私がレジスタンス!   作:にわかの底力

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もののはずみで座の深部までたどり着いた正邪一行。そこで正邪たちが目にしたものとは!?

もう何日目かもあやふやになってきた九日目、どうぞ!


九日目 反逆の狼煙を上げろ!

「なぜお前がここに?」

「勇儀姉ちゃん、どうしてここに?」

「お前が『私、土木座の城につかまっているから助けに来て』って言ったんだろ」

「…は?お前、牢屋抜け出したのか?一人で?」

冗談じゃねえよ!こちとら助けに来てやったんだぞ!ってかどうやって抜け出したんだ!?

「んで、なんでまた地下牢に戻ってきてんの?」

「…無意識でつい♡」

「ほんと便利だな、無意識」

 

「んじゃ、ちょっと離れて」

色々と突っ込みたいところはあるが、とりあえず扉の前から離れる。

「せいーやっ!」

バグォオオオオン!

勇儀の奴が拳を扉に打ち付けると、すさまじい音とともに、扉がぶっ飛んだ。

中に入らずしても分かる。恐ろしい量の黄金の物体の山。

畳八畳ほどの部屋が金の延べ棒で埋まっていたのだ。

「なんじゃこりゃ…、どうなってやがんだ?」

「ただの金庫じゃなさそうだね」

思わぬ掘り出し物を目にした私と怪力女がその場に立ち尽くす中、こいしは部屋の中へ一人…と胸の中の一匹で入っていく。

「あーあ、これはやってしまったね」

「なんだ?こいし。これがどうかしたのか?」

事情が分からない私に、こいしの代わりに勇儀が説明する。

「怨霊の好物となる純金の所持はここ地底では規制されてんだ。これだけの量、一体どこから集めたんだろうね」

金が怨霊を呼び寄せるというのはもはや常識。金は欲望の塊、怨念は金が放つ強い欲望に釣られてくるのだ。

「これで上納金をちょろまかしていたのか。座の規模にしては上納金が少ないってお姉ちゃんがぼやいていたっけ」

所謂脱税といううやつか。組織の売り上げで虚偽の申告をし、本来納めなくてはならない金額より少ない額を納めていたということだな。

「ん?これって…」

「ん?どうしたこいし」

「いたぞ!」

扉の方から声が聞こえた。振り返ると、なぜか既にぼろぼろのボスとゆかいな仲間たちが扉の前で構えていた。

「キサマ!さっきはよくも!」

「へえ?あんたら意外とやるねえ。あんだけやられてもまだ立っていられるのか」

数に怯えることなくずかずかと前に出る怪力鬼女。そして、圧倒的に数で勝っているのにも関わらず、勇儀に怯え後ずさりするボス軍団。緊迫した空気が張り詰める。

「くっそう!おいお前ら!道具を使え!」

「「「「おう!」」」」

軍団の手に、何やら物騒な形状の物が握られる。拳銃だ。

「おっと、これはさすがに私の手にも負えないね」

勇儀があっさり後ずさりする。

「今から十数える。それまでに投降せんかったら、わかってるな」

絶体絶命だ。

「十…九…八…」

何か、現状況を打破する策は…。

「七…六…五…」

無くはないが、本当にこんなんで逃げられるのか。

「四…三…二…」

迷ってる暇はない。一か八か

「一…」

「リバースイデオロギー!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

突然床が揺れだした。

「な、何事か!?」

そして、徐々に敵が倒れ、上に向かって落ちてゆく。

城の上下を、反転させたのだ。

「どうぁああああ!」

私たちの上下もともに反転させたため、私たちには何の影響もなかった。

「逃げろ!」

がら空きになった通路から一斉に逃げ出す。ちなみにボス軍団は、反転した際重い鉄の扉の下敷きになってしまった。

最上階へと下っていき、外に出る。外から見る天守閣は、石垣が上にあり、しゃちほこが地面に突き刺さるという、見るも美しい姿になっていた。そして、何かとてつもない既視感(デジャヴ)を感じた。

「それでこいし、さっきあの部屋で拾ったそれ、なんなんだ」

「えっとね、スナックのマッチなんだけど、これ、ターゲットが持っていたものと同じだよ」

とすると、奴もここに来たということか…成程。なるほど…

「ってか!奴の事、すっかり忘れてた!」

 

少女急行中…

 

「ていやんでい!おめえら!そこで何してやがる!」

閉店と書かれた扉をぶち破って、居酒屋『二日酔い』の中に入ると、例の全身鱗だらけの妖怪がたむろしていた。

その中心には、猿轡(さるぐつわ)を咥え、縄でぐるぐる巻きにされた店主の姿が。

「っち、もう嗅ぎつけて来やがったか」

「何やってんだ貴様ら!」

「お前さんの所為で計画が狂っちまった。こうなったら最後の手段だ。この店主がどうにかなりたくなかったら言うことを訊け!」

店主に拳銃を向けるターゲット。空気が一気に滞る。

「どうにかなるって言い方がなんか卑猥だよね」

たった一人を除いて。

「私が台無しにしてしまった計画というのは地上制服だろ?」

「!? なぜそれを」

「貴様らの計画では、金塊を地上にばら撒いて、地底の怨霊を地上に送り込んで混乱させる算段だったんだろ?それじゃあだめだ」

「…どういうことだ?」

これは望んだ以上のチャンスだ。

「地上に怨霊を出した後で、それらの怨霊は結局あの巫女に倒されてやられちまう。だから、怨霊を出した後に地上で騒ぎを起こす必要がある。いくら巫女でも、重なって異変が起きたら両方対処するのは難しいはずだ」

「ほほう、成程。それはその通りだ」

「だから、地上にも拠点をつくる必要が出てくるが、恐らく地上をよく知らねえお前らにはよくわからねえだろ」

計画に巫女の存在を全く考慮していないことから、こいつらは地上の事をよく知らないと見た。

だから地上にある程度の知識が必要だ。

「ちょっ、セイジ!お前まさか!」

「ああ、わりいな勇儀、こいし。お前ら、私と一緒に組まない「そこまでよ!」

「…お燐!?」

お燐が目の前に現れたかと思うと、ターゲットを羽交い絞めにしていた。

「はい、キジ姉ちゃん。拳銃」

続いてこいしが私に拳銃を渡してくる。

「大人しくしろ!」

便乗して、勇儀もまとめて2,3人取り押さえている。

店内を見渡せば、蛇、虎、多くの動物が、ここにいる奴らの仲間を取り押さえていた。

「な、なあ、お燐。どこからいたんだ?てか、どっから聞いてらした?」

「何言ってんの。あんたが連中の注意を引いている間に、あたいが突入するって計画だったじゃない」

「そ、そういやそうだったな」

(あとでさとり様にじっくりお説教を食らったらいいにゃ。鬼人正邪)

ははは…、参ったな。私の素性既に地獄にも知れ渡っている可能性。

「おめえら、どこで俺らの計画に気づいてやがったんだ?」

お燐に縄でぐるぐる巻きにされたターゲットが、苦しそうに訊ねてくる。

「お前らが地上侵攻を企んでることは最初から目星がついていた。ここにいるこいつが、あんたが落としたマッチを見つけて、それでこの計画を見破ったまでだ」

「マッチ?マッチなら懐にちゃんとあるが…」

「…こいし?」

「…ほら、けっかおーらいでしょ?」

こいつ、わかってて自分のマッチ落としたな。

 

 

 

「ん!?んー!んっん!んんんんんんんんんー!」

(え!?おーい!ちょっと!おいらわすれてるよー!)

 

 

 

その後の話だが、例の座は過去数百年にわたって不正を行っていたらしく、ガサ入れによって金の延べ棒とその他の財産、未払い分が差し押さえられた。しかし、城をひっくり返したのはこちらの監督不行き届きであったとして、金は屋敷修繕に使われることとなった。

また、今回の任務であった謎の組織は『父なるダゴン教会』という宗教団体であったらしく、全身鱗で覆われた妖怪のみで構成されており、過去何度も『二日酔い』で秘密集会が行われていたことが判明。奴らは地上制服を企んでおり、土木座に金塊が眠っていることを知った教会は、金塊を強奪し、金塊で怨霊を操って地上へ攻撃を仕掛けるつもりだったらしい。私の言ったとおりだろ?ターゲットとなった人物はそのために侵入したスパイだったのだ。教会は後日、教祖の逮捕をもって、解体された。

しかし、金の入手経路など未だ判明していない部分も多く、さらなる調査が行われることとなった。

何にしても私は地上へ攻撃を仕掛けるチャンスを自らの手で潰してしまったのだ。なんと惜しいことをしたんだ。畜生。

「お疲れ、今週のボーナスは期待していいわよ」

「あの金塊ってもらえないのか?」

「ボーナスは軍資金にならない程度に調節してあるから」

にしてもこいつは地底の奴らから上納金として金を分捕ってるわけだ。当主だか領主だか知らねえが、いつかこいつの首もねじり取ってやりてえ。

「心の中丸聞こえよ」

やっぱ嫌いだな。こいつ。

「それで、貴方にひとつお願いがらるのだけれど、よろしいかしら?」

「ん?なんだ?」

改まった表情でさとりが切り出す。

「『二日酔い』の店主は事情を全く知らなかった一般人なの」

「だろうな」

そりゃ、あんな柱にぐるぐる巻きにされて口塞がれて拳銃まで突き付けられたんだ。仲間だった時の方がおどろきだ。

「で、肝心なお願いってのはなんだ?」

「あそこで働くのはどうかしら?」

「…私がか?」

また話が飛躍しすぎやしねえか?

「どういうこっだよ」

「地霊殿が買い取ったのよ、あの店」

さとりが話すには、あの店を地霊殿が買うことにしたらしい。変な風評被害がついてしまったあの店も、地霊殿が経営をするとなったらある程度信用回復にもつながるし。

まあ、地霊殿(ここ)も十分怪しいが。

「で、なんで私があそこで働くことになるんだ?」

「店主、アルバイト募集してたわよ」

理由になってない。

「冗談、貴方には外部エージェントとしてこれからも活動してもらうつもりなのよ」

「…いいのか?その…仮にも私指名手配中だぞ?」

「ここで誰かに監視されて、一生目的果たせなくてもいいの?」

…姉妹そろって何考えてんのかさっぱりだな。

 

何がともあれ反対する理由も特になかったので(天邪鬼なので理由もなしに反対してもよかったのだが)革命に必要な情報収集も兼ねて、店で働くことになった。

「姉ちゃん来てくれたか」

「ああ、どうもな店主」

「あの時は世話になったな」

でっぱっただらしねえ腹を揺らしながら私の肩をポンポンと叩く店主。

「さあ、開店だ!本日も張り切って営業と行こうじゃねえか!」

店主が元気そうで少し安心した。さとりの話だと、相当に落ち込んでいたそうだったので。

入店ベルが鳴り響いた。

「お、今日からリニューアルオープンってやつか」

「なんだかわかんねえが、気持ち新たに本日も営業中だぞ!今日は何にする?」

「そうだな、じゃあ「ビールです」

「おお、そうそう、これこr……は?」

「よお、久しぶりじゃねえか」

ここで初めてできた友との再会、向こうは喜んでくれるだろうか。

「え?は?おめえが何でここに?…てかビールなんて頼んでねえぞ!?」

どうやら混乱しているようだ。

「ここに来たら必ず頼むんだろ?」

「え?…いや、ちが、それはカクテルがないから…」

「ほう?大衆酒場というものがありながらわざわざ中心地から遠く離れたこの飲み屋に足を運んでカクテルがないから地底で最も安いこの店のビールを呑むと」

「だ―――――!だから!なんでおめえが知ってる!」

流石に不憫になってきたのでこの辺でやめてやる。

「早速騒がしいと思ったら、おめえら知り合いかい」

店主が見るに堪えない腹をゆさゆさ揺らしながら大笑いする。

「ところで、あの教団、どうやら御用となっちまったようだな」

「あ、ああ。ヤ―ザンネンダッタナ」

『父なるダゴン教会』

こいつが革命軍の仲間として丁度いいと教えてくれた教団だった。

「怨霊のなかじゃあかなり有名だったから、びっくりしちまったわ。てか、あの屋敷はどうした?」

「ああ、あそこ?クビになった」

「ははは、まあ、あの主には昔っからいい噂がねえからな。これでよかったんじゃねえか?」

ここ、一応、その主が経営している店なんだよなー。

「ぷはー!さっきからあんたがたなんの話をしてるんだ?」

朝っぱらから商品の酒を呑む店主に呆れながら、今日も平和な日々を過ごす正邪なのであった。




『二日酔い』に突如舞い込んできた依頼。それは、橋の修理…っておい!話の規模が違いすぎはしねえか!?

次回、十日目 私は便利屋じゃねえんだぞ!?

なんつータイトルだよ!
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