私がレジスタンス!   作:にわかの底力

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召使として地霊殿に雇われた天邪鬼、鬼人正邪。膨大な量の買い物を終え、くたくたな状態で帰ってきた正邪をさらに追い込む出来事とは。

正邪の革命奮闘記、六日目


六日目 心を覗くサードアイ

夕食時になると屋敷の大広間に全員で集まりともに食事をとる。これが地霊殿の約束事の一つだった。

驚いたのが、私以外の使用人がお燐とお空を除いて全員動物だったということだ。お燐とお空も半分動物のようなもんだけど。

「お燐の作るオムライスはやっぱりおいしいね!」

「こら、こいし。口の周りにケチャップが付いてるわよ。ほら動かないで」

「お口にあったようで何よりです」

「お燐!お代わり!」

「わんわん」「にゃー」「がるるるるる」「シャー」

「はいはい、順番ね」

仲睦まじい光景をみせられる中、私は空気をぶち壊すことを承知で一つだけ疑問をぶつけられずにはいられない。

「なあ、なんで私のオムライスは縄みたいな模様が描かれているんだ?」

ケチャップで器用に描かれているのは主姉妹の目玉(チャームポイント)だったり、ハートだったり、牙や翼だったりするけれど、私のだけどう考えても「何か」を吊るすための縄のように見える。

「あらごめんなさい。これでも私が愛をこめて風船を描いたつもりなんだけれど」

お父さん、お母さん、一度も会ったことないけど、私は今日が命日です。

 

正直今までに食ったことのない程の贅沢な味だった。流石これだけ大きな館は出る料理も違うんだな。

でも洗う食器の量も桁違いだった。キッチンに運ばれてくる食器の斜塔は今にも倒れてきそうだ。

「はいはい新人、倒れる前に洗い終えてね」

返事を返す余裕もなく、一心不乱にスポンジを振り回す。

「くそ!この油汚れ落ちねえぞ!」

泡だらけになりながら、なんとかすべて洗い切る。

「後はさとり様やこいし様の寝室のベッドを整えて、洗濯と掃除と片づけをして明日の仕込みをしたら終わりよ」

うへえ、まだあんのかよ…。

一人でいる時間が長かった分、家事にはそれなりの自信がある。

何事もなく家事を終わらせて就寝の運びとなる…はずだった。

「よっしゃあとはここを片付ければ終わりっと」

「ちょっといいかしら」

私を呼び止めたのは古明地姉、この館の主。

「はい、なんでござんしょう」

「話があるんだけれど…」

主は私を部屋まで連行すると、鍵を掛けた。

「座って」

「ほい」

「椅子に座って」

「…はい」

早速解雇か?願ったり叶ったりなんだが。

「安心してください、解雇はしません」

「は?」

「鬼人正邪さん、改めて聞きたいことがあります」

しっかりバレとったわわれ。え?どこでバレた?問題なく里を歩けるようになったところで革命異変とは何の関係もない地底にまで来て、バレるってことはないだろ。いや、やはり地霊殿ともなれば外の情報網が結構張り巡らされていたり?

「余計なことを考えないでください。改めて聞きます。貴方はなぜ地霊殿に?」

「え?あ、いや、働かないと飯食えないな~なんて」

「革命軍創設のための資金を調達しに」

「はいそうです」

私は今頃気が付いた。この体から飛び出している三つ目の目ん玉。こいつさとり妖怪だ!完全に油断していた。

「他意は無さそうですね。では、そもそもにしてなんで地底に居たのですか?」

「おむすび追っかけてたら穴に落ちた」

「革命軍の人員確保に適した場所を友人に相談したら突き落とされたと」

「…ああ」

まさに今の状況は地獄に落とされた罪人そのものである。

「ここで接触した者を全て挙げてください」

「えっと、怪力女だろ?人魂だろ?頭からっぽ筋肉野郎だろ?橋の上に居た根暗な奴だろ?etc」

 

「以上ですか?」

「ああ、こんくらいだな」

くそ!この絶望的状況下で逃げ出す方法は…、反則アイテムでも残してらあよかったが、ねえもんは仕方がねえ。即興こけおどし爆弾で目を眩ませて

「ばれてますよ」

「…ですよね」

チェックメイト。最後の晩餐は超絶うまかった。

「お燐に言ったら喜ぶと思います」

「おめえの口から頼むよ。恥かしいから」

「ただ、あれを最後の晩餐にするつもりはありません」

「…どういうことだ?」

一瞬理解が追い付かなかったが、すぐに悟る。

「あれを」ということは、最後の晩餐は別に用意してあるということ。たぶんそこに毒でも盛られて…

「貴方に効く毒は生憎切らしているもんで」

「常備しているみてえな言い方止めてもらえねえか?」

「浅はかな深読みはしないでください。貴方を殺したところでこちらにはメリットがありません」

「ちょいとふざけただけだよ」

死刑宣告する為にわざわざ部屋に呼んだりしねえだろうからな。

ではいよいよ私はどうなるんだ?

「貴方には暫く私の下で働いてもらいます」

「…なんだと?」

「貴方には暫く私の下で働いてもらいます」

「二回言えってことじゃなくてだな」

指名手配中の者を雇うのは相応のリスクが伴う。何を仕出かすかわかったもんじゃないし、世間に知られた暁にはイメージダウンに繋がる。

「言葉のままですよ。ここに新しい契約の書類だってありますし」

「なんでそこまで罪人である私を雇おうとする?」

「罪人の管理なんて今に始まった事ではありません。ここには貴方よりも罪深い罪人の魂が大勢居るのです。今更一人反逆者もどきが増えたところで何も問題ありません」

「答えになってねえ」

私が言うのも変だが、まだ裁かれてすらいないのはだいぶ問題な気がするが。

「貴方にはやっていただきたいことがあるのです」

「いただきたいってことは、やんなくてもいいってことか?」

「はい、もっともその場合、貴方は"さばかれる"ことになりますが」

「裁かれる」と「捌かれる」で大きく意味が変わってくるんだが。

「両方です」「両方!?」

「茶番はさておき」

私が本気で肝っ玉を冷やした出来事を茶番と吐き捨てる少女は咳ばらいをして、

「貴方にやってもらいたいこと、それは」

「それは…?」

地下労働施設での強制労働?

「ここはもともと地下なのであらがち間違いでもありませんね」

「急に怖いこと言うなよ…」

「貴方には、とある組織に潜入捜査してもらいます」

スパイというわけか。これだけ大きな屋敷を構えているんだ。敵対勢力の一つや二つあってもおかしくはない。

「で、それをなんで入ったばかりの私に?私が言うのもなんだが、私はそこまで信用できるような妖怪じゃねえぜ?」

「分かっています。が、それについては問題ありません。私、人を見る「目」はありますから」

成程、私が何か怪しい企みをしたら即バレというわけですか。…一番来ちゃならん場所に来ちまったな。

「それに、地霊殿の人妖であることが悟られていないあなたがここでは一番の適任者となりますから」

「わかった」

なんとなく事情は察した。これはまたとないチャンス。地底の裏事情を掴み、新たな拠点を構築するための…

「言っときますけど、貴方の行動は逐一把握していますから」

「…はい」




地霊殿専属のスパイとなった革命家、鬼人正邪。ある日、地霊殿の元に転がりこんできた情報をもとに正邪の諜報活動が始まる。

次回、七日目 MISSHON:INPOSSIBURU
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