鉄砲玉……ヤクザの世界における、殺される覚悟があるヤクザの襲撃者。ヤクザは倫理が無い癖に義理立てだとか面子だとかに拘りやがる、正直、下らねえと思う。そんな暇あるならヤクザとしてではなく、カタギとして活躍してりゃいい、まあ鉄砲玉の俺が言うのもなんだがな。
俺はしがないヤクザもんさ。ガキの頃から悪さばっかやってたもんでヤクザとしてしか飯が喰えなかった、今考えればただの言い訳に過ぎないって思うが、もう後戻りは出来ない。俺は……敵対組織荒神会の組長を殺した。俺の所属する組員が殺された恨みだってんで俺が鉄砲玉として選ばれ、仕事は達成された。
今思えば、殺さずに俺が殺された事にしてばっくれちまった方が良かったのかもしれない。日雇い労働者の集う地域で名前も顔も変えて、一カタギの人間として新たな人生を送ってればってね……ああ、そうだよ、これも言い訳だよ。悪党だから悪党らしく惨めな最期を送る為に、自殺もせず逃げ回ってんのさ。だがヤクザの人間を追跡する能力は尋常じゃねぇ、モサドかよって位のしつこさだ、その追跡能力を娑婆の人間の幸せの為に使いやがらっての……
へへっ、九州くんだりまで逃げて来たが、遂に追い詰められちまったよ。まだ幾分良心がある連中だから街中のカタギの人間に被害が出ないよう、チャカは使わないで俺を羽交い締めにして、現在山に連れて行かれてタコにされてら。もう歯も殆ど折れちまったし、指も落とされた……でも何でだろ?死ぬのは怖くない。腐ったカス未満のくそ野郎だった俺、それでも不器用なりに生きて、最後に華咲かせた……まあきたねぇ悪党を悪党が殺しただけではあるんだがよ、後悔はもう無いよ。
『おう、太陽組の銀の字、年貢の納め時じゃ。最後に言い残す言葉は?そん位は許す。』
へへっ、本当に幾分かだけど良心がある連中で良かったよ。キ〇ガイじみた鉄砲玉なんて見つけたら即殺すが常なのに、最後に言葉残せるってのがな……一分だけ待ってくれるかと言ったら待ってくれた、ヤクザの癖にいい奴じゃねぇの……ふふ、悲しい位ろくでもねぇ人生だったが、こう言う馬鹿もいたんだぜって最後っ屁かませるのは悪くねぇ。おっと、もう一分経過したか、早いもので。おう、じゃあ最後に言葉を残すよ。
『こんな糞野郎を捨て駒とは言え拾ってくれた太陽組の馬鹿親父に、ありがとう、死ねって襲撃する時が来たら伝えてくれ。荒神会の兄さん達、ありがとうな。』
その日、九州のとある山中で銃声が響いた。狩猟期間でなかった為に警察がすぐに駆け付け、太陽組構成員の男の遺体が発見された。全身アザだらけ、額と心臓に風穴が空いた酷い有り様とは裏腹に、男の表情は安らかだったと言う。
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