私がレジスタンス!   作:にわかの底力

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鬼人正邪に与えられた任務は、謎の組織、『吞んべえ会』の情報を得ること。しかし、この組織、やはり普通じゃなかった。怒涛の八日目、始まり。


八日目 インスマスの回

「僕になんの用だ?」

「とある団体の噂話を耳にしてね」

未だ警戒しているのか、鋭い目で睨みつけてくる。

もう既に生き別れの義兄との再会という感動的な場面ではない。奉行所で役人が罪人を問い詰めているような、緊迫した空気が立ち込めている。

「まーまーそう言わずにカツ丼でもいかが?」

「俺はまだ何も言っとらん!」

こいつのせいでそんな空気も台無しだが。

「お前、この間なんかの集会に参加していなかったか?」

「座の定年会議には出席したが?」

「そっちじゃなくて」

そっちもそっちで問題になりそうな絵面が浮かんでくるが。

「防火広場で無許可の集会が開かれたって話になってんだが、それについてはご存じで?」

「ししししししししししらないよそんな集会!」

嘘が下手にも程があるんじゃねえか?

「会員番号1936、父なるダゴン教会」

「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!お前!何見てる!?」

天狗にも勝てそうな速さで振り返るこいつは、こいしのもっている札をひったくると、慌てて懐に仕舞い込む。

顔を見ると、恐らく汗と思われるぬめぬめした分泌物で覆われていてうわきもちわる!

「とととととととにかくだ、金輪際俺の元に近づくな!いいか?今から俺の半径2m以内に入ったらぶちころがすからな!」

「わ、わかったから落ち着けって。離れるから」

まあ仕方ねえ。私はこいつに接触するのが目的じゃねえ。あくまでこいつらのアジトを突き止めること。

適当に尾行すりゃ大丈夫かな。

「おー、懐のマッチ、お兄ちゃんそこのママさんとも知り合いなのか」

「「ばっきゃろおおおおおおおお!」」

「どうした!?何事か!?」

騒ぎを聞きつけたボスがお出まして来やがった。

「親方!こいつら俺を出し抜きにきた商売敵でっせ!」

「なぬ!?おどりゃあただの堅気(かたぎ)かと思ったら(かたき)だったとは!」

「ちょー誤解!そんでなにちょっとうまいこと言おうとしてんだよ!てか普通に堅気とか言っちゃってんじゃん!」

見ればボスの後ろに明らかに向こう側の社会の方々が(ボスも十分そうだからなおさら)いらっしゃるのが見える。私なんかが太刀打ちできないのは一目瞭然だった。

「こいし!逃げるぞ!」

「ごめーん、つかまっちゃったー、てへっ」

ほんっと何してくれちゃってんの?

ボスの後ろの黒スーツ姿の奴に抱ええられながら舌をだすこいし。そんなこいしを唖然と眺めていたらいつの間にか黒ずくめの集団に取り囲まれていた。その輪を割って入ってきたボスの巨体が私の前で仁王立ちする。

「観念するんだな。おめえはどこのどいつだ!さあ、吐け!」

ちっきしょう!こうなったら、

「あ!ゴキブリ!」

「きゃああああ!」「出たか!?どこだ!」「やだやだ!早く捕まえてぇ!」「うおおおおおちつけ!おちつけえええ!」

 

まさか全員引っかかるとは思わなかった。逃げちまったけど、結局こいしは連れてかれちまったか。混乱に乗じてかっさらってけばよかったけれど、まあ勝手についてきたのはあいつだし、いっか。

(こいしさまになにかあったら、、、、)

くっ、またまた幻聴が!これはほんとに幻聴か?まさか脳内に直接・・・やめよ、考えたくねえ。

しゃあねえか。いけそうだったら救い出す。無理そうだったら諦める。とりあえず屋敷まで戻ってみるか。

―――と来たはいいが、座の奴ら、やっぱ屋敷の周りをうろちょろしてやがる。私を探しているのだ。

私の潜伏スキルが無ければ即死だった。

こりゃ無理だな。適当に宿か空き家見つけて今日のところは切り上げるか。…ん?

屋敷から出てくる人物が目に入る。黒いローブのようなものを羽織った人物。ローブから飛び出ている鱗のついた尾ひれで、奴だとわかった。

「ターゲットと遭遇。これより、呑んべえ会のアジトまで尾行する」

唯の独り言。でかいだろ?

 

少女尾行中…

 

奴は酒場に入っていく。先ほど訪れた酒屋、『二日酔い』。

入ったきり出てこねえ。その内4,5人の集団が店に入っていく。同じくローブを身にまとう集団で、ローブから尻尾がはみ出している。

迎えかと思ったが、そいつらも入ったきり出てこねえ。

「おい!」

「ちょい待って、今取り込んでるから」

「おい!!」

「だから!ちょい待てって‥‥いただけませんか?」

 

「セイジお姉ちゃんなら助けに来てくれると思ってたよ♡」

「私はここに来ることになるなんて夢にも思ってなかったがな」

というわけで、二人仲良く檻の中に閉じ込められた。現在土木座の屋敷の地下牢的な場所に居ます。ここも十分に地下なのに、なんか変な感じ。

「噓つきは嫌われちゃうよ。お姉ちゃん、ほんとは簡単に逃げられたくせに」

「は?い、いや、なんのことやら」

「なんでもひっくり返す程度の能力で、敵と味方を入れ替えて」

「おまえやっぱ私が何者か知ってるだろ!」

ここまで大人しくついてきたのは、どうせ見つかったならこいしのところまで行っちまおうって思ったのは事実だ。

「ちゅー」

「あ、戻ってきた」

鉄格子の隙間を通り抜けて入ってきたのは、一匹のネズミだ。

「お前のネズミか?」

「? この子は誰のものでもないよ?」

「は?」

ネズミは遠慮なくこいしの胸の中に入っていった。

「安全な脱獄ルートはこのネズミが知っているから、そとに出して、セイジ姉ちゃん」

「わかった、ちょっと待ってろ」

とりあえず檻の外の様子を確認してみる。丁度、廊下の奥の階段から蝋燭の明かりと話し声が聞こえてくる。おそらく見回りだろう。

案の定、ごっつい体の大男が二人、こちらに近づいてくる。

「嬢ちゃんたち、どうよ地下牢は、なかなか快適だろ?」

「ああ、おめえらも暮らしてみっか?」

「ははは、俺らにはもっと快適な暮らしがあるのでねガハハハ」

ぱちん、地下牢に私の指の音が響き渡る。すると、さっきまで廊下にいた威勢のいい男たちは、口を開けたまま鉄格子の中で立ち尽くしていた。私たちと入れ替わるようにして。

「へへ、じゃあ私がその暮らしを代わってやるよ」

「お、お前ら、一体ない何をした!?」

「なにって、立場を逆転させただけだけど?」

「意味わからねえよ!」

なんでもひっくり返す程度の能力、こーんな便利な使い方までできちゃうんです。

檻の中で喚く巨漢二人を背に、こいしは服の胸を開く。すると、先ほどのネズミがこいしの胸から顔を出した。

「この子についていったら外に出られるよ」

「わかった!」

暗く狭い廊下をちょこまかと走り回るネズミの後をつけてゆく。・・・はずだったが、ネズミはすぐに壁に空いた穴の中に入り込んで見えなくなってしまった。

「・・・どうしたらいいん?」

「どうしよっか」

地上へ通じる階段には要所要所に見張りがいる。見つからないように地上に出るには階段以外の道を使わなくてはならない。

ここが地上だったら、壁から土を掘って地上に出ることはできるが、生憎ここは岩石に覆われた地底なもんで、壁に穴をあけてもごつごつした岩肌が顔を出すだけだ。床も同じことが言える。

よって、天井が唯一の脱出ルートとなる。

「いいかこいし、今から私たちだけ上下を反転させる。天井に穴を開けて一階へ脱出するぞ」

「わかった」

今の私たちは、天井が下で床が上になっている。

「ちょっと待ってろ、今つるはしか何か探してくるから「せいや!」

「・・・は?」

いきなりの事で脳の処理が追い付かない。こいしが床(天井)に拳を打ち付けたのはわかった。床(天井)が大きくへっこんでいるのはわかった。こいしが床(天井)に拳を打ち付けて、床(天井)がへっこんだのは‥‥わからなかった。

「いったー、やっぱ一発じゃだめか」

「お、おい・・・へ?」

「おりゃ!」

「どうぁああ!」

軽く吹き飛ばされるほどの衝撃波が伝わってきた。何が起きたかわからない。ただわかることは、へっこみが穴に変わっているという事実のみ。

「さあ、いこう?」

「あ、ああ」

穴を抜けると同時に、上下をもとに戻す。一階の床に着地すると、私たちをぽかんと眺めるボスの集団と鉢合わせた。

「・・・は?」

「や、やあ、おっちゃん、元気?」

「お、おう。ぼちぼちでんな」

「ははは・・・」

「あはは・・・、ひっとらえろ!」

「逃げるぞこいし!」

今度はこいしと離れないように手をつなぎながら走る。

「待てゴルァ!逃がさねえぞ!」

「ちっ、しぶといやつらめ・・・あ!ゴキブリ!」

「その手に乗るかよ!」

流石に二回も同じ手に引っかからないか。なら、

「あ!ダイオウグソクムシ!」

「きゃああああ!」「いやああああ!」「どこ~!?どこ~!?」「落ち着け!落ち着けええええ!」

 

何とか撒いた。息を切らし、左手でこいしの手を掴みながら右手で壁に手をつく。ふいに、身体の力がすべて抜けたような気がした。そしてなぜか体が右に傾くような錯覚を覚える。そして体のいたるところが打ち付けられた。

「って!なんでこんなところに階段が!?」

隠し階段だ。見事に下まで転げ落ちたみたいだ。

「ちゅー」

「ん?」

頭の上に毛玉が乗っかった。

「なんだ、こいしのネズミじゃねえか」

「ちゅー」

私の背中についてらっしゃいと言わんばかりに、自信満々に駆け出すネズミ。さっきは見事に置いて行かれたが、今度はしっかり道なりに進んでくれている。

「ちちち」

「ん?なんだ?」

ネズミが足を止める。そこには、私の身長の3倍はありそうなどでかい鉄の扉が聳え立っていた。

「ここを開けろってか」

「ちゅー」

真ん中のハンドルみたいなものを回してみる。びくともしない。

「この先に何があんのか知らねえが、無理だろこんなん」

「そうでもないよ」

「うぁ!?こいし、そういやおいてきちまってたな」

今更になってこいしの手を握っていないことに気が付く。

「せーの、よいしょ」

こいしが扉に向かって思いっきり蹴りをいれる。すると、分厚い鉄の扉がいとも簡単にひしゃげ、ることはなかった。

「ありゃ、ダメか」

「妙に期待させんな」

「おやおや随分と苦戦しているようじゃないか」

「!?その声は・・・」

星熊…勇儀!?




果たして、座に隠された真実とは。そして、謎の組織呑んべえ会の陰謀とは何か。正邪は幻想郷に革命を起こせるのか。

次回、私が救世主!?

メリー、クルシメマス
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