ということでやはり衝動的に書き殴ってみました。
お納めください。
「十二月に入って間もないというのに、すっかり寒くなってきましたね」
そう言いながら彼女は霧吹きで部屋の観葉植物に水を吹きかけていく。複数育てているため、その分だけ忙しなく移動しながら。
「寒さに弱いかそうでないかで、管理方法も変わってくるんですよ。最低でも10℃は必要な植物は寒さに弱いので温室で管理しなければならないんですが、0℃以下でも耐えられる寒さに強い植物は地植えでも冬を越せるんです」
種を植えた鉢植えにはまだ芽が出ていない。この時点での過剰な水は根腐れを起こす。ひとしきり吹き終わると、鉢に付いた水滴を拭っていく。
「とは言え、霜が降りると根や新芽を傷つけてしまうので、腐葉土や堆肥、バークチップなどで地上部を覆い、寒さから根を守らなければならないのですが。これをマルチングと言うんですよ。春になれば地面に漉き込めばいいですからね。校庭の花壇はこれを実施していたんです。……今年は、もうする必要もなくなってしまいましたけど」
下弦からさらに欠けた月を眺めながら、柏木園子は自分の通う学園の花壇に思いを馳せる。彼女はたった一人の園芸部であり、最後の部長である。本年度の卒業を以って、園芸部は廃部となる。それに伴い、今まで彼女が手掛けてきた花壇も三月いっぱいで撤去される。
「……寂しくはありませんよ。数に限りがあるとはいえ、出来る限り株分けはしましたから。それに、一番大事なものはちゃんとここに持ってこれました。それ以上望むのは我儘です」
愛おしそうに鉢を撫でる。白魚の様な手は冷たく、温かみを感じるものはない。
「これは十二月産まれあるあるだと思うのですが」
唐突に、話を切り出した。沈黙には耐えられなかったのか、あるいは自分で話題を振っておいて気まずくなったので話題を変えたくなったのか。
「誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントとお年玉を一緒くたに渡されるじゃないですか。だから私はあまり誕生日が好きではありませんでした」
なんだか損をしているような気がして、と続ける。出来る限り金を漏出したくない人の性と、子供に喜んでもらいたい親の情が同居するとどちらが優位になるかはその家庭次第ではあるのだが。
「でも、今日は違うんです」
慈しむように鉢を抱きしめ、甘い声で囁く。
「貴方の変わりは何処にもいない。貴方の変わりは誰にもなれない。私は、本当に大切なものを手に入れることが出来て、自分の生まれた日を祝福することが出来る。これ以上の幸せがありますか?」
大切なもの。世にも珍しい白い鉢。彼女だけが知り得る、愛のカタチ。
「私は貴方を永遠に愛し続けます。私は私の全てを貴方に捧げます」
世界で一つだけの、
「貴方は、どんな花を咲かせてくれますか?」
答える者は、誰もいない。
これはタダの独り言なんだけど、ある学園の生徒が行方不明になっているそうだ。
――別にこれと言って他意はないんだぜ?