ところでこいし、その新しいペットと話があるから席を外してもらえるかしら…て、もういないか」
緑髪の誘拐犯に捨てられた逃亡犯のもとに、部屋の主が背後から近づいてくる。
「妹がとんだご無礼をいたしました。わたくし、地霊殿の主、古明地さとりと申します」
館の主…だと!?こんなガキが!?
「…どうしましたか?私の顔に何かついていますか?」
「あ、い、いえ。…私の名前はきじ…」
おっとあぶねえ!いくら地底と言えど私の正体を知られたら何されるかわからんからな。
「私の名前はキジ・セイジ。ここにはちょいと用事があってだな」
「…とりあえずこちらへどうぞお掛けになって。客人を床に寝かせたままでは地霊殿の素性を疑われてしまいます」
それなら私をペット扱いした時点で手遅れだと思いますよ主さん。
「お燐。お客様用の茶をご用意なさって」
「さとり様それが、午後ティーしかもう残っていなくてですね」
「…まじで?」
「まじです」
「じゃあそれでいい」
「いいのかよ!…いや、いいけど」
猫耳と人耳を両方生やした使用人が部屋から出ていくのを見届けて、主人は話を続ける。
「で、ここでの雇用契約の為に屋敷を訪れたところ、あの子に拉致されたと」
「え、ええ。おそらく間違いはない」
先程の使いがお盆を持って戻ってきた。お盆の上には高そうなティーカップと…午後の紅茶のペットボトル。
「い、いや。いつもはさあ、ティーポットから客人の前でカップに注ぐんだろうけどさ、わざわざ午後ティーを目の前でカップに注がれてもさあ…」
「あら、さとり様のお出しになられたお茶にまさか不服をお申し立てなさるおつもりでしょうかお客様」
「い、いえ!ワタクシ、こんなに豪華なお茶を未だかつて飲んだ事がございませんでして、大変嬉しゅうござりまする!」
悔しいが事実だ。にしてもこの使用人の主人への忠誠は尋常じゃねえな。
「それでは、ごゆっくり」
「ははは、ども」
「えー、それではセイジさんにいくつか質問がございます。よろしいですか?」
「あ、はい」
これが面接ってやつか。
「まず一つ目、なぜここで働きたいと思ったのでしょうか?」
「稼ぎがいいと聞いたからだ」
「…どなたに?」
「ダチに」
「ダチ…」
「そう、ダチに」
「…わかりました。そのご友人はかつてこちらで働かれた経験がおありで?」
「知らん」
「ご存じない…、友人でいらっしゃるのに?」
「あまり付き合いはないもんでね」
「…そうですか。では次の質問。住み込みと通勤、どちらが御所棒でしょうか?」
「住み込みで」
「一月は帰れませんが、よろしいのでしょうか」
「ええ、家がないので」
「そうですか」
と、こんな感じの面接が続いた。
「大体わかりました。あなたを使用人として迎えます。これからどうぞよろしく」
「あ、え、えっと…よろしくです…ご主人様?」
「さとり様でよろしいわよ」
「様は必要なんですね」
こうして私は晴れて地霊殿に使用人として迎えられたのだった。
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「ふう…、あいつも白、か」
晴れて地霊殿の一員となった鬼人正邪。新天地で正邪はうまくやっていくことが出来るのか?地霊殿に隠された真実とは?地球は何故丸いのか?
次回、五日目 私がめしつかい!(タイトルは変更になる可能性が多少なりともございます。ありゃかじめごろうしょうください)