鬼人正邪主演、痛快アクション映画、にわかの底力監督最新作
七日目 MISSHON:INPOSSIBURU
大ヒット上映中
『ターゲットを捕捉して尾行し、敵のアジトを特定せよ』
「ごきげんよう、セイジ君。さて、今回の我々の任務はとある組織に潜入し、アジトについて調査すること。
某日、旧都の中で集会が開かれた。現場となったのは土木座近辺の防火広場。構成員や活動拠点は未だつかめていない。以降この組織を『吞んべえ会』と呼称する。
土木座近辺の商人が、座の一員が集会に参加しているのを目撃している。それが今回のターゲット。目撃情報によると、彼は爬虫類のような肌に、鋭い歯を付けた巨大な口を持つという。今回、エージェントに与えられた任務はターゲットを捕捉し、組織のアジトを特定すること。
ああそれと、彼は土木座の酒屋『二日酔い』によく通っているそうだ。情報は以上。
今回の任務で貴方が負傷、または命を落としてとしても、当局は一切関知しない。検討を祈る。
このメッセージはこれで終了となります。これ以降の再生はできません。ピー」
「まあよくぺらぺらしゃべるインコだこと」
自室で寝て朝いちばん起きた瞬間部屋の窓の外に一羽のインコが留まっていた。窓をつつくので中に入れてやった途端いきなりぺらぺらしゃべりだしたので多少驚きはしたが、どうやら
ちなみに私は地霊殿の中では普通に召使いとして働いていることになっている。今回、お燐に外出の許可をいただいて調査へ行くこととなった。主から何か言われていたのか、急な申し出にもかかわらず、お燐はあっさり許可をくれた。
んじゃ、調査に行って参りますか。…とその前に、やってみたいことが一つ、
「音声も一回再生してくんね?」
「お姉ちゃんはでーべそ」
「…………」
何も聞かなかったことにしよう。
ターゲットがよく現れると聞く店で相手を待つ。
「いらっしゃい。今日は何にする?」
「そうだな、テキーラ・サンライズで」
「テキ…なんだって?」
「あーやっぱいい。ええと、サッパリビール頼む」
そういやあいつ、何してんのかな。と、そこまで感慨深くもない思い出(数日前)を回想していると、早速焼酎が手元に来た。
「なあ店主、一ついいかな?」
一口あおったところで早速切り出す。
「なんだ?嬢ちゃん」
「ここによく来る客っているか?」
「そりゃいるべえ。ここは酒屋なんだから」
「じゃあよ、そん中で、でっけえ口を持つ全身鱗だらけの妖怪っているか?」
店主は暫く考えた後、何かを思い出したかのように手をたたいた。
「そうだ、そういえばいたな。丁度嬢ちゃんの六つ隣の席に座っていてな」
「おお、結構離れているな」
「それで、迎えが二人来ると、そいつらと何か話した後にすぐに去っちまうんだ」
今の店主の話を聞いて、どこか突っかかる点があった。
「迎えが来るまでそいつは一人なのか?」
「ああそうだな」
てっきり吞んべえ会と言われているから数十人で吞んでいるのかとばかり思っていたが。
「他の客と何か話したりはしたのか?」
「いいや。ここに集まる連中は土木座の奴らばかりだから、基本群れているんだがな。あいつは一人で誰とも話さず酒をちびちび呑んでるだけだ。恰好からして土木座の奴で間違いなさそうなんだがな」
「迎えって言っていたが、どんな奴だ?」
「日によって違うからよく覚えていねえんだよな」
「そいつらはここに来て何も頼まねえのか?」
「ああ、そいつは共通して言えることだな。この店を待ち合わせ場所にしているのか、焼酎の一杯でも頼んできゃいいのに」
別人だったのか。いや、まだそうと決まったわけじゃねえ。
「そいつはどんな格好なんだ?」
「恰好ね、恰好は普通の袴だけど、あいつと同じ、全身緑の鱗だらけだな。そいつらは恰好からして土木座の連中じゃねえらしい」
「そうか、ありがと」
残りの焼酎を全て飲み干すと、もう一升を追加で注文する。
「もう一つ聞きてえことがあるんだけど…」
怪しまれないようにカモフラージュも兼ねて、更に質問をする。
「ここに人魂来ていねえか?」
「人魂なんてそこら中にいるだろ」
「んじゃ、そうだな、昔京都にいた人魂とか」
「んな奴らが生前何してたかなんて知るわけねーべ!…や待てよ、いるな、その人魂」
あいつここまで来ていたのか。
「しゃべれる人魂なんてそうそういねえからな。よく覚えてるわ。酒の勢いでババアの服引っぺがしてやったと大声で怒鳴ってたな」
間違いない。そいつだ。
「あいつなかなか洒落たもん頼んでいくだろ?」
「いや、頼むのは決まってやっすいビールだな」
「は?やっすいビール?」
「ああ、一番の好物なんだとよ」
「え?テキーラ…」
「どうした?嬢ちゃん」
「いや、何でもねえ」
全身鱗だらけがターゲットに関する唯一手がかりとなる情報だったんだが、まさか他にもいたなんてな。まあでも迎えの奴らも『吞んべえ会』の一員であるだろうし、ようは『吞んべえ会』のアジトに潜り込めりゃいいってことだろ。狙える的が増えたってことか。
「全身鱗だらけの妖怪なんて見たことないけどな」
「そうなのか?お前が言うんだから間違いねえと…ってうぉあ!?こいし!?おめえいつからいた!」
「居酒屋のとき隣に座っていたよ?」
何なんだこいつ。本当に何なんだこいつ。味方…だよな?
「迎えの人たちも鱗だらけってことは、その組織は鱗妖怪のみで構成されたものって見方もできるよね」
「あ、ああ。そうだな」
「とりあえず、聞き込みをしてみましょう」
「あ、ああ。そうだな」
ここいらには材木や石材を売る店が多い。それもそのはず、ここは土木座の拠点となる地域だからだ。
旧都ではいくつかの商業組合が存在していて、組合の中で独自に決められたルールの中で商売してんだと。で、土木座は建築業者の組合ってわけ。
下人も言ってたが、土方は安定した職業らしいけど、成程、この地域を支えられるほどの経済力を持った座なら規模もかなりでかいな。
まず、材木を売っている店の店主に話を聞いた。
「そうだね、うちの顧客は土木座の連中だけど、そんな奴は見なかったな。安、おめえは見たか?」
「いや、全身鱗の奴は知らねえな」
つぎに、そこら辺をほっつき歩いているつなぎ姿の奴を見つけて声をかける。
「ああ、ディー…名前をなんつったかな。確かにうちにいるが、ここんとこ見ていねえな」
「奴か、あいつよく黒い布みてえな服を着て仕事を抜け出して、どこほっつき歩いてんだか」
「そういうお前は今何してんだ?」
「…親方には黙っててくんね?」
どうやらターゲットは周囲との関係が薄いようだ。こうなったら、座に直接殴りこんでやつの情報を掴むしかねえな。
土木座の拠点となる屋敷は地底の中心から離れた場所にある。屋敷とは言うが、こりゃ城だな。建築業者の組合だけあって、ものの見事な天守閣が聳え立っている。高さで言うと地霊殿と競えるんじゃねえか?
「合言葉を言え」
門をくぐろうとしたところで守衛に止められた。合言葉?なぜそんなもんが必要なんだ?
「将軍の為に!」
「入ってよし!」
そんでお前は何で知ってんだよ。
「この円規と定規でできた三角形の真ん中に目玉とかいうシンボルマークの所為でさ、地霊殿と何か繋がりがあるんじゃないかとか根も葉もない噂されててさ」
「合言葉知ってるお前が言うと説得力の欠片もねえな。それと私らは今は地霊殿のもんじゃねえ。あまりべらべらしゃべんな」
外見木造なのに、なぜか内装が石造りの建物には最上階へ向かう上昇機しかない。上昇機の密室でくだらない話をしていると、あっという間に最上階へ着いた。
「ボスがいらっしゃるまでこちらでお待ち下せえ」
昇降機を出てすぐ構えていた黒背広の強面の鬼は、私たちをある座敷に通した。虎が描かれた襖に囲まれた大広間、奥には分厚い座布団が金の屏風の前に敷かれている。強面の野郎がやや乱暴に座布団を二つ、分厚い座布団からやや離れた位置に乱暴に敷くと、座るよう促した。
すると、どこで控えていたのか、部屋に強面の背広男が大量に流れ込み、私たちの両側で列をなし、畳の上に正座した。現状、私たちは大量の強面背広男の集団に見つめられていることになる。汗だらだらの私の隣で、陽気に胡坐なんてかいてるこいしの姿が目に入り心臓が跳ね上がる。
ほどなくして袴姿の大男が部屋の中に入ってくる。目には大きな刀傷。袴の下には大きな入れ墨。幻想郷いろはテレビの某新婚さんトーク番組の司会ばりにひっくり返りそうになるのを何とか堪える。
私はもしかしたらとんでもない事務所に来てしまったのかもしれない。
「して、何の用だ?」
恐らくボスと思われる袴の大男は座布団に腰を下ろし終わる前に質問してきた。
「ここにいる一人の男に会いに来ただけなんだが」
「ほうほう、名簿をスリに来たと。引き抜こうったってそうはいかんぞ。優秀な部下は誰にも渡さん!」
どうやら土木座の他にも建築座、はたまた道路工事座とかいう座まで存在しているようで、そいつらの仲間だと思われているらしい。
「いや、そんな物騒なもんじゃなくてな」
指がとばないうちに何とか片付けねえと。
「聞きてえことがあるんだ。ここのやつに」
「ほう?生憎だがそれはできんな。ここの職人は堅g…うちのもん以外の奴らと話すのは仕事以外では極力禁じてるんでな。そもそも貴様らがどこのもんなのかもまだ知らねえのに言えるわけがねえ」
それにしちゃ、外の連中私の質問にべらべら答えていたような気もするが。
「で?貴様らはどこのどいつだ?」
「…ただのフリーターだ」
「フリー…なんだって?」
ここの奴ら横文字弱すぎだろ。
「…
こいし?
「私たちの家、生まれた時から貧しくて、母は病気、父は既に死んじゃってて、同じ貧民街の
こいしこいしこいし~?なにしてくれてんの?
「なんて健気なんだ…」
「ぅう…血のつながりがなくとも深い絆で結ばれていると…」
「おら…こういうのによわいんだ」
う~わ…、強面の野郎どもが泣きだしやがったよ。…なんか気持ちわりい。
「わかった。ちょっと待っておれ」
ボスは座布団から立ち上がり、部屋を出ていく。
「奴を探してこい!今すぐにだ!」
襖の向こうからボスの怒鳴り声が聞こえる。まだ誰を探しているかも言ってないのに、大丈夫か?この後。
「おかえり~、おにいちゃん」
「え?お、おい。こいつ知らねえ「いやあ、ボス、ちとわりいが、席外してくんねえか?義兄弟水入らずの再開を果たしたいんでね」
「おう、ごゆっくり」
応接室に連れてこられた全身鱗の男は、何用でボスに連れてこられたのか分からねえといった様子で部屋に入ってきたが、こいしに抱き着かれた途端さらに困惑し、こいしの予想外の行動に私ですら膠着状態でいたのにもかかわらず、ボスは案外そこらへん鈍いらしく、この異様な空気に気づくことはなく、半ば反射的に口から出た私の言葉に素直に従って部下もろとも部屋を後にした。
「さて、お前にはいろいろ聞きてえことがあるんだが」
「その前に、おめえらいってえだれなんだ?」
「そうだな、名乗るほどのもんじゃねえが「いつももしもしあなたの後ろにはい寄る怪異、私メリーさんです♡」
「‥‥‥」「‥‥‥」
いいのか?これで。
キャスト
鬼人正邪:本人 古明地こいし:本人 『二日酔い』店主:なにも知らないただの店主
鱗の妖怪:深きものども ボス:太政会直系柴田組組長
土木座の構成員、通行人:組員
インコ:ゴンザレス君
監督:にわかの底力 脚本:にわかの底力 原作:東方Project/上海アリス幻樂団
プロデューサー:スキマ結界結社 機材提供:妖怪の山の谷かっぱ(株)
制作:幻想郷革命軍
次回 八日目 インスマスの回